World Odyssey 地球一周旅行

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見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART18 2004.10.01 8日間5,500キロ、バスの旅
>>北アメリカ+メキシコ大縦断



いよいよ、メキシコに行くことにした。3ヶ月旅した北米ともお別れだ。

旅立ちの日は、ちょっと強引に決めた。9月6日発だ。

クイーンシャーロット諸島からプリンスルパートに戻ってきたのが、9月3日の朝だった。それから図書館へ行って、「会えたらいいね」とホワイトホースで別れたアヤッペからのメールを見ると、9月5日にプリンスルパートに着くと書いてある。それなら、アヤッペとも会えるし翌6日プリンスルパートを発とう、ということにしたのだ。クイーンシャーロット諸島でちょっと情けない結果に終わってしまった私たちは、なんだか焦っていた。

メキシコへは、激安のバスチケットで向かうことにしていた。Greyhound CANADA(グレイハウンド カナダ:グレハンと略す)のGo Anywhere(ゴー・エニウェア)と言って、2週間前に予約をすれば、グレハンがカバーしている都市どこへでも125カナダドル(約10,000円)で行けるものだった。途中、ストップオーバーはまったくできないが、メキシコ国境の街Tijuana(ティファナ)まで一気に行けてしまうので、旅行が始まった時から、このチケットを使おうと決めていた。

メキシコ・ティファナへは丸3日でいける。ホワイトホースからプリンスルパートまで2晩かけて約2000キロを南下してきた私たちにとって、3日かけて3500キロ南下することはさほど変わらなかった。

バス旅を快適に過ごす方法も何となくわかってきていた。

カナディアンはバスに乗る時「布団セット」を持ってくる。他にでかいスーツケースがあるにもかかわらず、必死に小脇に抱え、必ずといっていいほど普通サイズの枕と普通サイズの肌掛け布団を車内に持ち込むのだ。こそっと観察していると、どうやらえらく快適そうだ。だいだい2人分の席を1人で使えるので、枕は窓側に立てて背当てにしている。冷房は凍えそうなほど効いているので、肌掛け布団にくるまり、あとはお気に入りの本を読みながらたまに車窓の景色を楽しむ……と言った感じだ。車内にトイレはあるし、ストアのある場所での休憩も2時間に1回はある。これなら1週間程度のバス旅だったら余裕でいけちゃいそうなのだ。

私たちは「布団セット」を買うわけにはいかないので、ダウンのジャケットにパンツ、ブランケットに本とノート、洗面用具を車内に持ち込む。これで、きっと完璧だ。

9月5日の朝プリンスルパートに着いたアヤッペと、再会を記念して「味噌うどん」パーティーをし、翌朝9月6日の11時、私たちはバスに乗った。

どんどん小さくなっていくアヤッペを窓にへばり付きながら眺め、ちょっと泣けてくる。それでも容赦なくバスは走っていく。


  「やっと旅が始まる感じやなー」

淳ちゃんが言う。
彼が言う「旅」というのは、社会的・経済的にまだまだ発展途上の国に行き、いろんなものを見て感じてバシバシ刺激を受けることを指している。そう言う旅を今までもしてきていたんだろうし、今回の旅もきっとそういうイメージを持っているのだろう。そう考えると、アラスカ・ユーコンの旅はちょっと違うので、やっと旅が始まると言っても間違いではない。メキシコはやっぱり治安も悪いだろうし、経済的にも豊かではないだろう。

順調に進んだバスは23時ごろPrince George(プリンスジョージ)に着いた。私たちは1時間ほど待って、南方面バンクーバー行きのバスに乗り換える。大して人も多くなかったので、2人分の席を使ってゆっくり眠ることができた。

バンクーバー着は翌朝11時(2日目)。ここでは、ちょうど3ヶ月前に1泊だけ泊めてもらったみゆきちゃんに会えるかも知れない。運悪く連休を挟んでしまって、読んでくれているかどうか微妙だったのだが、7日にバンクーバーのバスティーボ(バスターミナル)にいることだけはメールしておいたのだ。

いたいた!みゆきちゃんだ!

3ヶ月ぶりの再会に駆け寄る私たち。バンクーバーは晴男・淳ちゃんのおかげで今日も快晴だ。次のSeattle(シアトル)行きのバスが出る14時まで、私たちはバスティーボ向かいの公園でのんびりすることにした。

  「実は、お弁当作ってきてん」

そう言って開けてくれたお弁当には日本食が詰まっていた。鶏カラに卵焼き、野菜の煮物にキノコごはん海苔付き……ルームメイトのコリアンの子が作ったチャプチェ(春雨炒め)まである。うひゃあーっとガッツく私たち。しばらく無言で食べ続ける。

  「あれ、もういらへんの?」

私たちのあまりのガッツきぶりにかわいそうになったのか、みゆきちゃんは早くも「ごちそうさま」モードに入っている。そこを淳ちゃんが目ざとく見つけたのだ。ええで、食べ食べ〜そう言ってみゆきちゃんは(一応)ほほえましく見てくれている。

海外にしばらく住んでいる人は、本当に日本食のツボをわかっていると思う。私たちが食べたいのは寿司でもすき焼きでもない。醤油と甘み(この際みりんでも砂糖でもどっちでもいい)がからんだフツーの味なのだ。

しばらくぶりのスタバのコーヒーも味わいながら、あっという間にバンクーバー滞在の3時間は過ぎていった。また会えるかな……ちょっと寂しくなるけど、大丈夫!とすぐに思い直す。だって私たちはこの3ヶ月に2度も会えたのだ。こんなにバンクーバー滞在が短かったにも関わらず、だ。いつかわからへんけど、また会おなー!と、私たちは明るくバスティーボで別れた。

次のシアトルまでにはアメリカ国境がある。

最初のアメリカ入国が6月7日だったので、ちょうど今日が3ヶ月目だ。ビザの有効期限にあたる。メキシコへ抜けるにはあと2日足りないことになる。

そんなことになるんちゃうん?と、実は7月に指摘されていた私たち。あまりののんびり旅ぶりに、心配してくれたのだろう。確かに間に合わんかもしれへん、と言うことで、私たちはスカグウエイからホワイトホースに戻った8月2日、アメリカのビザをいったん返却していたのだ。アメリカにはもう一度ビザをもらい直して入国するつもりだ。前回の滞在から日が浅いが、ま、通過するだけだし何とかなるやろう、と踏んでいる。

アメリカへは難なく入国できた。シアトルには19時ごろ到着する。待ち時間は1時間ほどで、次の行き先はSacramento(サクラメント)だ。

アメリカに入った瞬間、空気ががらっと変わった。

バスティーボは荒んでいる。トイレの手洗いからはお湯など出ないし、ペーパータオルもとっくに切れているようだ。列を作って順番待ちをしている人たちも、カナダならいろんな人が乗っていてバス移動そのものを楽しんでいるようだったが、アメリカではバスにしか乗れないからバスに乗るしかない、と言った印象を受ける。明らかに低所得者層の乗り物、といった印象だ。

2人分の席を1人で使うなんてことも、もうムリだ。びっしり埋まっている。「布団セット」なんて、もちろん誰も持っていない。しかも、どんなに大男でも通路に足を伸ばしたりしないのだ。カナダでは、4人分(つまり横一列)の席を使って横になっている人もいて、後方のトイレへ誰かが行く時には、横になって寝ている人を平気でまたいでいったものだった。

たくさんの人がごっちゃに暮らすアメリカ。トラブルの元をできるだけ作らないために、ツッこまれるようなことは極力しない……そんな印象を受ける。みんなが不快にならないために、暗黙でできた社会ルールの最小公倍数が他の国より大きいのかも知れない。ちょっと淋しい国だな……と思う。

バスの運転手も大変だ。シアトルから少し先のPortland(ポートランド)からサクラメントまで12時間以上も運転し続けている。カナダでは運転手の交代は6〜8時間おきだった。ここでもアメリカはハードな国だなあと感じてしまう。

サクラメントにも予定通り翌日(3日目)14時ごろ着いた。次はLos Angels(ロサンゼルス)行きのバス。23時ごろ着くはずだ。

ロスのバスターミナルにも時間通り到着した。次はいよいよメキシコ・ティファナ行き。1時発だから2時間ほどある。

運転手はいきなりスペイン語だ。バスの中で1〜20までの数字とひととおりの挨拶しか勉強していなかった私たちにとっては何のことだかさっぱりわからない。どうやら乗客名簿を確認している。

  「さっ。行くで行くでーっ!」

たぶん、そう叫んだと思う。あれ?まだ24時だけど。そう思ったって何も言えるわけがない。さっ乗った乗った、てな具合に押し込まれ、バスは強引に発車した。超荒い運転でガシガシ飛ばしまくり、あっという間にロス市街を抜けてしまう。

『地球の歩き方』には、ロスからの長距離バスは入国審査をせずにティファナへ行ってしまうので(72時間以内の滞在ならノービザでいけるのだ)、San Diego(サンディエゴ)から南へ30分ほど行った国境の街San Ishidoro(サンイシドロ)でバスを降り、歩いて国境を渡れと書いてある。そんなこと言われたって言えるわけがない。しかも今は夜中の2時30分。本当はティファナ着5時なのに、ずいぶん早い。サンディエゴのバスターミナルは、今さっき過ぎてしまったところだ。

バスは高速道路の料金所のようなところで止まった。これがサンイシドロなんだろうか。他の乗客は手荷物を持って外に出、トランクの荷物を全部出している。私たちはあっちへ行けと指を指された。荷物は置きっぱなしでもいいらしい。しゃべれないので、目で「しっかり見とけよ〜」と念を押して、私たちは言われた方へ向かう。

メキシコを旅行するにはツーリストカードというビザのようなものを取得しなくてはいけない。これは国境の街にはたいがい置いてあるそうだが、72時間以内で国境付近を行ったり来たりする人も多いので(経済格差を利用して、近年メキシコ側のティファナでは加工貿易を盛んにしたり、関税面で優遇措置を取ったりして外貨を稼いでいるそうだ)、旅行者はうかうかしているとこのカードを取りそこねてしまうらしい。

蛍光灯がともる小さな部屋に、入国審査官と思われるおっちゃんひとりとガードマンのような男がひとり座っていた。コンニーチハ!おおっ、いきなりの日本語だ。続いて、ボニート!(美しい、という意味/ラテン人にとっては挨拶のようなもの)ときた。うーん。いきなりのメヒカーナ(メキシコ人)ぶりにちょっと笑える。

とりあえず、Guadalajala(グアダラハラ)に行くつもりだと伝える。するとおっちゃんは私たちが必要事項を書いたツーリストカードに「30日」と書き込んだ。もしかすると、また滞在が延びるかもしれない。そう思って「もう少しちょうだいな」とお願いしてみると、3の左に書き足して8にし、さらに左に1を足して「180日」に書き換えてくれた。ま、そんなには要らないんだけど「ありがとう」と私たちは満足そうなおっちゃんに伝え、早く早く!!と叫んでいる(と思う)運転手のところへ戻った。

あとから聞いた話だが、メキシコで180日の滞在許可をゲットするのはけっこう大変なことらしい。まずはだいたい90日で、それからイミグレに行って延長手続きを取るのが一般的のようだ。それ以降はいったん国外に出て、ふたたび90日の滞在許可を取るのだという。係官によって対応が違う、というのは本当のようだ。

そうしてバスはふたたび走り出す。徒歩で入国ならばさっきのところから歩いて行くのだろう。どうせ夜中だし、ここまで来たらもうグアダラハラまで行ったろか、てな気分になってくる。とにかく、終点のCentral Camionera(セントラル カミオネラ:中央バスターミナル)まで行ってみることにする。『地球の歩き方』にはグアダラハラ行きのバスは中央バスターミナルからは出ていないとあるが、もう戻れない。

深夜3時、中央バスターミナルに着いた。めちゃくちゃ眠いし、治安も悪いだろうし、本当に迷惑な時間に到着してくれるものだ。グアダラハラ行きのバスを探す。

どうやらこのバスターミナルからすぐに出発するバスがあるようだ。さっそくチケットを買おうとした。

カードが使えないらしい。

メキシコペソ(以下ペソ:1ペソ=約10円で計算)はもちろん、アメリカドルもまとまった現金を持ち合わせていなかった私たちは、チケットを買うことができなかった。こうなると、銀行が開くまで待つしかない。

私たちが座っている場所はガラス張りになったロビーのような場所だった。そのすぐ隣には、バスに乗る前の乗客の荷物や身体チェックをするために、ガードマンが2人立っている。まっいいかーっ……。

さすがに疲れた私たちはウトウトとし始めた。ここで寝れるんちゃうーん?と調子に乗り始めた私たちは、次に、靴を脱いでソファに横になってみた。速攻ガードマンが飛んでくる。たぶん、足を下ろせ、と言っているのだ。仕方がなく座ったまま寝たふりをしてみると、何も言ってこない。居眠りしてしまいましたー、くらいならOKなんだろうと私たちは勝手に解釈して朝まで眠ることにした。

爆睡だった。一応荷物に手を掛けていたものの、朝日で目が覚めるまで起きないほど爆睡してしまったのだ。ガードマンは相変わらず横に立っている。いやー、無事だったねーなんて取って付けたように言いながら、私たちはのそのそと起きあがった。

銀行はここから30分ほどアメリカ側に戻ったダウンタウンにしかない。仕方がないのでダウンタウンまでタクシーで戻る。初めてのメキシコの朝だ。車が多い。人も多い。ほこりっぽいし、とにかく暑い。10度近いカナダからいきなりメキシコに入ったのだからムリもない。

グアダラハラには明日向かうことにした。さすがに疲れたので、1泊しようということになったのだ。銀行を探すために、ダウンタウンを歩いてみたのだが、物売りとか物乞いとか、イメージしていた煩わしさがほとんどなく、ただただ新しい街でおもしろそう、と思ったのだ。

安宿も見つかり、さっそく街に出る私たち。なぜか「チビマルコチャーン」と、どのみやげ物屋でも声を掛けられるが、しつこくない。みな1回きりなのだ。物乞いをする小さな子供も寄ってくる。「No」とひとこと言うと、あっさりあきらめて行ってしまった。物乞いと物売りはシツコイものと思っている淳ちゃんも、これには驚いている。いやー、メヒコ(メキシコは英語読みで、本当はスペイン語読みのメヒコが現地では正しい読み方だそうです)最高!とさっそくごきげんだ。

待望のセルベッサ(ビールのこと)を飲みタコスを食べ、街をふらふら歩いて宿に帰る。実は、急激な気温の変化で、2人とも熱中症ぎみなのだ。頭が割れそうに痛い。

淳ちゃんは淳ちゃんの夜を楽しんだようだが(新しいコーナー「旅のアレコレ」をどうぞ♪)、まっ、こんなもんでティファナはええやろ、と私たちは翌日グアダラハラ行きのバスに乗った。朝9時にダウンタウンのバス停を出る。

グアダラハラはメキシコの中央部、ちょうど高原地帯になっているあたりにあるメキシコで2番目に人口が多い街だ。このエリアは中世スペイン統治時代、銀が多く産出されたところで、その恩恵を受けた豪商たちが膨大な建造物を造ったのだが、シルバーラッシュが終わると、次の産業が興らないまま衰退してしまったそうだ。そうして、コロニアル建築と呼ばれる中世の面影をそのまま残した建物がいまだ現役、という街が多くあるのだ。

ティファナからは約30時間、2000キロ。翌日の夕方にはグアダラハラに入れるはずだ。そこで、1泊して、私たちは小さな世界遺産の街Guanajuato(グアナファト)に行くつもりだ。そこでゆっくりできたらいいな、と思っている。

中央バスターミナルで見た他社のバスと違ってずいぶんボロいな……と思いつつバスに乗り込む私たち。座席は指定。うしろの方が空いているが、これから乗ってくるのかもしれない。

しばらく走ったあと、バスは小さなターミナルで止まった。やはりたくさんの人が乗ってくる。バスはほとんど満席だ。しかも、膨大な荷物を車内に運んでくる。どうやら、下のトランクがいっぱいになってしまったので、しかたがないようだ。ついにバス後方のトイレも封鎖されてしまった。メヒコのバスはきちんとトイレ休憩をしてくれるんだろうか……。

そうしてバスが数時間走り続けると、あたりはサボテンがにょきにょき生える荒涼とした砂漠にすっかり様変わりした。イメージどおりのメキシコだ。淳ちゃんは運転席の隣の仮設椅子を陣取り写真を撮りまくっている。

暑い。

なんだか車内の温度がどんどん上がっている気がする。

よくよく見ると、サウナのように蒸し蒸しと暑い車内では、乗客はみな汗だくになってぐったりしている。エアコンが故障してしまったのだ。

そう言ってもなす術のない私たちは耐えるしかない。残念なことに、私たちの席の窓は開かないのだ。他の席では、窓を開け始める人が出てくる。

  「あーっダメダメ。窓は開けちゃダメなのよー」←そんな感じだった。

アシスタントのような男が車内を歩き回って窓を閉めている。少しだけ誰かが抗議しているみたいだったが、男が窓を閉め切ってしまったあとは、みなおとなしく我慢している。

メヒカーナ、いったいどこまでお人好しで気が長いのだ!私はもうすっかり腹が立っている。けっこうな値段(1万円ぐらい)を出して乗っているというのに、冷房が壊れているとは何ごとだ!しかも窓を開けるなとはどういうことやねん……と言いたいのだが、スペイン語を喋れないのだからどうしようもない。とにかく自衛するしかない、と休憩所では、メヒカーナが食べているものと同じものを食べることにした。タマーレスというマヤ時代から続く蒸し料理だ。メヒカーナは微笑ましく私たちを見守ってくれている。

初めて必要に迫られて覚えたスペイン語はバーニョ(トイレ)だ。とにかくバーニョと叫べば何とかなる、と思っていた。実際、トイレに行ってみて、もうひとつ単語を覚えないといけないことに気が付いた。男子か女子かもわからないのだ。マークが付いていればいいものの、スペイン語でしか書かれていないとなるともうお手上げだ。ここでも、メヒカーナが「しょうがないなあ〜」てな感じで案内してくれる。言葉をまったく知らないというのはこういうコトだったのかー!と愕然となる私たち。英語は意外に知っているものですよ、と同じ旅人の永石さんが言っていたが、まさにその通りなのだ。ウーマンとかレディとか私たちは覚えたつもりもないのに知っている。

そうして、蒸し風呂のようなバスにメヒカーナとふうふう言いながら乗り続け、途中の休憩所ではメヒカーナが食べているものと同じものをオーダーし続け、とにかくメヒカーナのあとをついて回りながらグアダラハラに着いた。ティファナとは時差が2時間あるのをすっかり忘れていたことと、バスが余裕で数時間遅れたせいで、23時になっていた。

やっぱり治安に不安を覚えた私たちは、声を掛けてくれたタクシーにすぐ乗り込んだ。ダウンタウンの安宿の名前を告げ、連れて行ってもらう。

結局、タク代は倍ぐらいボラれ、安宿よりこっちの方が良いと勧められ予算の1.5倍ほどするホテルに泊まることになった。とにかく汗だくの体を早く流したかったし、もう考える気力もほとんど残っていなかったからだ。

すぐ近くのセブンイレブンでセルベッサとカップ麺を買いその夜は眠りに就いた。明日、グアナファトへ発つかどうかも決められなかった。

翌朝、さっそく別の宿を探しながら街を歩いてみようということになった。朝ご飯は街角に立つ女の子が売るチュロス(細長いドーナツのようなもの)と牛乳。これがめちゃウマで、いきなり淳ちゃんのテンションが上がる。

興奮気味の淳ちゃんを抑えて抑えて、とにかく安宿が集まるメルカド(市場)付近へ向かうことにした。ガイドブックにあるとおり、街並みが古く、まるでヨーロッパに来たようだ。

もともと行く予定だった安宿の隣に、できたばかりの安宿が見つかった。ひと部屋200ペソ(約2000円)。パティオ風に建物中央を風が通るようになっているので快適に過ごせそうだ。30分ほどの道のりをまた戻り、私たちは引っ越しを済ませた。

午後からも夜になってからも、街に出て歩いてみた。日曜日のせいか家族連れがたくさんいて、ごった返している。夜になると花火も上がり始めた。こんなに古くて貴重な建物があるすぐ横で、日本で見る一番大きい玉(何尺になるんでしょう?)を上げている。信じられないような大きさの火の粉が降ってきて、逃げまどう人びと。

幸せな国だなー。

ふっと思った。経済的にも政治的にもまだまだ不安定な国なのに、みんな幸せそうなのだ。それは、私が来る前にイメージしていた、ひたすら明るいノー天気なノリとは、まったく違う。だけどみんな幸せそうだ。アメリカ人みたいに何か必死で足りないものを補おうとしている、そんな感じがまったくないのだ。ものすごく健全な明るさ。幸せかどうかはわからないけど、私たちにはそう見えた。そしてとても羨ましいな、と思ったのだ。

翌朝、メルカドにある大衆食堂で食事を取ったあと、私たちはグアナファトへ向かった。さすがに都会すぎてのんびりしにくいということと、もう移動はしばらくしたくないので、あまり期間を空けずに動いてしまおう、ということになったのだ。

グアナファトへは約6時間。シルバーラッシュで造られた瀟洒な建物が並ぶおとぎ話の世界に迷い込んだような街らしい。ここならゆっくりできるだろう。

巨大なカルフールにウォルマートが並ぶ通りを30分も行かない場所にグアナファトはあった。ちょっとイヤな予感がする。この街は、地下に張り巡らされたかつての坑道もしっかり利用していて、ダウンタウンのバス停は地下道にある。そこから地上へ上がると、ゴチャゴチャゴチャーッとした人と車と街並みが現れた。おとぎ話???拍子抜けする私たち。ま、とにかく宿を探そうということで、まずは声を掛けてきてくれた客引きっぽい男に交渉する。ここの相場が少し高いことはわかっていたので250ペソで手を打つ。

250ペソもするわりには古い宿だ。シャワーは申し訳程度にしか出ないし、眺めも悪い。街に出てみることにした。

細い路地を市バスや一般車がひっきりなしに通っている。歩道はひと1人ぎりぎり通れる程度。のんびり散歩する雰囲気でもない。

  「あかんあかん。ココも辞めや!」

カンのようなものに近かったけど、私たちは速攻ジャッジを下した。この街はゆっくりできない。世界遺産だろうがなんだろうが、ここはせわしない。別の街に行こ、ということにした。

次でダメなら私たちはメキシコを好きになれないかも知れない……。メヒカーナは好きだけれど、のんびりできない場所はやっぱり好きになれないのだ。アラスカ・ユーコンの旅で、人の居ないところに居すぎたせいか「街」に対してまったく興味がわいてこない。

いちおう、180ペソの安宿を見つけたもののやっぱり翌日発つことにした。これが最後の移動だ、そう決めていた。

次に目指すのは、1時間ほど離れた芸術の街、サンミゲル・デ・アジェンデ。

ここは、銀ではなく工芸で栄えた街らしく、落ち着いた雰囲気の街だそうだ。外国人でも気軽に参加できる美術学校が2つあり、アメリカ人が多いというウワサだ。どうか、いい街でありますように……半ば祈るようにバスに乗る。

小さなバス停からタクシーに乗り換え目当ての安宿に向かう。今までの宿は、ガイドブックに載っている値段より1〜2割ほど値上がりしているのが普通だったが、このHotel Vianey(オテル・ビアネイ)は記載の通りのひと部屋150ペソ。うんうん、いい感じだ。

部屋に通されて、決めた。ここなら長居できそうだ!

理由はわからない。でも窓が付いた2階の窓から見える街並みは落ち着いていたし、前の通りはほとんど車が通らない。それでもメルカドへは余裕で歩いていけるのだ。

1週間後には牛追い祭りがあるという。そこまでのんびりできそうだ。
9月6日にカナダ・プリンスルパートを出て8日間、5500キロの大移動がやっと終わった。
ティムビッツ
最後のカナダを味わっているところ。これはティムビッツというものです。ティムについてはまた今度。

 
ティファナ グレハン チケット
ティファナまで、こーんなに長いチケットになります。ちょっとうんざりするけどたかが3日です。それで1万円とはグレハンも太っ腹。

 
みゆきちゃん 弁当
みゆきちゃんの愛妻弁当にガッつくわたしたち。ホンマに、うまかったんです。

 
アメリカボーダー 入国審査
アメリカボーダーにて。ホンマに入国させてくれるのかちょっと不安でした。

 
グレハン 休憩
カナダでは頻繁に休憩を取ってくれて、しかもそこには必ずトイレOKのストアがあったのですが……アメリカに入ると、トイレはスタッフしか使えなかったりストアと呼べるものじゃなかったり、とサービス低下。イメージ以上にスモーカーが多くて、少しの停車でもみんないそいそと外に出て吸っていました。スモーカーでない私たちにとってはちょっと哀れ……。

 
サクラメント リノ
サクラメントからはリノというカジノの街へ行くバスがあります。ここで、目の前にいた男の子が目の前で薬物を没収されるというハプニングが(写真の子ではありません)。どうやら、スタッフは車内に持ち込む危険物のチェックをしたかったようですが、ポケットの中のものを出した時にでてしまったみたい。バカですな。

 
ティファナ
そんなこんなでティファナに着き、眠り込んでしまった時。奥にはガードマンの姿が映っています。足に大事なカバンを挟んでいるだけエライとしましょう。

 
ティファナ 昼
ティファナお昼ころの様子。え?と思うほど現代的じゃないですか?確かにごちゃごちゃしていますが、予想を遙かに上回る治安の良さにちょっとびっくりしてしまったものです。

 
メヒコ セルベッサ
じゃーん!初登場メヒコのセルベッサです。この2つは日本でも飲めるかな。たしか1本10ペソ(100円)くらい。セルベッサについては、特集を組まなくては!とただいま各種飲み比べていますので、もう少しお待ちください……。

 
メヒコ マクドナルド
メヒコのマクドで朝マックをしました。30ペソ(300円)くらいしたのでけっこうな値段です。メヒカーナなマフィンがあったのでそれをオーダー。フリホーレスとサルサ付き卵焼きが挟んであります。なかなかうまかった。

 
メキシコ グアダラハラ バス
今からグアダラハラ行きのバスに乗ります。ちょっとレトロだよなー、このバス。運転席には客席まで筒抜けのカーステが付いていて、運転手の好みのメキシコ歌謡がエンドレスでかかります。だんだん飽きてくるのか、ひんぱんにCDを変えるようになったりしてかなり笑えます。

メキシコ バス
バスで一緒だった3姉妹の上2人。淳ちゃんがメロメロでした。やっぱ、そういう人が撮ると上手に撮れるもんなんだなーと感心。

メキシコ バス
車窓からの風景。ヤバイ。でもバスから見ているっていうのがちょっと気にくわないところ。

メキシコ サボテン
TOPページでもご紹介したサボテン群。マジでかいっす。

メキシコ 荷物検査
途中で荷物チェックがありました。意味もなくかなり焦った私たちでしたが、「このボタンを押して」と言われ、押すとただ青いランプが点くだけの変な台に立たされ(それも夫婦2人で)、それでOKでした。何だったんだろう、アレ。

メキシコ グアダラハラ カテドラル
で、グアダラハラです。1561年から60年の歳月をかけて建てられた、というカテドラル。当時の植民地予算の1/3を費やしたそう。

メキシコ グアダラハラ カテドラル
カテドラル内部。カトリックのことをよく知らないのですが、偶像がずいぶん多い印象です。しかもメヒカーナ、バシバシフラッシュ焚いたり、何とか像の横でピースしたりしています。へんなの。

メキシコ グアダラハラ地方博物館
元修道院の建物を利用した、グアダラハラ地方博物館。日曜日は多くの施設が無料になります。中には先住民の資料や宗教画が飾られています。夜になったら、この玄関口で花火をおっ始め、かなりびっくりしたものです。

メキシコ 観光ポリス
かなりの部分、観光による収益に頼っているらしいメキシコ。当然、観光客の安全の確保は最重要課題らしいです。ということで、グアダラハラでは観光ポリスがマウンテンバイクで街の中をくまなくまわっています。心強い存在。

メキシコ グアダラハラ カテドラル 花火
どどーんとカテドラルの上にあがる花火。おいおい、大丈夫なのか!実は今日はただの日曜ではなくグアダラハラ祭りだったそうです。よかった……毎週日曜、こんなことしているのかと思ってしまいました。

メキシコ グアダラハラ マリアッチ
ちょっとぼけていますが、マリアッチのおじさんです。バイオリンやギター、トランペットなどによる10人程度の楽団を指します。このグアダラハラはマリアッチ発祥の地ということで、かなり有名なマリアッチ集団が登場したようです。大きなソンブレロ(帽子)に牧童貴族風のスーツ、と言うのが定番スタイル。ぴちぴちの衣装を身にまとって街中へ営業に出かける、フツーのマリアッチのおじさんをみかけると思わずシャッターを押してしまう私……。

メキシコ グアダラハラ カテドラル
カテドラル正面。四角く刈り取られた木は、昼間とてもいいパラソルになります。

メキシコ グアナファト バス
グアナファトへ向かうバス。これがフツーのバスでしょ。というか、想像以上にメヒコのバスはキレイで近代的です。この会社は、サンドイッチにジュース、お菓子まで付いてきます。冷房はもちろんガンガン効きます。

メキシコ グアナファト 街並み
グアナファトの街並み。朝、できるだけ人が居ない場所を探して淳ちゃんが撮りました。

メキシコ グアナファト 教会
街にはいくつもの教会があります。っていうか、これの名前忘れてしまいました。スイマセン。

メキシコ グアナファト 街
すり鉢状の街です。

メキシコ グアナファト バス
で、すたこらさっと逃げ出したグアナファトのバス停にて。次こそ……ええ街でありますように!




▼PART19 2004.10.18 フィエスタ!×3 〜コロニアル都市サンミゲル・デ・アジェンデ
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