World Odyssey 地球一周旅行

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旅のアレコレ
旅の途中で感じたアレコレを、夫婦入り乱れてのコラム形式でお届けします。
「日記」には載せきれなかったネタもアレコレ登場しますヨ!





◆グレイシャーベイ カヤックの旅[淳二筆 2004.08.07]


今回の舞台は海。シーカヤック6日間の旅だった。過酷な旅となった。海を中心とするこの国立公園も例外なくバカでかく、ポイントまではクルーズ船にてカヤックを運んでもらう。クルーズ船のお客さんはお金のにおいがぷんぷんする種類の人間ばかりでバックカントリーに挑む僕たちとは全く世界の違う人たちだった。ポイントといってもただの無人島だ。カヤックと食料、水、その他キャンプ道具など命の元になる全てのものをボテボテと島におろし、容赦なしにクルーズ船は去っていった。文明と切り離される瞬間だ。

山盛りの食料をカヤックに押し込み、いよいよ出発だ。海の状況は最悪で、大きな波が次々と襲ってきた。急遽、小さな島に避難。テントが2つ張れる程度のスペースしかない悲しい島だ。沈没するよりはまし。カヤックを波に持っていかれないよう引っ張り上げ、テントにしばりつけた。満潮時は水が目前まで迫ってきて、とても安心できる状態ではなかった。雨も厳しい状況に追い打ちをかけてきた。

2日目。朝から雨。朝から厳しい状況だったがなんとか出発。漕ぎ始めた瞬間、いきなりシャチが登場。背びれはジョーズそのもの。テンションは急上昇。カヤックから見るシャチは迫力満点だった。食べられたらやばいので大急ぎで漕いだ。雨は降り続いていたが麻痺していた。途中イルカが登場。カヤックから1メートル近くまで急接近。呼吸の度にブシュッと水面に上がってくる。なんとなんと。ここはどこまですごい海なのか。いやー、動物はマジでいい。あざらしもボコッと顔を出し様子を見ている。ナマの動物に感動するばかりだ。とはいえ、雨は容赦なく降り続き、体が冷え切っている。ところどころで上陸はできるものの、長雨で火をおこすだけの薪が無くカヤックを漕ぐ以外体温を回復する方法はなかった。自慢のアウターも残念ながら長雨と時々かかる波で浸水が始まっていた。厳しい時は歌を歌うに限る。大事MANブラザーズの『それが大事』を熱唱した。キャンプ場に着くころには全身しっかりグショグショ。雨は止む気配も無く、とにかく寒かった。他のメンバーも持っている全ての服を着込み、テントから顔だけ出してラーメンを作って食べていた。寒さでなかなか寝つけなかった。もし明日晴れへんかったらマジでキツイなとちょっと弱気になっていた。気力で耐える自信はあったが体調の維持に自信は無かった。

翌朝、太陽がわずかに顔を出していた。最高に嬉しかった。6人全員大はしゃぎだ。助かった、と思った。朝食を済ませ出発の準備をしている時だ。黒い物体が20メートルほど離れたところを動いている。クマだ!!かなりの至近距離での遭遇にビビった。最短で10メートルの近さだった。最悪に備えベアスプレーを瞬時に準備した。クマは何ごともなく素通りしていった。ごはんを食べている時やったらかなりヤバかったかも、とか言いながら、やはりこの遭遇に一行は大興奮だった。3日目のキャンプ場は目的地であるジョン・ホプキンス氷河の直前だ。山登りで言うところの登頂アタックに備えるベースキャンプ場のようなものだ。天気は明らかに回復に向かっている。さすが晴れ男!と自画自賛しながら漕ぎ続けた。海はとても穏やかでカヤックはグイグイと進んだ。ジョン・ホプキンス氷河直前の夜は前祝いにカレーをたらふく食べ、ここまでたどり着けたことを讃えあった。確かに全員かなり疲れていた。あとは明日の天気を祈るだけとなった。

ジョン・ホプキンス氷河アタックの日は4時30分起床、7時出発だ。天気は上々。左に大きく折れると約10キロ先にとんでもない景色が広がっていた。大小さまざまな氷山の上に何百という数のあざらしが寝そべっている。そのあい間を縫うようにカヤックを進めた。時折、80メートルほどの氷河の壁が崩れ落ちる。爆音だ。雷の音に近い。崩れ落ちた衝撃が大きな波となって数分後にカヤックに伝わる。近づけば近づくほど、その衝撃は大きくなる。時間が許す限りその景色を堪能した。文句なしだ。その夜、取ってきたばかりの流氷をカチ割り、ブランデーで乾杯した。

帰りの2日間も、ほとんど雨だった。この2日間も例外ではなく、やはり厳しいものだった。クルーズ船が迎えに来てくれる小島が見えた時はホッとした。帰ってきたーって感じだった。ここで、とんでもない出迎えが待っていた。クジラだ。明らかに近づいてきている。ビビるほどデカイ。ぶっっしゅゅーと潮を吹きまくっている。ばっしゃーんとすると、その波紋でカヤックは大きく揺れた。とにかくスゴイ状況だ。スゴすぎた。

こうしてグレイシャーベイの旅は終わった。6人が元気に帰ってこれたことが何よりだった。

カヤック
▼この後ろ姿を見続けたグレイシャーベイ。


◆水について[淳二筆 2004.08.25]
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