World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART47 2005.11.28 赤道直下の氷河を見に行こう
>>ケニア マウント・ケニア国立公園その1



■ガイド不要のケニア山へ

ムフエをあとにした私たちは、およそ2週間でケニアの首都ナイロビにたどり着いた。この地には友人のすーちゃんが住んでいる。私たちはすーちゃんの家にお世話になりながら、ケニア周辺を訪ねることにしていた。

ケニア、というより東アフリカでのやりたかったこと。それは、ケニア山Mt.Kanya登山だ。

アフリカを代表する山として3つの山があげられる。ひとつはタンザニアのキリマンジャロ山(5,896m)。ご存じアフリカ大陸最高峰である。そして、ウガンダにあるルウェンゾリ山地Rwenzori Mountains(主峰はMt.Stanley5,109m、だと思う)。まだまだ登山者も少なく、アフリカ一神秘的な山だと称されている。そして、最後がケニア山(5,199m)。アフリカ大陸で2番目に高い山である。

これら3つの山の山頂付近にはすべて、万年雪と氷河が横たわっている。どの山も赤道付近に位置しているのにもかかわらずだ。南米・パタゴニアのある山小屋でこの「赤道近くにある氷河」の話をある旅行者から聞いて以来、私たちの気持ちは固まっていた。……アフリカでもきっと氷河を見に行こう!と。

さて、問題はどの山に登るかである。せっかくならアフリカ大陸最高峰キリマンジャロ山を目指すか。それとも、ウガンダに行ってみるか……。だが、どちらの山も、私たちのあまり好きではない「ガイド付き登山」でないと登れなかった。確かにキリマンジャロ山は6,000メートル近い高峰だし、ルウェンゾリ山地は晴れ間が年間数日しかない、という非常に気候条件が厳しい場所でもある。ガイドがいた方がいいだろう。でも、ここまでせっかくガイド無しで歩いてきたのだ。できればアフリカでもガイド無しで歩いてみたいものである。

ケニア山はどうだ。ここはガイド付き登山を義務づけられてはいない(ただし単独登山はNGである)。主峰であるバチアン峰Batianへは高度なクライミングの技術が必要で特別なパーミットもいる。一般登山者が許されているのはレナナ峰Point Lenana(4,985m)までだ。多くの登山者はそれでもガイドやポーターを雇ってレナナ峰に向かうが、私たちは南米ペルーでの経験がある。出発前に色んな人から話を聞くことで何とかクリアできるのではないかと思った。

ケニア山はまさに赤道直下にある山である。人気のキリマンジャロ山は頂上が比較的平らないわゆる台形をしているが、ケニア山は峻険な様相を呈している。「玄人受けする山」とも言われるのはそのせいだろうか。とにかく私たちの目的は「赤道直下に展開される氷河」。この氷河を見ることが目的なのだから、大陸最高峰でなくても、玄人受けする山でなくてもよかったのだが、ケニア山ならガイド無しで登ることができる。そんなわけで、私たちの目標はケニア山、とすることにした。

標高に関してはほぼ同じ高さをペルーで経験しているので、あまり心配はなかった。問題は天気だった。今までの私たちはどの場所でもベストシーズンにしか歩いていない。「私たちは天気に恵まれているなあ」などと言っているが、もともと良い時期に出かけているということも大きかった。だが、私たちが向かう11月、ケニアは少雨期という時期にあたる。ケニアの気候は、3月〜5月の雨期のあと6月〜8月の冷涼期をへて、9月〜11月の少雨期に入る。そして少雨期の終わる12月〜2月までが最も暑い時期となるのだそうだ。ケニア山登山のベストシーズンは1月〜2月と8月下旬〜9月。この時期以外は雨に降られることが多い。山頂付近まで上がれば気温はマイナス20度になることもあるという。つまりこの時期は当然雪に降られることも覚悟しなくてはいけないのだ。だが、天気ばかりは現地に行って確認するしかない。実際に行く人の話を聞いて私たちでも行けるのかどうか判断するしかないのだ。時季はずれだからとガイドブックの情報だけであきらめてしまうには、あまりにも惜しい。

そうしてナイロビに着いた私たちはさっそく市内の旅行会社に向かった。少雨期の今、ケニア山登山は可能なのかどうかを聞くためだった。

結果は「問題なし」。確かに雨は降るけれど雨の少ないルートを選べば、少しはマシなのだそうだ。頂上付近の天候の変化はその時次第。それはベストシーズンでも同じことらしい。あまりにもあっさりOKが出てしまって拍子抜けした私たちは、念のためKWS(Kenya Wildlife Service:国立公園を管理する団体)にも確認してみたが答えは同じだった。だったら行ってみよう。気持ちは決まった。出発は11月4日だ。


■シリモン・ルートからナロ・モル・ルートへ

今回私たちが取るルートは、雨が降る時期だけに少し変則的にした。ケニア山登山ルートは代表的なもので3つある。ひとつはナロ・モル・ルートNaro Moru Route。最も一般的で人気のルートだ。これはほぼ真西から登っていく。次はチョゴリア・ルートChogoria Route。総距離が長く国立公園ゲートまでの公共交通機関が無いのがネックだが、氷河に削られたダイナミックな地形を楽しむことができる。これはナロ・モル・ルートのちょうど反対側、ほぼ真東から登っていくものだ。最後がシリモン・ルートSirimon Route。ケニア山のほぼ真北からアタックをかけるルートである。国立公園ゲートからレナナ峰までの総歩行距離25キロ。

この時期のケニア山に向かうなら、登りはシリモン・ルートがいいようだ。地形的に雨が降りにくいし、トレイルも比較的グチャグチャになりにくい地形らしい。

そんなわけで私たちは、シリモン・ルートで戻り、レナナ峰を経由してナロ・モル・ルートで下山することにした。

シリモン・ルートはだいたい4日で登って帰ってこれるコースだ。多くの登山者はマウント・ケニア国立公園のシリモン・ゲートSirimon Gateまで車をチャーターし、そこから歩き出す。1日目の宿泊地はオールド・モセス・キャンプOld Moses Camp。標高3,300メートル地点にある。

だが私たちの経験上、高度馴化をするには3,000メートル以下で1泊するのがいいようだ。しばらく滞在していたナイロビは標高1,820メートル。シリモン・ルートの玄関口ナニュキNanyukiの標高も1,945メートルと高度馴化をするにはちょっと足りない。

いったん高度障害を起こしてしまえばあとは下山しかない。余分に持っていく食料はできるだけ少なくしたいし、その食料は頂上アタックの天候不順時に備えておきたい。だとしたら高度障害を防ぐため、安全策をとった方がいい。

シリモン・ゲートの標高は2,400メートルである(2,600メートル説もあり)。ここで1泊すれば少しは体も慣れるかもしれない。本当はあと数百メートル標高が欲しかったのだが、いきなり3,300メートルの山小屋に行くよりはましだろう。本来シリモン・ゲートへは、玄関口となる町ナニュキから車をチャーターして25キロの道を一気に進んでしまう。が、公共交通機関のマタトゥ(ハイエースを改造した乗り合いミニバス)を使って、町から16キロの地点(シリモン・ジャンクションSirimon Junction)まで行く方法もある。シリモン・ジャンクションでマタトゥを降りると、シリモン・ゲートまでは9キロの道のりである。これならお金を節約できるばかりか、シリモン・ゲートまでの約9キロを歩くことでいい準備体操にもなる。私たちは1日目の行程を、ナニュキからマタトゥ利用、そしてシリモン・ゲートまで9キロ歩く、とすることにした。



■やはりガイドを頼むか?

実際、ナイロビのすーちゃんちを出た初日はナイロビからナニュキまでの移動に留まった。1日でナイロビ→ナニュキ→シリモン・ジャンクション→シリモン・ゲートの移動はちょっと厳しかったのだ。ナイロビからたった200キロほどの距離なのだがこれが難しい。車をチャーターしたらあっという間の距離である。それでも私たちは、できるだけ地元の交通機関を使おうとしている。時間がかかるのはしかたがないことなのだ。

ナニュキは北半球の町である。ナニュキに入る2キロほど手前、私たちは赤道を越えた。おそらく明後日の行程のどこかで、ふたたび赤道を越えて南半球に戻るはず。ケニア山はまさに、赤道直下にある山なのだ。

私たちは無事、登山1日目の行程を終えた。朝8時、ナニュキからシリモン・ジャンクションまでマタトゥに乗る。シリモン・ジャンクションからシリモン・ゲートまで9キロ。集落をいくつか過ぎながら、お昼過ぎにはシリモン・ゲートにたどり着いた。途中からは大粒の雨が降り出し、シリモン・ゲートに着いた時には靴の中までグショグショに濡れてしまっていた。

雨は夜中降り続いていたが、朝方には小ぶりになり、日の出とともにやんだようだった。中まで濡れてしまった靴は、国立公園のレンジャー・ステーションで何とか乾かしてもらうことができた。天気の良いうちに歩こうと、慌てて身支度をすませる。レンジャーたちも「とにかく朝一番に歩き始めて、お昼ごろまでには目的地に着くようにした方がいい」と言っていた。気持ちのいいレンジャーたちにお礼を言って、シリモン・ゲートをあとにした。

登山2日目の行程は10キロ。3,300メートル地点にあるオールド・モセス・キャンプまで歩く。オールド・モセス・キャンプまでは、乾期なら4WD車も走れる道というだけあってとても歩きやすい。ところどころゾウの足あとやフンが残っている。バッファローやシマウマのものらしきフンもある。天気はどんどん良くなっていった。今日はいつ雨が降り出してもいいように、カッパのパンツをはいて歩いている私は少し汗ばんでくる。気持ちのいい森林地帯をのんびり歩いて4時間。背の高い木は姿を消し、低木が茂るヒース地帯に入った。オールド・モセス・キャンプはもうすぐである。私たちは一番乗りで山小屋に到着した。あとから上がってくる人たちは、朝ナイロビを出てきた人ばかりだ。しばらくすると、ドロドロに疲れ切った団体が2組、頂上から2日かけて降りてきた。

昨日の大雨で頂上アタックは大変だったらしい。そして今日の行程も、昨日の大雨のせいでトレイルが水浸しになり、かなり疲れるものだったようだ。それは彼らの足元を見ても容易にわかる。膝下から靴までドロドロ。私だったらリタイヤしたくなるような濡れ方をしているのだ。明日は同じ道を私たちは登っていく。覚悟しなくてはいけない。

その日山小屋で話した人の中に、ガイドのジェームスという青年がいた。彼はイングランドから来たおじさま方2人を連れて登ってきたのだが、私たちがガイド無しで登っているとわかると「おれと一緒に歩いたらいい。50USドルでどうだ」と営業してきたのだった。私たちは今日、ヘロヘロになって山から下りてきた人たちを見てちょっとビビっている。まあ値段はあとで交渉するとして、頂上アタックだけはもしかすると、彼の力を借りた方がいいのかもしれない……そんな気持ちになっていた。だが、それはギリギリに判断すればいいこと。とりあえず、明日3日目の行程は私たちだけでも歩けるはずだ。明日も同じ山小屋に泊まるのだからその時に返事するよ、と私たちはジェームスに話した。



■下山の危機
3日目の朝。この日の行程は12キロ、とガイドブックに書いてあるがどうやら16キロあるらしい。目指す山小屋シプトンズ・キャンプShipton's Campは標高4,300メートル地点にある。なかなかにハードな1日になりそうだったので、明るくなったらすぐ歩き始めるつもりでいた。

ところがストーブ(調理用コンロ)の調子がおかしい。このところストーブは、不純物の多いガソリンのせいだろうか、使うたびに調子が悪くなると言ってもよかった。そのたびごとに淳ちゃんはブツブツ文句を言いながら直している。南米、ブエノス・アイレスで、幸運にもストーブのメンテナンス・キットを手に入れてはいたが、今回はそれでもダメらしい。ストーブの調子が悪いと言うことはどういうことか。温かい食事は無理だ。昼食用のクッキー、チョコレートとおやつ用のクッキー、チョコレートを、夕食に少しずつシフトしなくてはいけない。朝は冷たい水でオートミールを食べるしかない。だがそんな「ギリギリ」をしてしまっていいのだろうか。仮にも「ガイド無しで行く!」と張り切っている私たちである。トラブルが起きた時、誰も助けてくれない。それなのに、ストーブが故障したままで進んで良いのだろうか……。

ジェームスも協力してくれたがストーブは直りそうになかった。「山小屋でストーブは貸してもらえるからリタイヤするなよ!シプトンズで会おう!」そう言ってジェームスは、イングランド人のおっちゃん2人を連れて先に山小屋を発った。さあ、私たちはどうする。どうすべきだ。

淳ちゃんはもちろん「続行」である。私は「下山」の判断をした。ストーブが使えないとは、温かい飲み物や食事が取れないだけではない。非常時にはとても力になってくれる道具だと私は思ったのだ。その道具が最初からひとつ無い。そんな状態でこれから標高も、天候も厳しくなる場所へ行って良いとは思えなかった。ちなみに水は川からそのまま飲める。煮沸の必要は無いし、念のため浄水用のタブレットを持っているのでそれを使うこともできる。だが日々の食料は夕食分のパスタが食べられないかもしれないので、余裕がない。

どちらの判断で行くか決めかねている時、偶然(?)にもストーブが復活した。あるゴム製のパーツが劣化して破れてしまっていたのだが、接着剤で何とか使える状態にはなったらしい。

それなら、行ってみようか。もしまたダメになったら山小屋で助けてもらうことにしよう。そう話合い、私たちは先へ進んでみることにした。7時15分だった。




▼トレッキング 覚え書き

11/4 曇→雨 
Nairobi → Nanyuki 車移動約200キロ

11/5 曇→雨
Nanyuki → Shirimon Junction  車移動16キロ
Shirimon Junction → Shirimon Gate 9キロ

11/6 晴
Shirimon Gate → Old Moses Camp 10キロ

11/7 晴→曇→雨
Old Moses Camp → Shipton's Camp 12キロ






 
アフリカ マウント・ケニア国立公園
暗い写真ですねー。スイマセン。マタトゥを降りてシリモン・ジャンクションからシリモン・ゲートに向けて歩き出したところ。ぽつぽつと民家が現れて「ポーターするよ」と営業されたりします。奥に見えるのがケニア山。ですがこれだと3,000メートル付近までしか見えていないんじゃないでしょうか。ただの丘陵地に見えますね。しっかり見える時はそれはそれは神々しいようです。地元キクユ族も神がそこに座っているとあがめたそうです。

 
アフリカ マウント・ケニア国立公園 登山
一般の登山者は4WDでブブーンと走ってしまう道。雨が降り出したのでヌチャヌチャです。このあと雨は大降りになりもう全身グショグショになってしまいました。

 
アフリカ マウント・ケニア国立公園 登山
2日目の朝。逆光でこれまた暗くすいません。これはシリモン・ゲートを出たところ。右の奥に見える少し突き出た山。ケニア山主峰です。

アフリカ マウント・ケニア国立公園 登山
昨夜の大雨でこれまたトレイルはグッチャグチャ。でもしばらく歩くと岩がちの道になったので意外に歩きやすかったです。

アフリカ マウント・ケニア国立公園 登山
天気はどんどん良くなっていきました。このあたりは標高3,000メートル手前。動物の気配があちこちでします。

アフリカ マウント・ケニア国立公園 登山
ついに見つけたゾウの足あと。に、水がたまっています。驚くことにこのずっと先、4,400メートル地点でゾウの死体が見つかったこともあるそうです。レオパード(ヒョウ)は4,500メートル地点でも見られるそうです。

アフリカ マウント・ケニア国立公園 オールド・モセス・キャンプ
オールド・モセス・キャンプのすぐ近くにあった水場にて。まだまだ天気が崩れなくて本当に気持ちが良かったです。

アフリカ マウント・ケニア国立公園 オールド・モセス・キャンプ
標高3,300メートル、オールド・モセス・キャンプです。シンプルな山小屋ですが、雨が降るかもしれないこの場所では本当に便利。屋根の下でごはんが食べられるんですから。

アフリカ マウント・ケニア国立公園 登山
3日目の前半の様子だけこちらでご紹介。これはスタート直後。まだ朝なのでとても天気が良いです。ヒース地帯をじわじわ登っているところ。

アフリカ マウント・ケニア国立公園 登山
まだまだ天気は大丈夫。遠くに主峰の姿も見えます。左に見える双子の山はセンデオSendeoとテレレTerere。オールド・モセス・キャンプから見ると左の方が大きく見えるので主峰と間違える人もいるそうな。右にはぽつぽつ現れ始めた高山植物の姿も写っています。




▼PART48 2005.11.30 あわや遭難かと思いました 〜ケニア マウント・ケニア国立公園その2
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