World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART46 2005.11.20 これぞリアル・アフリカ
>>ザンビア サウス・ルアングア国立公園前ムフエ



■マラウィを北上するはずが……

レンタカーで約1ヶ月、南部アフリカ周遊の旅を終えた私たち。次なる目的地は東部アフリカ、ケニアの首都ナイロビNairobiである。ここには高校の同級生、すーちゃんが住んでいる。彼の暮らす家を目指して、南アフリカ共和国プレトリアから直線距離にして約3,000キロ、陸路でトコトコと北上していくつもりだ。

プレトリアからは直行バスに乗ってマラウィ南部のブランタイヤBlantyreという町に入る。そこからマラウィ湖畔を北上しタンザニアに入国。国境の町ムベヤMbeyaからは、タンザン鉄道に乗って首都ダル・エス・サラームDar Es Salaamに入る。ダル・エス・サラームからはバスでキリマンジャロKilimanjaroのふもとにある町アルーシャArushaへ。そこからはナイロビまで直通のバスが何本も走っている。ここまででざっと1ヶ月。途中いくつかの観光スポットを通過するので、気に入った場所で寄り道しながらナイロビに入ろうと考えていた。ナイロビではすーちゃんのお家に荷物を預けることができる。そこを基点にケニア周辺をまわる予定だった。

そんな私たちの東アフリカ縦断計画は、ある出会いであっという間にくつがえされることになる。だが、予定変更は私たちの旅のなかではよくあること。まだ心変わりする自分に慣れなかった時は、変更した自分のジャッジに自信を持てないこともあった。が、今の私たちは違う。「ムムム……これは絶対におもろいぞ」。そんなアンテナがピピピーンと動く時、私たちは自信を持って予定を変える。そしてそんな時は、間違いなく貴重な体験が待っていることも私たちは知っている。

今回私たちのアンテナをビビビーンと揺さぶってくれたのは、ブランタイヤの宿で出会ったSEAGUL(シーガル)さんという日本人ライダーだった。彼も私たちと同じように世界各地をまわっているのだが、250ccのバイクで、というところがスゴイ。日本を出てすでに2年以上。私たちはハナから行く気がなかった西アフリカもしっかりまわってきているツワモノだ。私は、SEAGULさんはとてもていねいに旅行をしてきている人、という印象を持っている。そんなSEAGULさんが私たちに興味深い体験談を聞かせてくれた。

SEAGULさんの旅の様子がわかるホームページはこちらからどうぞ⇒
『飛べ!世界へ!SEAGUL』
http://www.geocities.jp/seagull04jp/index.html


ザンビア東部にあるサウス・ルアングア国立公園South Luangwa National Park。ザンビア一の規模、クオリティを誇る公園である。SEAGULさんはこの公園の玄関口にあたる村ムフエMfuweのキャンプ場にしばらく滞在した。何とそのキャンプ場、夜になるとゾウやカバがやってくるというのだ。国立公園は川を隔ててすぐ向こう。周辺にはキリンも暮らしていて、あたりを歩いていると遭遇することもあるのだそうだ。

ボツワナのオカバンゴ・デルタでウォーキング・サファリに目覚めてしまった私たち。キリンやシマウマと同じ大地に立つことができる。もしかすると、またゾウがテントのそばまでやってくるかも? 今度はカバも来るかもしれない。しかもムフエのキャンプ場なら宿泊代だけですむ。うんうん。イメージできる。これはかなりおもしろいはずだ……!

マラウィ湖畔を北上するプランなど、もうどうでもよくなってしまった。私たちの気持ちはすっかりムフエに向かっている。そのキャンプ場は絶対私たち好みのはずだ。自信があった。「ホントにザンビア戻っちゃうんですかー!」私たちの盛り上がりっぷりに、少しヒキ気味のSEAGULさんである。そうなのだ。私たちは一度ザンビアに入国している。その時はもう2度とザンビアに来ることもないだろうと思っていたのだが、ムフエに行くとなると再入国の手続きをしなくてはいけない。

私たちはザンビアのビザ免除プログラムにトライして、ザンビア再入国の準備を進めることにした(後日、ビザ免除は結局かなわず、ザンビア入国のビザ代25USドルを再び支払うことになってしまったのだが)。そうして9月29日、私たちはSEAGULさんに別れを告げブランタイヤをあとにした。マラウィ、たった6日間の滞在であった。



■アフリカン・バスに揺られて


ブランタイヤからマラウィの首都リロングウェLilongweへ朝一番のバスで向かう。ここから先、国境の町ムチンジMchinjiまではハイエースを改造した乗り合いバスに乗る。ムチンジからは乗り合いタクシーを使い、国境事務所でマラウィ出国。次は隣のザンビア国境事務所でザンビア入国の手続きを済ませる。マラウィのタクシーはここでおしまい。私たちはザンビアのタクシーに乗り換え、約20キロ先にあるザンビア側国境の町チパタChipataまでたどり着いた。あたりはすでに暗闇。予定通り、チパタで一番安い宿に1泊することにした。

翌朝、チパタのバスターミナルからいよいよムフエ行きのミニバスに乗る。アフリカのバスは基本的にタイムテーブルがない。朝からバスターミナルに停まってはいるものの、満員にならなければ絶対に出発することはない。そうとわかっているならば、利用したい人全員が朝9時ごろにはバスに乗り込むという暗黙のルールがあってもいいようなのだが、そんなものは何もない。みんな三々五々集い目的地行きのバスに乗り込む。昼ごろには発車するだろう、そんな感じだ。それでも朝一番にバスに乗り込む人もたくさんいる。だから、集まりがいい時にはあっという間に発車することだってありえるのだ。効率がいいんだか悪いんだか。とにかく私たちのような旅行者はいつ発車するともわからないバスを、早めに乗り込んで待ち続けるしかない。呼び込みの助手が「あと1時間で発車だから」とか「すぐ出るから座っておけよ」とか言うが、やっぱりすぐに発車した試しはない。

私のこの半日はいったい何の意味があったんだろう、という気になってしまう時もある。たまにならいい。人間観察をしてみたり、隣の人と世間話をしたり、アフリカ時間に身をまかせることも旅の楽しみだ。だが、毎度となるとどうだ。むなしくなってしまう時もある。あるオーストラリア人旅行者は、最後の1人がどうしても集まらず出発できなかった時、思わず「もう1人分は僕が払うから出発しよう」と言って車を出させたと言う。1秒の遅れも許さない日本のダイヤもおかしいが、アフリカ時間を理解するのもなかなか難しいものがある。

ま、そんなことを言っても出発しないものはしないのでのんびり待つことにする。旅で覚えたのはこうやって「受け入れてみること」なのかもしれない。

結局私たちの乗ったムフエ行きのバスは13時過ぎ、のろのろと出発した。チパタからムフエまでは約135キロの道のりだ。20人ほどの人間とたくさんの荷物(砂糖60キロの袋×3とか、プラスティック製の椅子とか、何に使うかよくわからない金属パーツだとか様々だ)を積んでバスはチパタの町を抜けようとした。

と、バスは急停車し、Uターンを始めた。過積載がばれたのだ。ほとんどのバスが定員オーバーを承知でバスを走らせているのだが、運が悪いと警察と鉢合わせてしまう。そうなると近くの警察署に戻って罰金を払わなければいけないのだ。こうしてまた待つこと1時間。バスは再びムフエに向けて走り始めた。

ガタゴト、ガタゴト。バスは赤茶けた未舗装の道を乱暴に走っていく。バスの中も、私の口の中も砂だらけだ。途中、いくつもの集落を過ぎていく。みな私たちを珍しそうに眺める。バスを追いかけてくる子供たち。彼らの姿もバスの砂埃にあっという間に隠れてしまう。

ムフエに着いたのは日没ギリギリの18時。バスは私たちが目指すクロック・バレー・キャンプサイトCroc Valley CampSiteのゲートまで送ってくれた。




■川の向こうは国立公園

クロック・バレー・キャンプサイトはサウス・ルアングア国立公園のエントランスゲート近くに点在する私営キャンプサイトのひとつだ。一帯はルアングア川Luangwa Riverを挟んで北西側が国立公園、南東側には人間の住む集落が広がっていて、私営キャンプサイトもこの南東側にある。

キャンプ場はどこからでも川を見渡せるようになっている。バーの椅子からでもいいし、プールから顔を出してもいい。川を渡る生温い風を頬に受けながらのんびりできるベンチやブランコも等間隔に置かれている。川の中には目と耳だけ姿を見せたカバ。そのすぐそばでは、地元の漁師が網を使って魚を捕っている。この川にはワニもたくさんいるのだが(この辺りのキャンプ場はワニの名にちなんでいるものが多い。クロック・バレーもそうだ)、子供たちは岸辺で上手にワニと距離を取りながら遊んでいる。

対岸に目をやると、インパラの群れが水を求めて水際に降りて来ている。近くには砂煙をあげているシマウマの群れもいる。バキバキという音に別の方向へ目をやれば、子ゾウが枝をむしっているところだったりする。もっと遠くに目を向ければ、ゾウの家族が川を渡っているところを運良く目撃することもある。

クロック・バレー・キャンプサイトはそんな場所だ。動物たちの生活の息吹がすぐそばにある。そのど真ん中にテントを張り、1日を送ることができる。

私たちは翌日からキャンプ場の周辺を歩いてみることにした。朝夕2時間ずつのセルフ・ウォーキング・サファリである。国立公園のゲートまでは川沿いを歩いて20分ほど。ゲートにかかる橋の下にはカバの群れがいる。キャンプ場のマネージャーのショーンに借りた双眼鏡を肩に掛け、私たちは2人でトコトコ歩き出した。キャンプ場のスタッフは「動物が出たら危ないよ!」と少し心配げだ(私たちは動物を見に行きたいのだが)。

橋の下にはカバがうじゃうじゃいた。全部で30匹ほどだろうか。フォガー、ホガホガーと威嚇するような鳴き声があたりに響き渡る。よくよく見るとチビカバも大人にまじってけっこういる。小さな耳を360度ぷるんぷるん勢いよく回す。中に入った水をきっているのだろうか。あ、また潜ってしまった……。そんな群れが50メートルほど離れた先にもうひとつ。反対側にももうひとつ。カバだらけである。1時間ほどカバ・カバ・カバの光景を堪能したあと、私たちはご機嫌でキャンプ場に戻った。

淳ちゃんも私もすっかりこの場所が気に入った。南アフリカ共和国、ナミビア、ボツワナで動物観察をしてみて思ったこと。それは、私たちは目撃するだけでは満足できない、ということだった。「あ! カバだ!」そしてカバの写真を撮る。どうもそれだけでは満足できない。カバにストレスを与えないギリギリのところまで、できるだけ近くに寄って、しばらくカバの様子を眺めていたい。カバの鳴き声、カバの表情、カバの動き。時間が許すなら次の日も、そのまた次の日もカバの様子を見に来たい。カバの大あくびも見てみたい(あれは威嚇のポーズらしいが滑稽だ)。子カバが立ち上がるところも見てみたい。じゃあ大人のカバはどれくらい大きいんだろう。大人のカバが立ち上がったところも見てみたい。……そんなことを小さい声で話しながら、時間の許す限り眺めていたい。カバと同じ空間に立っていたい。

そう考えている私たちにとって、ここはまさしく天国のような場所だ。もちろんそれはカバに限ったことではない。野生動物だったら何でもいい。彼らが生きる同じ大地に立って、彼らをできるだけ眺めていたいのだ。




■キリンとはち合わせ

次の日も、そのまた次の日も私たちはキャンプ場周辺を歩いた。エントランスゲートにある橋まで行ってカバを眺めたり、キャンプ場そばにある小さな水場へ出かけてみたりした。

ある日の夕方のことだ。この日は少し離れた別のキャンプ場へ出かけることになっていた。いつも使う川沿いの道ではなく車道を歩いていた時だ。

カサカサカサ……。

何かの気配がした。これまでにもウォーキング・サファリ中に色んな動物に遭遇している。アンテロープの仲間ブッシュバック、黒い顔が目印のベルベット・モンキー、鼻先の長いマングースの集団。地元の人に教えてもらってゾウの家族を見つけたこともある。だが、今回はそのどの音とも違った。

それは、キリンだった。道の右側にある茂みからこちらをうかがっている。それも1頭だけではない。すぐうしろにもう1頭、少し離れたところにあと3頭。木の芽を食べてみたり、あちこち歩いてみたり。1頭は子供のようだった。

キリンの用心深さは私たちもよく知っているつもりだ。いつもは、ついつい間合いを詰めすぎて動物たちに嫌がられている淳ちゃんも、今回ばかりはジッとこらえて眺めていた。キリンとの距離は20メートルほど。たまたま出会ったからこんなに近い距離だが、ジリジリ寄って近づける距離ではない。キリンが安心するまで私たちは動かないことにした。

5分ほどたっただろうか。「この人たちは大丈夫みたいね」と思ってくれたようで、先頭のキリンが道に出てきた。ゆっくりとだが、彼らの歩幅は広い。あっという間に1頭が道を渡り、続いてもう1頭。それを合図に残りの3頭も、私たちの目の前を横切っていった。

警戒心を解いてくれたのだろうか。道を渡ったあとの彼らは、すぐそばにあるソーセージ・ツリーの木の下でムシャムシャと食事を始めた。1頭だけは常にこちらを見ている。だが、あの用心深いキリンが目の前で食事をしているのだ。それだけでスゴイ。私たちは彼らが食事を終えるまでジッと静かに見続けた。淳ちゃんもその場をほとんど動かなかった。

キリンは良い。警戒心が強いのでなかなか近くで見ることができないが、何より美しい。ビッグ5と呼ばれる人気動物(ゾウ、ヒョウ、バッファロー、サイ、ライオンの5つ。その昔、狩りが難しいとされた大型動物を指している)の中にすら入っていないが、穏やかな美しさがある。

ゾウはこわい。村人がおそれるのはだいたいがゾウだ。庭に実るマンゴーやトウモロコシを食べにくる害獣でもあるし(キャンプ場の専属コックも自分の家の庭に来るゾウ退治に必死だった)、毎年ゾウのせいで何人もの村人が亡くなっている。私たちが到着した日も、村を襲うことを覚えてしまったゾウがやむなく射殺されるという事件があった(その後、ゾウの肉は各家庭に6キロずつ分配されたそうだ)。道でばったり出くわしたのがキリンだったらいいが、ゾウ、それも子供のいるゾウの家族だったら大変だ。彼らは威嚇するだけでも相当なパワーを発揮する。私たち人間なんてあっという間にペチャンコだ。車から見るゾウと地上で出くわすゾウとでは印象がまったく違う。ゾウに出くわすと、小さいものが大きいものに感じる単純な恐怖感を抱かせられる。そしておそらくその恐怖心は間違っていない。ゾウは本当に私たちにとって危険なのだ。

そんな心配をする必要のないキリンが私は好きだ。淳ちゃんはそれでもゾウが好きらしいが、私はキリンが好きだ。そしてそんなキリンにばったり道で出くわすことができたこと、そして彼らを驚かすことなく、のびのびしている姿を見ることができたことは、私にとって貴重な体験だった。

■ゾウに追いかけられる

次の日、同じ場所を通りかかった時だった。今度の気配は明らかに、ゾウだ。

それは子ゾウを連れた家族だった。1、2、3、4、5……全部で6頭いる。昨日出会ったキリンとはわけが違う。とにかくゾウにばれないように風上へまわる。彼らが行ってしまうのをそこからジッと眺めようとした。すぐそばでは民家の軒先で遊ぶ子供の声がする。ゾウは昨日のキリンと同じように道の右側にあるやぶの中にいる。バキッ。バキッ。ゾウの音は他のどの動物とも違う。きわめて破壊的な音だ。

ゾウはなかなか道に出てこない。道を渡らないのだろうか。

「ちょっと、おれ様子見てくるわ」
しびれを切らした淳ちゃんがそう言って、まっすぐ進み出した。いや、好奇心が勝っちゃったのだろう。あれほど、ゾウに気を付けるようにと言われていたのに。ゾウの家族を右に見ながら淳ちゃんは早足でその場を抜けていく。

おいおい。私はどうしたらいいんだ……。淳ちゃんは向こうから「おいで、おいで」をしている。本当に大丈夫なんだろうか。私は肝試しとかは大嫌いなタイプである。とはいえ、このままこの場所でジッとしていても日が暮れてしまう。どうしよう。行ってみるか。

えーい。一歩を踏み出した。とにかくゾウに気づかれないように。右のやぶをちらちら見ながら、私も競歩のように早く歩く。走ってはいけない。ふぅー。無事淳ちゃんのところまでたどり着いた。もうこんな思いはこりごりだ。ゾウは思っていたより遠くにいたが、私はビビってビビって、もうどうかなりそうだった。

私はゾウのいる場所から少しでも離れたくて先を行くことにした。このまま左に曲がればぐるっとまわってキャンプ場に帰ることができる。そうするつもりだった。早足で後ろをふり返らずにできるだけ遠くへ歩く。安心できる場所まで一気に歩くつもりだ。

よーし、ここまで来たらもう安心だろう。そう思ってふり返ると、淳ちゃんがいない。しまった……。よく見ると、先ほどの場所で淳ちゃんはまだ何かしている。ゾウの様子をうかがっているようだ。

こっちー!早く早く!こっちへおいでー! 大振りの手まねきで何とか淳ちゃんを呼ぶ。あ、気づいたようだ。早く!早く!危ないから! やっとわかってくれたようで、こちらへ向いて歩き出したようだ。

そのすぐ後ろに、ゾウの家族が現れた。やぶから出てきたみたいだ。淳ちゃん、気づいていない。早くー!!!もう、さっきより10倍の手振りで伝える。後ろをふり返る淳ちゃん。おぉぉぉ……、ゾウじゃないか……。淳ちゃんはゾウをバックに、競歩の体勢でこちらへむかってくる。

もう生きた心地がしなかった。淳ちゃんがこっちにたどり着いたその時、ゾウの一行もこっちに向かって歩き始めた。その速いこと速いこと。んもぉー! こっちへ来るやんけー! 安心したのもつかの間、私たちはさらに超早足歩きでゾウから離れなければならなかった。

村の人があんなにゾウを怖がるわけが少しわかった気がした。彼らは容赦ない。体が大きいし、力がある。頭も良い。そんな動物がこちらへ向かってきたら……。うーん。近づかない方が賢明だ。


■リアル・アフリカを感じる体験

今回私たちがムフエで体験したことは「これぞまさにアフリカ!」と言えるようなことばかりだった。典型的なアフリカ・スタイルのバスに揺られて行くムフエまでの近くて遠い道のり。人間の暮らしのすぐ隣にあるゾウの恐怖。それは、作物を横取りされることだったり、不意に遭遇して襲われるかもしれないという、直接的な脅威だ。そして、村人が普段使う道に現れるキリン、人間が漁をするすぐそばで水浴びをするカバ。もちろんムフエに来るきっかけとなった「キャンプ場にゾウやカバが来る!」という事件も何度かあった。

もうひとつご紹介したいエピソードがある。

クロック・バレー・キャンプサイトでは、もうひとつやりたいことがあった。この場所を教えてくれたSEAGULさん、ここで何とカバの肉を食べたというのだ。ぜひ私たちも食べてみたい……、そう思ってこのキャンプ場専属のコックにそれとなーく話題をふってみた。「カバ? 食べるよ。なに、食べてみたい。そうか。じゃあ今日のお昼に食べさせてあげよう」。そうして昼食、地元料理であるンシマ(トウモロコシの粉を水で溶いて蒸し上げたようなもの。菜っぱと肉類をトマトソースで煮込んだシチューと呼ばれるものにつけて食べる)の中に、カバの肉が入ってきた。味はまるで干した鰹のようでなかなかの美味。そんなことではない。やはり村の人は普段からカバの肉を食べるのだ。その土地にあるタンパク質を食べるのは当たり前なのだが、カバ! カバである。カバを食べる、その事実に単純に驚いてしまった。

そんなできごとも含めて感じたこと。このムフエという村は、アフリカの大自然とゆるやかにつながっている場所だなあということだ。すぐ隣の国立公園は川を隔てただけのもの。動物たちはその境界をいとも簡単に乗り越えてくる。そしてこの土地の人間は、こちら側にやってくる動物たちを当たり前のように暮らしの中に受け入れている。そんな彼らは、私たち外国人のようにゾウの存在を手放しで喜んだりしない。脅威の対象として恐れているし、また、肉が配られたら食しもする。そんな場所で過ごすこと。その体験がまさに「リアル・アフリカ」だなあと思うのだ。

人それぞれアフリカに寄せるイメージは様々だろう。私たちは、野生動物が見たくてアフリカにやってきた。そして、ボツワナで動物たちと同じ大地に立つ素晴らしさを体験してしまった以上、野生動物に会うなら鉄で囲まれた車の中からだと少し物足りなく感じてしまう。遠くからでもいいから、同じ大地に立って眺めたいと思う。そんな私たちの好む動物観察スタイルを崩すことなく、むしろさらに自由度を増して、ムフエではさらに、人々とゆるやかにつながった野生動物の世界を見せてもらうことができた。これが私たちの思うリアル・アフリカでなくて何だろう。

そうして、私たちは1週間のムフエ滞在を終えることにした。仲良くなったキャンプ場のスタッフたちとのお別れもつらかったし、何より、少し歩けばキリンにもカバにも会えるこの環境を離れるのは惜しかった。だが、私たちは心から満足している。予定していた東アフリカ北上ルートでは決して得られることのなかったリアル・アフリカな体験。また私たちの宝物がひとつ増えた。






▼ムフエでのセルフ・ウォーキング・サファリについて

とまあ、まるでタダでウォーキング・サファリができるようにご紹介しましたが、実際にオススメしていいかというと私も自信がありません。

ザンビアにはZaWA(Zambian Wildlife Authority)の管理する約15の国立公園の他に、GMA(Game Management Area)という半保護地域がいくつかあり、そのほとんどが国立公園の周囲に緩衝地帯として設定されているようです。私たちが訪れたムフエは「Lipande GMA」というエリアの中に入っていました。国立公園内ではガイド無しの個人ウォーキングはもちろん禁止。ですが、GMA内では特に制限がないようです。このルールについては首都ルサカにある観光案内所(ZNTB:Zambian National Tourist Board)の職員に真偽を確かめてもらったので間違いがないはずですが、地元の人の中には「法律でガイドなしで歩くことは禁じられている」という人もいます。また、実際ゾウに出くわすこともあり危険なので本心から心配して「個人で歩いちゃだめ」と忠告してくれる人もいます。これをどう解釈するかはそれぞれかと思います。地元に還元するためには、たとえ村の道を歩くにしても地元のガイドを雇って歩くのが一番でしょう。単独ならなおさらです。私たちは、単独でないこと、一度ウォーキング・サファリを経験していること、何より自分たちで歩きたいこと、からガイドを雇うことはせず、それ以外で地元の人々に還元する方法を取ることにしました。


▼サウス・ルアングア国立公園のロッジ

国立公園ゲートそばのキャンプ場に泊まる他にサウス・ルアングア国立公園のロッジに泊まるという方法もあります。この宿目の前がヒッポ・プール。すごい場所にあります。他にも公園内のキャンプサイトには夜中ハイエナがやってくるとか、とにかくこの一帯は動物が濃い場所です。webサイトがありましたのでご紹介します。

Mfuwe Lodge
http://www.mfuwelodge.com/






 
アフリカ マラウィ サファリ
ウォーキング・サファリが好き!と言いながら、実はゲームドライブにも1回参加。キャンプ場で知り合ったマラウィ人のおっちゃんがタダで連れて行ってくれました。公園内はもう動物がうじゃうじゃ。これはゾウの親子に出会ったところ。

 
アフリカ ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ 動物
大きく蛇行するルアングア川にいたカバの集団。でかい口!

アフリカ ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ カバ
撮影場所秘密の写真。ゴメンナサイ。カバが左方向へ移動中。

アフリカ ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ゾウ
運がよければゾウが川を渡るところを見ることができます。あたりの景色と相まってかなり雄大な眺め。見えますか?ゾウの下半身だけ濡れているんです。

アフリカ ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ クロック・バレー・キャンプサイト
クロック・バレー・キャンプサイトのプール。奥に私たちのテントを張っています。その奥はルアングア川。

ルアングア川 ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ワニ
ルアングア川にはたくさんワニがいます。これは小さく見えますが全長3メートルほどのクロコダイル。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ カエル
キャンプ場で見つけたまっ白のカエル。だんだん淳ちゃんの虫&生き物好きが加速しているような気がします。これもかなりお気に入りだった模様。

 
ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ベルベット・モンキー
キャンプ場の周辺にたくさんいるベルベット・モンキー。バブーンと並んでキャンパーの敵です。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ゾウ
散歩中にゾウと遭遇した時の様子。わかりにくいですがヤブの向こうにゾウがいます。近いです。心臓バクバクでした。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ カバ
これは国立公園ゲートのある橋の下のカバたち。子カバが結構混じっています。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ キリン
キリンと遭遇した時のもの。道を横切ろうとしていますね。こっちは動かずジッとガマンです。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ キリン
道を渡ってソーセージ・ツリーの木の下まで行ったキリン。こちらの様子をうかがっているものの後ろに他のキリンがいます。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ キリン
嬉しかったのでもう1枚。もういなくなったかなーと思った時に現れたキリン。か、かわいい……。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ゾウ
キリンとの遭遇のあと向かった別のキャンプ場FlatDogにて。道路から敷地内に入ったところで「危ないから乗って行きなさい」とレセプションまでキャンプ場の車が乗せてきてくれました。着いたとたんにこの光景。後ろに何も知らないスタッフが自転車でやってきています。このキャンプ場は本当によくゾウが来るので本当に危ないそう。「絶対に歩いちゃダメよ!」と言われ、帰りも安全な場所まで車で送ってもらいました。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ゾウ
先日キリンと遭遇した場所で今度はゾウの家族とバッタリ。おそるおそる……ってところでしょうか。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ゾウ
気がついたら後ろにゾウたちが……で、走らず且つ慌ててこちらへ逃げてくる淳ちゃん。もうヒヤヒヤしました。ずいぶん遠いところからの撮影でごめんなさい。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ゾウ
道に出てきたゾウ。右はキャンプ場の看板です。

ザンビア サウス・ルアングア国立公園ムフエ サファリ ゾウ
ゾウの家族もいたお気に入りの水場。夕方キリンが現れることも。普段はアンテロープの一種ブッシュバックが草を食む穏やかな場所です。

アフリカ ザンビア 子供 水
これは人間の水場。水汲みは子供たちの仕事です。えらいぞ!

アフリカ ザンビア 子供
淳ちゃんが「しぇー!」を伝授。上手にできる子、できない子。それぞれだけどみんな楽しそうに覚えたてのポーズを披露しています。奥は一般的な民家。

アフリカ ザンビア アリ塚
アリ塚と記念撮影。

アフリカ ザンビア カバの肉
カバの肉をいただいているところ。手前の白いのがンシマです。

アフリカ ザンビア カバの肉
どんな感じかというと……こんな風。この青菜はアフリカ中でよく食べている栄養いっぱいのゴツイほうれん草と言ったところ。スワヒリ圏では「スクマ」と言うのですがこの周辺で何というのか忘れてしまいました。ゴメンナサイ。

アフリカ ザンビア カバ塚
これもSEAGULさん情報にあったのですが、私たちもキャンプ場近くにカバ塚を発見。この骨からイメージできますか?




▼PART47 2005.11.28 赤道直下の氷河を見に行こう 〜ケニア マウント・ケニア国立公園その1
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