World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART43 2005.08.30 アフリカゾウの楽園へ
>>南アフリカ アド・エレファント国立公園



■アフリカの旅、始まる

アルゼンチン、ブエノス・アイレスを発ち、アフリカ大陸に降り立った。南アフリカ共和国、ケープタウンである。

アフリカ! アフリカ? 動物たちがたくさんいるところ。コイサンマンがいるところ。他に? ……だめだ。ほとんどイメージできない。

話に聞いていたとおりのとても近代的な空港で、私たちはキョロキョロしている。壁の広告、イミグレの職員、陳列されたもの。そうは言っても「アフリカだー!」ってのを、何だかあちこちから感じる。

南アフリカ共和国といえば、悪名高い「アパルトヘイト」を真っ先に思い浮かべる人が多いだろう。現在その制度自体は、法律が撤廃され、憲法が改正されているのでなくなっているのだが、社会のしくみが変わったとは言い難い。それでもここ南アフリカ共和国は、2010年のサッカー・ワールドカップ開催国に決定している。わかりにくい、難しい国だ。

アフリカ(とくくられている地域)には何と53もの国があるという。ちなみに南米はというと、たったの13ヵ国(フランス領ギアナを含む)。それだけでもアフリカが抱える複雑な歴史が垣間見える。

多くの国が1950〜60年代にやっと独立を果たし、近代化の道を歩み始めている。だが一方で最初の人類が誕生したのはここアフリカなのだ。

そんなアフリカの歴史や文化は知らないことが多いだけに興味がある。が、それよりも何よりも今の私たちがアフリカでやりたいことはただひとつ。「野生に暮らす動物たちに会いたい!!」これなのだ。

アフリカでは物価やマラリア対策のこともあって、南米のようにのんびり旅することはちょっと難しい。だからこそ、コレ!と的を絞って回ることに決めていた。つまりアフリカは「動物三昧」で行こう、というわけだ。

問題はどうやって「動物三昧」するかだ。アフリカ+野生動物、というと思い浮かべるのは、ケニアのマサイ・マラ国立公園あたりだろう。ここでは、サファリという動物観察のツアーに参加するのが一般的のようだ。動物園にしかいないような野生動物を見に行くのだ。そりゃあツアーに参加しないと無理だろう。私たちも最初はそう思っていた。

ところが、パタゴニアで私たちは「レンタカーで好きに回れるよ」という話を何人かの旅行者から聞いていた。ツアーではなかなか自分たちの思い通りに動物観察をするわけにいかないだろう。だが、自分の足で回って動物観察をする楽しさはコスタリカで味わってしまっている。アフリカでも、できれば自分たちの足で回りたいなあ……当然のように私たちはそう考えていた。

私たちの持っている国際免許でそれが可能なのが、どうやら南アフリカ共和国、ナミビア、ボツワナの南部アフリカ3国のようだった。南アフリカ共和国は国立公園が充実しているし、ナミビアには世界一とも言われるエトーシャ国立公園、そしてボツワナには憧れのオカバンゴ・デルタがある。

特にナミビア、ボツワナに関しては、交通機関や安宿の少なさから長期旅行者は敬遠しがちな場所だという。多くの旅行者はオーバーランドツアーという見どころを10〜14日ほどかけてまわるツアーに参加するらしい。だが、車があればどのスポットも思う存分楽しむことができる。確かにレンタカーを借りればお金はかかる。だが、オーバーランドツアーに参加したって、行きたい場所を考えればひとり10万円は下らないのだ。

そんなわけで私たちのアフリカ旅行のスタートは、南アフリカ共和国・ナミビア・ボツワナの3国をレンタカーでぐるっと回るルートで行くことにしていた。総走行距離約1万キロ。動物たちの楽園をめぐる1ヶ月ちょっとの旅だ。




■ひとつめの国立公園へ

最初の目的地はアド・エレファント国立公園だ。その名の通りアフリカゾウの保護を主目的に設立された公園だ。

ケープタウンに入った私たちはさっそくレンタカー会社を回った。まるでヨーロッパのような街並みのケープタウンにはそういった会社がいくつもあって、到着したばかりの私たちでも困ることはない。2日目には私たちの足となる車を確保することができた。

ケープタウンにも見どころはいくつかある。大航海時代にバスコ・ダ・ガマがたどり着いた喜望峰(ここはアフリカ最南端ではなくて南西端なのだそう)や街のすぐ裏手にそびえる見事なテーブルマウンテン……。残念ながら私たちが訪れた8月というのは冬の終わりで、ケープタウン周辺は3日おきに雨が降るイマイチな天候が続いていた。

私たちがケープタウンに着いた日、そしてレンタカーを決めた翌日がまぁまぁの晴れ。そして、その翌日は大荒れの天気となってしまった。天候回復を待つ? いや、私たちはすでにレンタカーを借りてしまっている。そしてゾウに早く会いたくてガマンができない(もちろんレンタカーを遊ばせておくのも気になっていたが)。そんなわけで早々にケープタウンを出ることにした。正直なところ、街の人々にちょっと活気が無くてイマイチ好きな場所でなかったこともある。とにかく、ゾウ。まずはゾウに会わないことには落ち着かない。

ケープタウンから東へ約800キロ。アド・エレファント国立公園は、密猟者に追いつめられてわずか11頭にまで減ってしまった、一帯のアフリカゾウを保護するために作られた公園だ。南アフリカ共和国には19の国立公園、私営のものも含めると500以上もの保護区があるのだが、その多くが絶滅の危機にさらされている野生動物の保護を目的に設置されている。このアド・エレファントのように保護対象の動物がそのまま公園名になっていることも多い。

現在は1万2,000ヘクタールの敷地内に約4,00頭ものアフリカゾウが暮らしている。その他にもバッファローやクロサイがのどかに共存しているとのこと。アフリカゾウを至近距離で見られる確率は1/4。至近距離でなくてもほぼ確実にアフリカゾウに会えるとあって、南アフリカ共和国イチ人気の公園だという話だ。

私たちの車は海岸沿いに走る高速道路から内陸部に進路を変える。低い木が延々と続く森林地帯の間を一本道が貫いている。ここにゾウがいるのかぁ……動物園でしかゾウを見たことがない私たちは、ゾウが暮らす場所すらピンときていない。そのうち道路脇に「Addoアド」という地名を現す看板が登場した。いよいよゾウに会える。ゾウたちの楽園へ、私たちは踏み込むのだ……!

看板の案内通りに右手へ進む。すると線路が現れた。せ、線路? いったいどういうイメージを持っていたのか自分でもわからないのだが、線路がすぐそばを走っているという事実にちょっと驚く。そのうち公園の敷地を示す柵が目に飛び込んできた。

私は何か大きな勘違い、いや、思いこみをしていたようだ。野生動物が暮らすと言っても、今やこの地球上に放ったらかしの場所などないのだ。それは、誰もいないようなパタゴニアでさえ、どこまでも柵が続いていたことからもわかるはずだ。ましてやここは動物を保護する国立公園。柵があって当然だ。ちょっと目が覚めた気がする。私が勝手に作り上げた理想は捨てるべきなのだ。

そして車はアド・エレファントのゲートをくぐった。



■夜のウォーターホール

予約もせず訪れたが、ピーク時ではなかったので私たちは公園内のキャンプサイトを確保できた。ここは1泊100ランド(約1,750円)。それに国立公園の保護管理費として1日ひとり80ランド(約1,400円)が別に要る。野生動物に会うにもなかなかお金がかかるのだ。その分と言っては変だが、施設は十分すぎるほど充実している。皿洗い場に洗濯場、トイレにはシャワーにバスタブまである。普段、キャンプと言っても川という水場と平地があればキャンプ地、な私たちにとってこれはそこらへんの安宿よりさらに快適なくらいだ。

明日は6時30分にゲートが開くという。実のところアド・エレファントに来たのはゾウに会うことの他に、「フンコロガシがいるトレイル」を歩くことも目的だったのだが、残念ながらトレイルは封鎖中になっていた。というのも、草食動物の楽園だったはずのアド・エレファントなのだが、彼らの数が増えすぎてしまったために、2年前に肉食動物であるライオン6匹とブチハイエナ8匹を導入したのだという。で、そんな危ない場所を人間が歩けません、いうわけなのだ。私たちの見た情報が古かったんだかなんだか。とにかくトレイルを歩くことは不可能になってしまったので、車から動物たちを眺めるしか方法はない。

ここアド・エレファントでは2,000円ぐらいでガイド付きのサファリを楽しむことができる。が、とにかく私たちはもうゾウを早く見ないと気が済まない。それもたっぷり。まずは明日の早朝一番にゲートをくぐり、自分たちで回ってみよう、ということになった。もしあまりにもデキが悪ければ、おとなしく午後からのサファリに参加すればいい。

明日の朝に備えて早く寝ることにした。ここまで慣れないまま突っ走ってきたので正直クタクタである。21時、日記を書いて寝ましょうか、ということになった。今日レセプションでもらったフィールド・ノート(動物たちの習性をわかりやすく書いたレポート)を目をこすりながら読む。

……ん? これはどういう意味だ? 慣れない英語の資料だけにもう一度読み直す。『夜、ウォーターホールに集まってくるクロサイを見られるかもしれません』とある。た、大変だーっ! 私たち見逃してるっ! 慌てて私たちはテントから這い出て、そのウォーターホールと呼ばれる水場へと向かった。

オレンジ色のライトに照らされた水場は少し上から見下ろせるようになっていて、ベンチが3つ置いてある。2つのベンチには先客がいた。みんな息を殺して水場を眺めている。何がいるのかなー? わくわくしてのぞき込んでみると、残念。何もいなかった。「何にもおれへんやないかなー!」ヒソヒソ声のつもりの淳ちゃんだが、辺りに響き渡っている。隣のベンチの人がこちらをチラッと見てきた。シーッ! 子供みたいに、人差し指を口に当てて淳ちゃんの方を向く。私たちはそのまま固まったように水場を見つめ続けた。

夜の公園はなかなか冷える。長期戦覚悟で淳ちゃんが寝袋を取りにテントへ戻る。5分後、ケープタウンで買ったラムのボトルにコップまで抱えてベンチまで戻ってきた。やっぱり足音が響いている。……と、そこに何か影が動いた。観察してる私たちの空気もキュッと引き締まる気がする。

低木の陰から用心深く出てきたのは立派な角を持ったクードゥーというシカのような動物だった。インパラなどに見た目は近いが2まわりぐらい大きく、角は大きく螺旋状に伸びている(あとでわかったことなのだが、インパラもクードゥーもシカではなく、ウシの仲間でレイヨウ[アンテロープ]という種類なのだそうだ。日本で言えば、ニホンカモシカ。あれもシカという名のウシなのだ。大きな特徴は、角が頭蓋骨の一部で[シカは毎年生え替わる]、枝分かれせず空洞でスクリュウ状に伸びているものを言うそうだ)。1頭のオスが水場の安全を確認すると後から続いて2頭のメスがやってきた。反対側の斜面には別のオス2頭の姿も見える。

ガサッ。何かの物音に驚いたのだろう。突然彼らは驚くような跳躍を見せて、あっという間にどこかへ消えてしまった。彼らを襲う何者かがいたのだろうか。私たちにはわからなかった。

私たちの野生動物観察はクードゥーから始まった。でも今日はここまで。明日も早いし、どうやら生き物の気配が消えてしまったのでテントに戻ることにしたのだ。明日はいよいよゾウとご対面、となるかどうか。



■セルフサファリデビュー

翌朝は5時30分に起きるはずだった。が、淳ちゃんは5時に起きている。「大変や!続々と車が出て行ってるわ。きっとゲート前は行列やで!」と、もう焦りまくっているのだ。その割には周囲のサイトには車が残っているけど……。ま、でも朝ごはんはゲートに着いてから食べればいいしね、と私たちは6時過ぎ、キャンプ場をあとにした。

ゲートまでは5分。淳ちゃんの心配をよそに(やっぱり)ゲートには誰もいなかった。よかったよかった。むしろ張り切りすぎな自分たちがちょっと恥ずかしくもなる。だいたいセルフサファリどころかサファリ自体が初体験なのに、こんな一番乗りしてしまっていいのだろうか。急に自信が無くなってしまった私たちは意味もなく脇道で次の車を待って、2番目にゲートをくぐったのだった。

園内には大きく分けて2つのループがある。つまり、右に行くか、左に行くかでゾウに会えるかどうかの運命が(たぶん)大きく変わってくるのだ。公園のレセプション前には「動物出没情報」をマークした地図が張り出してある。だがたぶん朝一番の情報はまだ張り出されていないはずだ。こうなったらカンで行くしかない。と、言いつつ私たちは一番目の車のあとを追ってGorah Loopに入った。

公園内の制限速度は40キロ。私たちはそれ以下のゆっくりしたスピードでゾウがいないか、他の動物たちがいないか、目をこらして探しながら進む。前の車はもうどこかへいってしまった。そろそろ日の出がすんでいるはずだが、空は一向に明るくならない。たぶん天気が悪いのだ。窓は全開なので、冷たい空気が容赦なく体を包む。

フッと視界の左に何かが写った。その方向を見る。ハイエナだ。ブチハイエナだ。3匹いる。そのうちの1匹は見定めるようにジッとこちらを見下ろしている。獲物を横取りするずるがしこいヤツ、というイメージだったが、強い意志をこちらに投げつけてきているように感じる。ライオンの方がむしろハイエナの獲物を横取りする方が多い、という話も納得できるほどの強い目だ。彼の目に射すくめられてしまった私は、写真を撮ることもできずに固まるしかなかった。しばらくして、襲う価値も無いと見たのか、彼らはぷいっと行ってしまった。

車の中からのぞいているのに、この恐怖。動物園とは明らかに違うこの感覚にさっそくゲームドライブ(動物を観察しながらドライブすることをいう)のとりこになっている。

遠くではレッドハーテビーストの姿が見える。彼らも大型のシカのようなウシである。オスメスともに角があって、美しい竪琴型をしている。……あっ!さっきのハイエナたちに追っかけられている! 気を付けて! 目の前で当たり前のように繰り広げられる自然の光景に私たちもついつい声が出る。

しばらく車を走らせると遠くにシマウマの姿が見えた。丘の上からこちらを見下ろしている。動物園(実はブエノス・アイレスで一度動物園に行っているのだ)で見た時は「こいつもただの馬やなあ!」なんて見下していたけれど、草地の中にたたずむシマウマの美しいこと。あたりの風景と見事に一体化してひとつのリズムを作っている。彼らのまわりにだけ静かな音楽が流れているようなのだ。

そうこうしているうちにGorahLoopは終わってしまった。そう、ゾウに関しては不発に終わったのだ。暖かい日、水浴びをしにゾウたちは水場へ多く現れると言うから今日は難しいのかもしれない。厚着をした私たちだって寒いのだ。ゾウたちだって寒いに決まっている。でもここで嘆いているわけにはいかない。次はもうひとつのループ、HapoorLoopへ向かうことにする。



■いよいよゾウとご対面

ループの入り口すぐにあるGwarriePanという水場に来た時だった。お? 何かいるぞ、と思ったら10頭ほどのバッファローだった。ここのバッファローたちは地元の農民たちにずいぶん狩られた経験から夜行性になってしまっている、と聞いていたが、今日は寒いせいだろうか。出てきている。

よくよく見るとバッファローの中にゾウが1頭まぎれていた。おおっゾウだ! するとそのゾウは「えぇーい!あっちへ行けー!」とばかりに鼻を振り回しバッファローを追い払っている。「穏和なゾウ」というイメージを勝手に持っていた私たちだが、当たり前のようにやっぱり違う。どうやら水場の横に何かおいしいものがあるらしく、彼はそれを独り占めしたかったようなのだ。ずいぶん大きい角を持ったバッファローだが、しぶしぶゾウのまわりを離れていく。しつこいけれど、動物園では決して見られない光景。野生って素晴らしい……1頭目のゾウにして早くも「ワイルドライフ最高!」なヤバイ人になっている私たちだ。

隣に車を止めている男性が私たちの方を指さしている。ん? 何のことかよくわからない私たちだ。いや、私たちじゃない。その後ろだ。慌てて振り返る。私たちの車の向こうには丘の上まで続く幅の広いトレイルがあった。そしてその丘の上から、1頭の大きなゾウがノッシノッシと、優雅にそしてけっこう早いスピードでこちらにやってきたのだ。

それはまさに「登場」という言葉にふさわしい場面だった。大きな耳をハタハタと振りバランスを取っているのか、体の動きとリズムがあっている。私たちはまたもや写真を撮ることも忘れてその光景に見入っている。

彼はあっという間に私たちのそばまでやってきた。先にいたゾウを追い払い、のーんびり水を飲み何かを食べている。それが合図だったかのように、別の茂みからゾウの家族がやってきた。ゾウは母系社会だ。年長の母ゾウがリーダーをつとめて、若いゾウは子守をするという。アフリカゾウには本来メスにもキバがあるのだが、ここのメスゾウにはほとんどキバがない。おそらく象牙が目的だったハンターたちから無視されたゾウたちだけがかろうじて生き残り、そのゾウの遺伝子がこの公園のゾウたちには残っているのだろうと言われている。母ゾウに連れられた子ゾウが、お母さんのマネをして一生懸命水を飲んでいる。一方では寄り道ばかりする子ゾウに「早く行きなさい」とばかりに鼻で促している母ゾウもいる。

そのうち別のゾウがこちらへやってきた。水場と駐車スペースとの間は約50メートル。実際車の中から眺めていると、もっと近くで見たいなーと思わないでもない距離である。だがここのゾウは慣れているのだろう。好奇心旺盛そうなゾウが2頭、私たち車に向かってずんずん歩いてくるのだ。

私たちの車内は大騒ぎだ。今度こそ写真も撮りたい。でも近くでたっぷりゾウの目も見たい。あー大変だ。どうしよう、どうしよう。淳ちゃんは私の座席の後ろに移動して撮影体勢に入った。

そんな私たちの慌てっぷりなどお構いなしに、2頭のゾウは私たちの車のそばでキバを合わせて遊び始める。キバがこすれ合うカチカチという音まではっきり聞こえる。遊び飽きたのか、ジョジョーーッと大量のオシッコ&ウンチまでやってくれた。そのうちまた水場へ帰っていく。

水場の対岸に何かがチラッと動いた。チョコチョコ水際を移動している。あの色はハイエナか!? 子ゾウが狙われている!? またもやざわめく私たちの車内である。いや、違った。よくよく見たらイボイノシシだった。こっけいなその動きに思わず吹き出す私たち。イボイノシシはアフリカに来たら絶対会いたい動物のひとつだったのだ。

しばらくするとゾウたちは茂みの中へ帰っていった。それを待っていたかのように、先ほどのバッファローたちが戻ってくる。今度は彼らの独壇場だ。やがて彼らもどこかへ消えていった。


■野生の劇場に感動

そして、水場には誰もいなくなった。そう、まるで幕が引いたようだ。水場はまるで劇場のようだった。次から次へと動物たちが姿を現し、思い思いの行動をし、また消えていく。……野生の劇場。かなりださいネーミングだが、まさにそうなのだ。そして私たちは本当にただの観客にすぎない。車のなかからまるで無機物のように彼らの様子を観察するしかない。そしてそれがベストなのだ。

トレッキング中に出会った動物たちを観察するには、気配をできるだけ消すことが一番だ。だが車ではそう言うわけにもいかない。エンジン音まではコントロールできないからだ。そのせいで敏感な動物には近づきすぎることはできないし、逆に車に慣れてしまった動物たちを目撃することにもなる。

だが、肉食動物も住む大自然ではこのスタイルがおそらくベストだろう。私たちはこれからいくつか訪れる動物たちの楽園でもできるだけ車と一体になって無機物であろうと思う。

けっきょくその水場に私たちは2時間ほどいたことになる。誰もいなくなった水場をあとに私たちはキャンプサイトに戻った。12時のチェックアウト、ぎりぎりだった。

テントをたたんで午後からもう一度ゲームドライブに行く予定だった。だが、昼食を終えたころ、大粒の雨が降り出した。この雨で動物たちが出てきているとは思えない。私たちは車の中で雨が止むのを待った。

15時過ぎ、雨が小降りになったのでもう1周してから公園を出ることにした。朝、大きなゾウが下ってきた坂の反対側をゾウの一家が登っていく姿が見えた。

こうして私たちのセルフサファリ初体験が終わった。天候がイマイチだったがゾウの家族にも会えたし、至近距離でゾウの目を見ることもできた。

確かにここは柵で囲われたゾウの楽園だ。本当の意味での自然ではないだろう。だが、私たちは動物園のゾウとは明らかに違う、何とものびのびとした姿に会うことができた。ゾウにはこんな表情があるのか! と自分の目で見ることができただけでも、貴重な体験を提供してくれる場所だと思う。

あと気になるのは、この環境がゾウにとって本当のところどうなのか、ということだ。楽園は、種にとって本当に楽園であり続けることができるのだろうか。ここでもまた、自然の保護という難しい問題にぶち当たるのだ。私たちはこれからこの目でそのいくつかを目撃していくことになるのだろう。

私たちはアド・エレファント国立公園をあとにした。このあとは、マウンテンゼブラ国立公園という、ヤマシマウマを保護している国立公園にも寄り道することにした。今まで名前も知らなかったような草食動物の姿の美しさに何だか魅せられてしまったのだ。

マウンテンゼブラ国立公園のあとは一気にナミビアを目指す。






 
南アフリカ アド・エレファント国立公園 サファリ バッファロー
水場に集まるバッファローたちを1頭のゾウが追い払っている様子。このあたりまだまだ写真を撮り慣れていなくて色味が統一できていません。ごめんなさい。。。

南アフリカ アド・エレファント国立公園 サファリ アフリカゾウ
テーマソングが流れてきそうな親子の登場シーン。アフリカゾウはこのように皮がちょっと伸び気味なのも特徴だそうです。一番前はお姉さんかな?

南アフリカ アド・エレファント国立公園 サファリ アフリカゾウ
お母さんのマネをして一生懸命水を飲んでいます。大人のゾウは1日に100リットル近い水を飲むそうです。ちなみにごはんは1日に150〜200キロも食べて、何と100キロのウンチをするそうです。体重は大きいもので7トンにもなると言うので当然の量?それにしても驚きです。

南アフリカ アド・エレファント国立公園 サファリ アフリカゾウ
若いオスゾウでしょうか?戦いのまねごとをして遊んでいるようです。心なしかカメラ目線のような気がしますよね。ゾウは母系社会なので若い独身のオスは単独行動か若いオスどうしで群れをつくるそうです。

南アフリカ アド・エレファント国立公園 サファリ アフリカゾウ
好奇心旺盛な彼らがすぐそばまでやってきたところ。めっちゃ近いです。もう私、アワアワしています。ゾウの個体識別は主に耳の切れ目や形、浮き出た静脈で判断するそうですが、顔のしわでも識別できるんだそうです。

南アフリカ アド・エレファント国立公園 サファリ イボイノシシ
わお!イボイノシシだ!『ライオンキング』のプンバとおんなじ。ブサイクなやつらですが、キュッと上がったお尻がキュートです。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ マウンテンゼブラ
ここからはマウンテンゼブラ国立公園の様子です。これは早朝ゲームドライブに出た時会ったマウンテンゼブラ(ヤマシマウマ)。やっぱりまだまだ寒いのでブッシュの陰にいたりします。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ スプリングボック
これはスプリングボックSpringbok。たーくさんいるのですがいつまでたっても見飽きない美しい肢体を持った動物です。かなり敏感なようで私たちの車の音に驚くと、びよーんびよーんとまるで足にバネが付いているかのように跳ねてあっという間に遠くまで行ってしまいます。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ マウンテンゼブラ
お昼前になると暖かくなってきてマウンテンゼブラたちも少しずつ開けた場所に出てくるようになりました。夏には彼らの奥の草原が緑に染まり、まるでマウンテンゼブラのための円形劇場のようになるそうです。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ マウンテンゼブラ
マウンテンゼブラくんたち、なぜか振り向くんですよね。で、ジッと止まってこちらを観察しています。一目散に逃げていかないので写真も撮りやすい。こういった習性を持つ動物が他にもけっこういて、その習性ゆえにライオンに襲われたりもするそうです。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ マウンテンゼブラ
普通のシマウマとの違いはいくつかありますが、わかりやすいのがお腹。マウンテンゼブラにはシマがありません。そして顔のあたりが赤茶色をしていること。耳がロバのように大きいこと、などが上げられます。このケープマウンテンゼブラという種類は体長1.2メートルほど、とロバのように小ぶり出、ヤマの斜面での生活に適応しやすくなっています。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ キャンプ
ほとんど貸し切りだったキャンプ場の様子。奥に写っているのが私たちの愛車。昼食をとりに戻ってきたところです。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ ブラックワイルドビースト
夕方公園を出る前にもう一度ゲームドライブに出ました。その時目撃したブラックワイルドビーストBlack Wildbeestsの群れ。先頭を行くリーダーがOKを出すと(たぶん)群れの他のメンバーがドドッと水場に殺到する、という様子でした。ワイルドビーストはその名の通りかなり荒んだ感じのするウシのような動物なのですが、とにかくものすごく用心深い!なかなか近くで写真を撮ることができませんでした。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ ブラックワイルドビースト
水を飲み終えてまた他の場所へ移動するところ。ちょっと離れて先頭を行っているのがおそらくリーダーです。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ ボンテボックス
これはたぶんボンテボックスBonteboksという動物。強そうな筋肉を持ったこれまた美しいウシの仲間。こいつも用心深いクセにある程度の距離まで行くとすぐふり返ります。そんなトコロをパチリと1枚。夕刻が迫っていてあたりは黄金色です。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 サファリ ボンテボックス
たまたま近くで撮れたボンテボックス。ハーテビーストとよく似ているのですが、顔の色の組み合わせがちょっと違うんです。

南アフリカ マウンテンゼブラ国立公園 夕陽
そしてマウンテンゼブラ国立公園に沈む夕陽。あーアフリカだなあーと思いますね。




▼PART44 2005.09.16 白い大地に残された「野生の王国」 〜ナミビア エトーシャ国立公園
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