World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART40 2005.08.11 世界一美しい山を見に行こう[出発まで]
>>ペルー ブランカ山群その1



■氷河を抱くブランカ山群

南米大陸を南北に貫く、全長7,240キロメートルのアンデス山脈。私たちの南米旅行はほとんどこのアンデス山脈沿いに南下と北上を繰り返している。

中央アンデスを行く旅も最終目的地となった。目指すは、ブランカ山群Corddillera Blanca(コルディジェーラ・ブランカ)。南北180キロにわたって広がるアンデス山脈の中でも最大規模の山地だ。

スペイン語で「白」を意味するブランカという名の通り、山の頂は1年中雪におおわれている。6,000メートル峰で約40座、5,000メートル峰にいたれば約500座がひしめき合っているせいで、緯度でいうと南緯10〜9度に位置しているのに氷河を見ることができる。氷河だけを数えれば663にもなるという。

最高地点は、ペルーの最高峰でもあるワスカランNevado Huascara'n(ネバド・ワスカラン)の南峰6,768メートル。その他にも4つのピークを持つワンドイNevado Huandoy/central(6,395メートル)、チョピカルキNevado Chopicalqui(6,354メートル)、ワルカンNevado Hualcan(6,122メートル)、双子峰のチャクラフNevado Chacraraju(6,112メートル)、プカヒルカNevados Pucajirca/norte(6,046メートル)、サンタクルスNevado SantaCruz(6,259メートル)そして世界一美しい山に選ばれたこともあるアルパマヨNevado Alpamayo(5,947メートル)などなど……名峰と言われる山々が鎮座している場所である。

一帯は1975年ワスカラン国立公園ParqueNacionalHuascara'n(パルケ・ナシオナル・ワスカラン)に指定されている。この地方独特の動植物相が見られる貴重な場所として、1985年にはユネスコの自然遺産にも登録されたそうだ。

パタゴニアアンデスで氷河のある風景をたっぷり歩き回った私たち。パタゴニアの旅の終わりが氷河としばしのお別れだった。そしてふたたび氷河に出会えるのが、この中央アンデス・ブランカ山群だと考えていた。



【ブランカ山群の地図はこの会社のホームページがわかりやすいです】
Andean Explorer Peru
http://www.andeanexplorer.com/english/chp5.htm
「Quebrada de los Cedros, Santa Cruz, Llanganuco & Ulta」
という地図を見てみてください。
ギャラリーコーナーではこのあとご紹介する写真家ビクトルとそのお兄さん(Victor Escudero Minaya&Luis Escudero Minaya)の撮った素晴らしい写真を見ることができます。ぜひ。その他トレイル情報なども丁寧でわかりやすく書いてあります。



■ワラスに入る

ブランカ山群の玄関口はワラスHuarazという町だ。首都リマLimaから北東に約400キロ。マチュピチュへのトレッキングを終えた私たちは、バスに2晩揺られてワラスに入った。ここが私たちの南米旅行中、最北端の町になるだろう。

ワラスの標高は3,090メートル。3,500メートルを超えるプーノやクスコの町に比べるとずいぶん暖かく感じる。日差しがたくさん入るから、と選んだ宿の部屋からは、ワスカラン、ワンドイ、チョピカルキがばっちり見えた。うんうん、なかなかのんびりできそうな場所だぞ。ボリビアからここまで約1ヶ月。私たちにしては珍しく駆け足で移動してきただけに、ついついだらっと過ごしたくなってしまう。

だが、ここワラスからどうやって氷河を楽しんだらいいのか、まだ何も決めていない。どんな景色が待っているかさえ知らないのだ。そこから始めなければいけない。私たちはさっそく町へ出かけることにした。

メインストリートには大小さまざまな旅行会社がしのぎを削っている。クスコでのマチュピチュトレッキングと同じように、見たところその質もさまざまなようだ。中には山岳ガイド専門の団体(Casa de Guiaという)というのもある。どの会社も呼び込みが激しい。

私たちが知っているのは、サンタクルス谷Quebrada SantaCruz(ケブラーダ・サンタクルス)からヤンガヌコ湖Laguna Llanganuco(ラグーナ・ヤンガヌコ)へ抜けるコースが一般的ということだけだ。そのコースがどんなコースでどうやって歩くのか、何を見ることができるのかもあまりピンときていなかった。

最近の私たちは、いいと言われる場所に行くことになると、その準備として、目的地の絵はがきや写真集をできるだけたくさん見るようにしている。日本を発つ前に本や映像で見た景色をもとにイメージを膨らませるには、さすがに厳しい。かといって「真っさら」な状態で臨んではもったいないことが多すぎると感じているからだ。

と言いつつ、ボリビアからここまでの約1ヶ月は「知っている景色」を確認していただけなのかもしれなかった。ウユニ塩湖、ティティカカ湖、マチュピチュ……「この景色が見たい!」と思い描いて、実際に自分の目で見ることができたのだからそれは素晴らしいことなのだが、あまりに象徴的な風景のせいだろうか。頭にこびりついた(例えば)「マチュピチュ像」の確認作業に近かったかもしれないな、と思っている。

だが、ブランカ山群は違う。どんな景色があるかも知らないのに、ただ氷河があるというだけで憧れる私たちもヘンだが、何だかワクワクしている。5,000メートルの山々に踊る氷河はいったいどんな景色なのだろう。私たちはどうやって楽しむことができるのだろう。まったく未知数なだけに、単純にワクワクしていたのだ。



■私たちオリジナルのコースで

町の旅行会社で紹介しているざまざまなツアーの写真、土産店に並べられた絵はがきや写真集をひと通り眺めると、あることに気がついた。世界一美しい山(私たちはどうもこういうのに弱い)と言われるアルパマヨには、2つの顔があるようなのだ。ひとつは、台形に近くその斜面はまるで深い溝がふもとに向かって幾筋もびっしり走っているように見えるもの。そしてもうひとつは、きれいなピラミッド型をしたものだった。どちらも美しい写真だったが、この2つの顔はあまりに違いすぎる。

私たちは宿に戻って、同じ建物にある旅行会社のスタッフに尋ねてみた。この会社のオフィスにもブランカ山群にそびえる山の写真がいくつも貼られている。ここのアルパマヨは台形をしていた。

「どうしてアルパマヨは全然違うふたつの顔があるの?よく見るのは台形の方だけどどうして?ピラミッドの姿はどうやったら見られるの?」

彼らは明快に答えてくれた。この台形のアルパマヨは、サンタクルス谷からヤンガヌコ湖へ抜ける途中で見ることができるものであること。このコースがとても人気でツアーも毎日出ていること。ピラミッドの形をしたアルパマヨは反対側からしか見ることができないこと……。

私たちが欲しい情報はそこまでだった。彼らも商売だ。ツアーを催行しているサンタクルス谷からヤンガヌコ湖のコースを勧めたいに決まっている。だが、私たちは正直なところ、その台形のアルパマヨを見て「これが世界一か?」と思ってしまっていたのだ。ピラミッド型のアルパマヨ。これがまさしく「世界一美しい山」の名にふさわしい形なんじゃないか、そう思っていた。

実際どういう選考基準で「世界一美しい山」に選ばれたかはわからなかった(それは1966年のコンテストだったという)。だが、私たちの気持ちはすっかり「ピラミッド型のアルパマヨを自分の目で見たい!」という方向に向かっている。何とか実現できないだろうか……私たちは別の角度から「ピラミッド型のアルパマヨ」にアプローチしてみることにしたのだった。



■ビクトルとの出会い

「カメラマンやったら教えてくれるかもしれへんなー」
写真を見るために訪れていたギャラリーを再度訪ねてみようか、と思い立ったのは淳ちゃんだった。そのギャラリーは、私たちの宿から50メートルの場所にある。

彼の名はビクトル。ブランカ山群とウァイアシュ山脈Cordillera Huayhuash(コルディジェーラ・ウァイアシュ)を精力的に撮り続ける、地元在住のカメラマンだ。ギャラリーは彼のお兄さんと運営している。

ラッキーなことに、シーズン中にもかかわらずビクトルはちょうどギャラリーにいた。「ピラミッド型のアルパマヨを見たいんだけど、何か知っている?」私たちは彼の撮った写真を指さしながら聞いてみた。どこから撮影したかなんて、カメラマンからしたら企業秘密にあたるかもしれない(私たちにそこまでの写真が撮れるはずもないのだが)。だがビクトルは快くピラミッド型のアルパマヨに会える場所を教えてくれた。

それはやはりサンタクルス谷のちょうど裏側にあたる場所だった。そのポイントまで片道3日。1週間あれば十分楽しめると言うことだった。ツアーもガイドもあまり好きではないんだけど、という私たちにビクトルは「まったく問題ないよ。2日目だけちょっとしんどいだけだからね」と自信満々で答えてくれる。その目はキラキラ輝いている。自分の大好きな場所をぜひ見てもらいたい、そんな彼の気持ちがストレートに伝わってきた。ビクトルの発したキラキラを浴びた私たちも、すっかり「ピラミッド型のアルパマヨ」のとりこになっている。

「細かい地図があったらもっと詳しく話ができるよ。またいつでもおいで」ビクトルはそう言って送り出してくれた。世界一美しいアルパマヨは夢ではなくなってきている。

翌日、トレイル周辺の詳細地図を買って、淳ちゃんはふたたびビクトルを訪ねていった。



■ホンマに私、歩けるんやろか?

夕方、ビクトルのキラキラを身にまとった淳ちゃんが帰ってきた。いやな予感がする。これまでにも何度かあったが、このキラキラは、淳ちゃんにもっとおもしろそうなことが訪れたことを物語っている。それはそれで最高なのだが、その「もっとおもしろそうなこと」が、私にとってもそうかと言うと、違う場合もあるのだ。だいたいが、最初よりハードなプランになっていることが多い。

「ちーちゃーん! 大変や! おれたちのトレッキングはついに11日間になったでー! ハァハァ」

私たちの部屋は5階というか屋上にあるので、さすがに息が切れている。でも興奮しているのも間違いない。そして人ごとのようなこのセリフ。こういう話し方をする時も危ない。いやな予感は大当たりだった。

そしてもう一度淳ちゃんの言った言葉を反すうする。11日間? 11日って言ったよな。え? ということはパイネより長くなるわけか……えー!大丈夫? 歩ける? いや無理やわ。無理無理……。ここまで思考が展開して初めて口を開く。「11日? そんなん長すぎるわー」

またや、という表情を瞬時に見せる淳ちゃん。自分が盛り上がってる時に決まって消極的な意見を吐くんやから。そう顔が言っている。しまった。慌てて言い直す。「とりあえずコース教えて。どんなルート歩くの?」

一瞬崩れかけた機嫌を持ち直し、淳ちゃんは得意げにルートの説明を始めた。

ピラミッド型のアルパマヨを見るためにはやはり片道3日かかること。そのまま往復することもできるが、せっかくならサーキットで一周した方が、色んな景色を見ることができてお得なこと。サーキットにするなら11日間、途中近くの町に抜けるルートを取れば8日間で歩けること。せっかくだから人気のサンタクルス谷もルートに入れてサーキットを組んだ方がいいこと。11日間でも自分たちの力で歩けること……必要なことはすべて聞いてきてくれていた。文句の付けようがない。

もう一度慎重に考えてみる。日程は11日間。パイネで歩いた10日間より1日多い。食料は予備を含めて13日分は必要になるだろう。私たちはガイドもアリエロ(ロバに荷物を積んで一緒に歩いてくれる人)も頼みたくない。自分で背負って歩けるだろうか。

トレッキングのたびに「これがもう限界だ!」などと弱音を吐きながら、どうにかこうにか歩いてきている。今回もそうやってクリアできるのかもしれない。

だがひとつどうしてもぬぐえない心配があった。高度障害だ。

マチュピチュへのトレッキングでは高山病とまではいかないものの、高地ならではの体調不良でかなりしんどい思いをした。あの時はお医者さまがいてくれて何とか助かった。ツアーだったから馬もあった。だが、今回は私たちだけだ。それにビクトルが「サンタクルス谷と違ってほとんど人に会わないから最高だよ」とオススメしてくれたように(もちろん私だって人がいない場所の方が好きに決まっている)、トレイル上で助けてくれる人もいないだろう。いったんサーキットに入ってしまえば、後戻りするのにとても時間のかかる場所もある。

重い荷物で歩けるかなあ、という心配は自分で越えるものだ。だが、高度障害だけは自分の力でどうすることもできない。それでもチャレンジするべきか。

うーん。わからない。決められない。確かにピラミッド型のアルパマヨは見たい。だったらその往復だけにして欲張らない方がいいかも知れない。だが、11日間歩ききることができたらきっと自分でも満足できるだろう。

いいルートを教えてもらってウハウハの淳ちゃんを横目に、私はすっかり無口になってしまった。自分の中で、ホンマに大丈夫か? 無理な計画はしていないか? もしもの時はどうする? を、繰り返し繰り返し問い続けたのだ。そのうち淳ちゃんは、私の決心がつくまで黙って様子を見ていよう、と思ったようだった。MP3プレイヤーのイヤホンを耳に入れ鼻歌を歌いはじめた。



■よし、行くぞ!

翌日の夕方になってようやく私の気持ちが決まった。こんなに時間をかけたのは初めてのことだった。

高度障害については、前回のサルカンタイトレッキングで学んだことをできるだけ活かそう。そして、準備ができることはできるだけしていこう。そう思えた。そう判断した自分を無謀だとも思わなかった。

続行を判断するポイントは全部で3ヶ所。2日目コース中最高所になるキャンプ場、4日目のアルパマヨを見たあと、7日目の近くの町への分岐点にあたるキャンプ場。ここまでひとつひとつクリアして、初めて11日間のトレッキングが可能になる。3つの各ポイントで何か問題があれば引き返す、もしくは町へのルートを取ることを淳ちゃんと話しあった。7日目まで歩くことができれば、あと4日は何とか歩けるだろう。それに最後の3日間は人気のサンタクルス谷のコースとかぶるので人も多いはずだ。馬もロバもいるだろう。

前回のサルカンタイトレッキングでの最高所は、峠の4,650メートルだった。高度障害は3,900メートル付近から起きているから何ともわからないが、問題が出るとしたらおそらく2日目の夜に何らかの変化があるだろう、と思った。私だけではない。サルカンタイでは何ともなかった淳ちゃんだが、次も何もないとは限らない。どちらかが高度障害を起こせば、ひとりは峠を2往復して荷物を下ろさないといけないだろうなあ……そんなことまでボンヤリと考えていた。

行くか戻るかジャッジするポイントがはっきりすると、何だか落ち着いてきた。荷物は13日分だが、気持ちは目の前1日1日をクリアしていかなくてはいけない。本当に歩ききることができるのだろうか。まったく自信も実感もなかったが、翌日、私たちは13日分の食料を揃えるため町を歩いた。夜は胃の調子を良くする薬草ドリンクを毎晩飲んだ。

出発は6月11日である。






 
ワラス ブランカ山群
ワラスの町からのぞむブランカ山群の名峰。左からワンドイ、ワスカラン、チョピカルキです。

 
パストゥルリ山 氷河ツアー
今回は出発までのあれこれをお伝えするので、ここからはトレッキングとは別の写真をご紹介します。これはトレッキングのあと出かけたパストゥルリ山という山への氷河ツアーに参加した時のもの。ワラスから行く氷河ツアーとしてはかなりポピュラーなものですが、氷河と聞いていてもたってもいられなかった私たちはついつい参加してしまいました。これは途中の温泉ポイントにて

 
Puya de Laimondi 植物
この一帯に生えるおもしろい植物Puya de Laimondi。全長12メートル以上にもなります。約28年の寿命の中でたった1度だけ花を咲かせるそう。その花は18,000個にもなり約6,000個もの実をつけるそうです。

 
パストゥルリ 氷河
パストゥルリの氷河の上にて。ここはガチガチの氷という感じでアイゼンなしで登れます。めちゃくちゃ歩きにくいですが。

 
パストゥルリゥ 氷河 青のトンネル
パストゥルリゥの氷河の中。アラスカ・ジュノーの青のトンネルのような場所がペルーにもあるんです。私たちはこんな感じの絵はがきを見て「うわっ!パストゥルリ行こ!」となったのでした。一緒に写っているのはアルゼンチンで会って以来何度も一緒になっているかずやん。

 
トレッキング 花
ここからはトレッキング中に出会った花たちをご紹介します。これらの花はだいだい標高4,000メートル近い場所で会ったものばかり。なにしろ岩かげなどでひっそりと咲いているものが多かったのでイマイチいい写真ではないですがご勘弁くださいね。あ、あ今回ここでは図鑑類もまったく手に入らなかったので名前もわからなかったんです。ごめんなさい。

 
トレッキング 花
アルパマヨ近くで見かけました。

 
トレッキング 花
この花はトレイル中本当によく見かけました。可憐な姿に何度心癒されたことか。

 
トレッキング 花
写真ではうまく表現できていませんが、トレイル中灯がともったように見えた花です

 
トレッキング 花
これもよく道ばたを彩ってくれた花。陶器のような質感が好きでした。

 
トレッキング 花
一番よく見たのがタンポポ。それも茎がなく地面に直接くっついているかのようです。トレイル脇だけでなくトレイルのど真ん中にもよく咲いていたので踏んづけてしまうこともありました。

 
トレッキング 花
こちらも可憐な花。よく見られたものです。日本の高山植物にもありそうだなあ。

 
 
トレッキング 花
キツネのような植物。これが花なのかどうかもわかりませんでした。

 
トレッキング 花
サンタクルス谷で見かけた花。変な形です。

 
トレッキング 花
これも比較的標高の低い場所でよく見られた花?サルカンタイトレッキングでも見たような気がします。

 
トレッキング ワラス
最後にご紹介するのがビクトル。トレッキングからワラスに戻って「元気に帰ってきたよ!」とお礼を言いに行った時のものです。彼のギャラリーにて。ビクトルには本当に感謝。




▼PART41 2005.08.12 ほほぉこれがアルパマヨ[前半] 〜ペルー ブランカ山群その2
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