World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART31 2005.04.07 チリ政府もイチオシ!?のモスコ氷河
>>チリ ビジャ・オヒギンス



ついにチリ側の村、ビジャ・オヒギンスに入った。馬たちがストを起こしたり、オヒギンス湖を渡る船が大揺れだったり、なかなか大変な行程だったが、予定通り3月8日火曜日の船でビジャ・オヒギンスに入ることができたのだ。ここまで来れば、わずかな本数ながらアウストラル街道の北端チャイテンまでバスが繋いでくれる。3月いっぱいかけて何とかアウストラル街道を抜け、アルゼンチン側セントラルパタゴニアの町、エスキエルまでたどり着きたいものだ。

そう、ビジャ・オヒギンスはチリ南部を走るアウストラル街道終点の村だ。ここから先はチリ政府が「南北を1本の道路で繋ぐ!」とスローガンに挙げているにもかかわらず(どうやら前大統領時代のことらしい)、険しい地形のために成し遂げられていない。ここから南、プンタ・アレーナスまでの間は、陸の孤島になってしまっているのだ。と言っても、この間はちょうどチリ側南パタゴニア氷床。ベルナルド・オヒギンス国立公園Parque Nacional Bernardo O'Higgins(パルケ・ナシオナル・ベルナルド・オヒギンス)に指定されているだけで町も村もなく、道路を造る必要性は実のところまったく無い。チリ北部からプンタ・アレーナス以南に陸路で行こうとすると、必然的にアルゼンチン側に入らなくてはいけなくなるのがチリ政府としてはおもしろくないのだろうが、海上交通で何とかならないのだろうか。造らなくていい道路を造りたがるのは、日本と同じだ。

そんなビジャ・オヒギンスは、つまりチリ政府の道路建設&地域開発プロジェクトの最先端にいることになる。まずは、南パタゴニア氷床ぶち抜きプランよりも、この村から船を使わずにアルゼンチン側に抜けるための道路建設を優先的に進めているようだ。いま現在ビジャ・オヒギンスから南へ行くには、このどでかいオヒギンス湖(約1,000平方キロもある。が、パタゴニアでは5番目に大きい湖にすぎない)を横切る船が、一番早くて唯一の交通手段なのだ。

へき地というのは政府が余分な力を入れてくれるものである。ビジャ・オヒギンスは人口500人。だが、国を挙げて観光客の誘致に力を入れているようで、リゾート地かと見まがうような立派なホームページを持っている。見どころは、オヒギンス湖に南パタゴニア氷床から直接流れ込んでいるオヒギンス氷河Glaciar O'Higgins(グラシアール・オヒギンス)とチコ氷河Glaciar Chico(グラシアール・チコ)へのクルーズ。アルゼンチン側のペリト・モレノ氷河に対抗するような規模のデカイ氷河のようだ。

そしてもうひとつ政府がイチオシしているのが、モスコ氷河Glaciar Mosco(グラシアール・モスコ)だ。村に着いた翌日、私たちは村役場でチリ政府が作成したたいそう立派な(スペイン語&英語併記、全カラー30ページ!約10キロの行程を35セクションにも分けていちいち写真で解説している)パンフレットを手に入れている。どうやらチリ内には「国中にトレイルを巡らそう!」という趣旨のセンデロ・デ・チレSendero de Chileというプロジェクト(おそらくこれは森林局[CONAF]寄り)と、ルタス・パトリモニアレスRutas Patrimonialesという名の観光局推進「チリ内の遺産を歩こう!」プロジェクトが平行しているようだ。この立派なパンフは、観光局推進の方で、全8本あるなかのシリーズ3にあたる。もちろん役場のセニョールもベタ推しである。「時間があるならオレの別荘にも来ないか!」自分の営業も忘れていない。

ここまでビジャ・オヒギンスのことを紹介してきて、「どうもイメージが違う」とお思いだろうか。チリ・アウストラル街道の終点の村、氷河に囲まれた小さくて静かな村、希少種である小型シカ・ウエムルの生息地……私たちもビジャ・オヒギンスにやってくるまでは、そんなのどかなイメージを持っていた。ところが村に入って少し歩くと、何だか言いようもない違和感を感じるのである。これは何なのだろう?小さくて静かな村には違いないのだが……。

その答えのキーワードは「開発」だったのではないかと思っている。ビジャ・オヒギンスは1967年に開拓されたばかりの村だ。そしてつい数年前まで、おそらく陸の孤島として、牧場を営みながら自給自足の生活を続けていたはずだ。ところがやってきたチリ政府の開発の波。寒々としつつも均整のとれていた原野の風景の中に割り込んできた、大きな大きな鉄の吊り橋。衛星で見ることのできるテレビ。そして物珍しそうにやってくる旅行者たち(私たちもそうなのだが)。村のあちこちに隠れたそんなとまどいが、私たちに違和感を持たさせてしまったのではないかと思うのだ。たぶん心の病気にかかっているだろう、と見受けられる人もいた。暗く長い冬が続くアラスカでも、心のバランスを崩す人が多いと聞くので一概に言うことはできないだろうが、何だか大きい力で村中が引っかき回されてしまって、村人たちが悲鳴を上げているように私たちには見えたのだ。

そんなビジャ・オヒギンスだが、私たちの宿のセニョーラはめちゃくちゃ元気だ。明るくて働きもので、アルゼンチン訛りに近いスペイン語でよく喋る。私たちが「モスコ氷河へ行って来る」というと、「寒いわよ〜!」なんて脅かしながらも気持ちよく送り出してくれた。

私たちがこの村に来ることを決めたのは、ロンプラで紹介されていたトレッキングコースによることが大きい。紹介されている2本のコースは、どちらも氷河を見に行く2日間のコースだ。フィッツ・ロイ周辺を歩いて「私たちは氷河に惹かれているんだ」ということを実感したからには、この先、できる限り氷河の景色を探して歩きたいと思っていた私たちだ。ところが、役場でもイチオシされたモスコ氷河(ロンプラでは、根雪Ventisquero[ベンティスケーロ]として紹介されています。どちらが忠実なのかは不明)とは別に、もうひとつロンプラで紹介されていたティグレ氷河Glaciar Tigre(グラシアール・ティグレ)へは、ガイド付きでないと厳しいとCONAFのレンジャーが言うのだ。新しくできているはずのレフヒオも無いという。本当はティグレ氷河の方がメインだった私たちだが、ここは諦めざるをえない。それならモスコ氷河へのんびり3日間かけて出かけよう、ということになったのだ。

モスコ氷河へのトレッキングでは寒さの心配が少し減っている。というのも、トレイル途中、約6.5キロ地点に無料のレフヒオ(山小屋)が用意されているのだ。これまたチリ政府が余分な力を入れてくれたおかげなのだが、ここはありがたく使わせてもらうことにする。どうやら薪ストーブもあるらしい。

テントを持っていく必要がなくなったこと、そして2日間で紹介されている行程を3日かけてのんびり行くということで、私たちはいつもより多めにワインを買って遠足気分である。食料は逆に、今までで一番しょぼいラインナップ。村からすべての小麦粉が無くなってしまったのでセニョーラの焼くパンも買えず、パスタの具も無い。それでも初の無料レフヒオ、のんびりトレッキング、氷河ビュー、と楽しみなことが多くごきげんな私たちだった。

11時、村を見下ろす展望台からスタートする。このトレイルには、観光局が付けた3種類のマークがある。いつもなら一色のペイントだったり、石を積んだケルンが目印だったりするのだが、今回はこの3種類それぞれの持つ意味まで覚えてから歩かないといけない。このシステムはどうかと思う。

覚えたつもりが、やっぱり記号を間違えてしまい、私たちはトレイルのほぼスタート地点から大きく道を反れ、村の裏にある約1,000メートルの山の頂上まで登ってしまった。「ここまでバカていねいに解説してもらわなくてもええわ!」と、写真解説付きのパンフもよく読んでいなかったせいだろうか。いや、チリ政府が付けた不便なマーキングのせいである。

気を取り直し、正しいトレイルを歩き始める。時間は14時。レフヒオまでは6.5キロ。3時間もあれば着く、というのでまだまだ余裕がある。しばらく歩くと10個ほどテントが並んだキャンプ地が現れた。ここはショーエン国立保護区Reserva Nacional Shoen(レセルバ・ナシオナル・ショーエン:ショーエンとは原住民Tehuelche族の言葉でウエムルを指す)内。指定された場所以外でのキャンプは禁止されているはずである。欧米人と思われる若い女性が出入りしているようだ。

彼女たちはイギリスの環境団体に所属しているという(団体名を忘れてしまいました。ゴメンナサイ!)。いわゆる発展途上の国の環境保護活動を援助しているらしいのだ。チリの他にもコスタリカやジンバブエなど、活動範囲は世界各地に渡っている。ここでは、トレイルの整備に関する知識を地元の人々に(あえてこう表現するが)教えている、とロンドンから来た若い女の子は胸を張り誇らしげに私たちの質問に答えてくれた。派遣期間は3ヶ月。ここから北にあるコイアイケCoyhaiqueに拠点があるという。

なるほど。若い小娘がええおっちゃんに「教える」というのもどうかと思うが、意義のある活動かも知れない。国立公園行政である程度ノウハウを持つ先進国の人間が、色んな国の人たちとその技術を共有しよう、という意図は素晴らしいと思う。

ところが、しばらく歩き続けると、彼女たちの仕事に疑問を感じずにはいられないポイントをいくつか通過することになる。展望台とされた丘にできた「ここから下は危険ですよ」とでも言うかのような手すり状の柵、置かなくていい場所にまで設置された渡り廊下状の木板……。「やりすぎ」なのである。沢をトレイルが横切っていたり、地盤が不安定な場所は、これ以上人が歩くことでインパクトを与えすぎないよう整備することも必要だろう。だが、やりすぎてはいけない。手付かずの自然を期待してやってくる人を大きく裏切ることになる。そのトレイルで上がるはずの経験値をも損ないかねない。環境整備にも色々な考え方があるだろう。ただ、私たちにとっては、たいそうご丁寧なパンフ同様、「やりすぎやろ!」という印象がぬぐえないのだった。

そうこうしているうちに、彼女たちの手が及ばないエリアに入った。一転してワイルドである。この落差もどうかと思うが、さっきよりはマシだ。このトレイルはモスコ氷河から流れるモスコ川Ri'o Mosco(リオ・モスコ)にできた谷の右岸をさかのぼっていくものだ。右岸の斜面からモスコ川に注ぎ込むいくつもの沢を越えていかなくてはいけない。小刻みに登って下りながらレフヒオを目指す。普段なら大したことないコースなのだが、一度山登りをしてしまっている私にはけっこうきついコースになってしまった。17時30分、レフヒオに着く。

レフヒオは貸し切りだった。キャパは8人と言うが、4ー5人が快適に過ごせる限界だろう。小屋の中央に置かれたドラム缶製薪ストーブに、淳ちゃんが火を入れてくれる。

明日はいよいよモスコ氷河だ。片道4キロ、約2時間のコースである。今日の反省をふまえて、パンフレットをしっかり読んでみる。セクション28、川越えがある。暗すぎてブルーな気分になる写真には、渡渉ルートが点線で示してある。今回はサンダルを持ってきているので、だいぶラクなはずだ。セクション30、かなり大きい川越えがまたもやある。ここは出発前、CONAFのレンジャーが「オレが昨日行った時には、太ももまで水位があった」と言っていた場所だ。なるほど、写真でも水位はひざ上まである。明日はどれくらいの水位なのだろう。場合によっては、渡れないかもしれない。セクション31、岩(おそらく頁岩)の上にできた細い道を通らなくてはいけない。真下は川。とにかく気を付けろ、と太字で書いてある。セクション32……うわー!もう勘弁してくれー!という気分になる。ビビリな私には、もうここまでで限界である。本当に明日、私は行けるのだろうか……。

いつもの私なら、ここで生まれた弱気虫に支配されてしまい、たぶん明日トレッキングに出ても、いつも以上に消極的になってしまうはずだ。ところが、今回はちょっと事情が違う。

ここで、ビジャ・オヒギンスに入る前、デシエルト湖北岸のアルゼンチン側国境事務所から出かけたトレッキングの話になる。

アルゼンチン側国境事務所から約12キロのところに、ディアブロ湖LagunaDiablo(ラグーナ・ディアブロ:悪魔の湖という意味)という場所がある。そこからさらに1時間ほど歩くと、オヒギンス湖に流れ込むチコ氷河を眺めるビューポイントがあるというのだ。このトレイルの存在を知ってはいたものの、氷河ビューと聞いて、私たちはますます張り切ってしまった。係官は「オレ昨日行ってきたけど、めっちゃよかった」と言う。だが、週2便しかない船に乗らなくてはいけないので、私たちには1日しか時間がない。往復24キロ。歩けない距離ではない。係官も「片道4時間で行ける」と言う。日も短くなってきたが、とにかく行ってみよう、ということになった。

川越えポイントは、1ヶ所だけあると聞いていた。ところが最初の川越えをしたあとトレイルが見つからない。1時間ほど探してみたが、どう考えても足跡が途切れている場所で、先ほど渡った川をもう一度渡り直さないといけないようなのだ。空からは雪。晴れ間がたまに訪れるが、太もも近くまである深い川を渡る勇気になるようなものではない。今日は往復のコース。2度渡った川は、帰りも2度渡らないと帰れない……。だが、ここまでにも1度、トレイルを見失い1時間ほどタイムロスをしている。これ以上ここで躊躇しているわけにもいかなかった。ほとんど泣きながら川を渡る私。しばらく歩くと1時間ほどで着くはずの滝が見えてきた。すでに3時間以上かかっている。よく見ると、ここにも橋がない。またもや靴を脱いで川を渡らないといけないのだ。いったいこのあと、こんなポイントがいくつあるのだろう……。「氷河をできるだけ見て歩きたい!」と言っていたわりには、気持ちがどんどん萎えていく。寒さに勝てる自信もなかった。淳ちゃんの気持ちが焦っているのも、手に取るようにわかる。

それでも歩き続けた。そしてあと1時間も歩けば着くだろう、というポイントに差しかかった。いくつも小さな小川が続いていた。靴を脱ぐほどではなかったが、慎重に足場を確保して渡らないといけない場所だった。「靴は絶対濡らすな!」やっさんの教えである。これまで、どんな泥地を歩いてきても忠実に守ってきた。いくつ目かの小川を渡った、と思った時、足が滑った。初めての感覚だった。じわーーー。靴の中に水が入ってくる。「こりゃ、もうダメだ。次はケガをしてしまう」。自分の集中力に自信が無くなってしまったのだ。あれほど気を付けていたのに、失敗した。その事実に、これ以上先へ進む自信をまったく失ってしまったのだ。時間は14時30分。かれこれ5時間以上歩いている。2時間のタイムロスを差し引いても、戻らなくてはいけないデッドは15時だった。「引き返そう」淳ちゃんに言う。淳ちゃんは無言で回れ右をした。

時間が足りなかったこと、情報をしっかり聞けていなかったこと、反省することは山ほどある。その中でも、私自身のモチベーションは最後までキープできていたのか?という疑問が、どうしてもぬぐい去れない。本当に最後まで行きたくて、本当に限界まで頑張ったのか?そう聞かれると、ちょっと自信が無いのだ。

だからこそ、今回のモスコ氷河へのトレッキングでは、本当に頑張った!と胸を張って言えるように、イヤな川越えも、注意して渡らないと行けないこわいポイントもクリアしたいと思うのだ。もちろん、自分の限界を超えるような無理をしてはいけない。それは前回のトレッキングで、いつもの自分のペース以上に速く歩いて失敗したことからも身に染みてわかっている。無理は禁物なのだ。だが、石を渡るのがコワイという気持ちや水が冷たくてイヤだと言う気持ちは、克服しなくてはいけないものだと思っていた。明日のモスコ氷河へのトレッキング。自分の気持ちに負けることなく進んで、それでも無理だったら引き返そう。今度こそ本当の自分の限界を見極めることができそうだった。

雨の多いエリアのわりには、天気の良い朝だった。往復で4時間なので、朝ごはんをゆっくり食べ、9時30分、レフヒオを出る。昨日会ったイギリス人の女の子も、一番キツそうなセクション30を「最悪ではない」と言っていた。何とかなるだろう。きっとクリアできるはずだ。

しばらくパンフレットの案内通りにトレイルを進む。セクション28の手前だったが、どう考えても川を渡るポイント、という場所まで来た。今日はリバークロッシング用にサンダル持参だ。足元がしっかりしているせいで、思った以上に速く渡ることができた。よし、あと1ヶ所もきっと渡りきることができるだろう。

パンフレットに30分で行ける、と書いてある場所だったが、2時間が過ぎている。おかしい。ふと見ると、見覚えのある光景が目の前にある。セクション31の岩場ポイントなのだ。あれ?太ももまで水があるセクション30は????セクション30のために、ピンピンに張りつめていた私のモチベーションとやらもグニャグニャである。でもどう考えてもここはセクション31だ。こりゃラッキーだ!と、私はその岩場ポイントも難なくクリアしてしまった。ここまで来たらあとはひたすら先へ進むだけである。この50年の間に後退していった氷河の足あとを、いま現在の先端に向かって歩くだけなのだ。

ところがそう簡単に氷河を見せてくれるわけもなかった。氷河が後退したあと、というのは岩場が多い。しかも、狭い谷の間を後退した氷河だ。険しい岩場が続いている。しかも岩の上にはびっしり張り付いた苔。滑らないよう進むためには、相当な集中力が必要になる。「この岩山を越えたら氷河が見えるはず」何度そう信じて岩を越えただろう。あまりに何度も岩の小山が繰り返し続くので、途中でイライラしてしまったほどだ。またもや時間の限界も迫ってきている。2時間の行程だが、すでに4時間以上経過していた。15時には引き返さないと暗くなってしまう。

14時30分。ついにモスコ氷河の先端にたどり着いた。先端というよりは、側面に出たという印象が強い。上から眺めたり、先端を見上げたり……と今までいろんな氷河を見てきた。だが、氷河の「厚さ」がわかる場所に立ったのは初めてだ。もちろん氷河に触ることもできる。トレイルヘッド周辺のあの手厚い整備ぶりとはうらはらに、このモスコ氷河は、ほったらかしの氷河だった。トレイルだってもちろんほったらかしだ。セクション31を越えてからの岩場はたまにケルンが見つかるだけ。観光局お得意の難しいマーキングも、いつの間にやら消えていた。

いやあ、たどり着いたなあ……。大急ぎでいろんなビューポイントを歩き回る淳ちゃんを横目に、感慨にふけっている時間もあまりないのだが、とりあえずクリアできたことに満足している私だ。昨晩ビビっていたセクション30も31も越えることができた(30は結局無かったのだが)。そしてそのあと延々続いた、恐くて忍耐力のいる岩場も越えてくることができた。今回はこれで合格としよう。

だがもう時間だ。レフヒオに帰らないと日が沈んでしまう。パタゴニアの日も本当に短くなった。本当なら、もう少し先の小山の上からも眺めてみたかった。湖の近くにも降りてみたかった。たどり着けたことで満足している私たちだが、不完全燃焼であることには間違いない。でもこれ以上欲張るのはやめよう。無事着けたことだけでも、よかったと思おう。前回のトレッキングとは違って、たくさん話をしながらレフヒオに戻った私たちだった。

私たちはまだ氷河を見ることができるのだろうか……。






▼トレッキング覚え書き


・A Laguna Diablo
3/07 晴→雪→曇
Punta Norte de Lago del Desierto⇔Laguna Diablo 約18キロ
おそらく3キロほど手前で折り返し


・A Glaciar Mosco
3/10 晴
Villa O'Higgins→Refugio Puesto Rivera 約6.5キロ
(+間違えて登った山おそらく6キロほど) 無料

3/11 曇→晴
Refugio Puesto Rivera⇔Glaciar Mosco 約8キロ 無料

3/12 曇
Refugio Puesto Rivera→Villa O'Higgins 約6.5キロ





▼ビジャ・オヒギンスのホームページ
http://www.villaohiggins.com/






 
チリ ビジャ・オヒギンス
ミラドールから見たビジャ・オヒギンス全景です。村のすぐ横には飛行場。バスは週1便しかありませんが、飛行機は週2便飛んでいます。奥の山には氷河。スゴイ場所です。

 
チリ 頂上 トレッキング オヒギンス湖
間違えて登ってしまった山の頂上にて。オヒギンス湖がよく見えます。風で引きちぎられたチリの国旗と一緒に。

 
チリ トレッキング マーキング
これが問題のマーキング。白とオレンジの組み合わせが上下逆になると、意味が変わったり、もう1本色が加わったりします。ややこしい!!

 
チリ トレッキング
若い女の子達が指導して作った渡り廊下。こんなものがトレイルヘッド付近にだけいくつもあります。

 
チリ トレッキング
対してふつうの橋。こんな橋の方が恐いけれど何倍もいいってもんです。

 
チリ トレッキング レフヒオ
森の中にぽつんと立つレフヒオ。必要か必要じゃないかと言われると、無くてもいいか、とも思いますが、シーズンオフに訪れた私たちにとってはやっぱりありがたかったかな。貸し切りだったので居心地もよかったです。

 
チリ トレッキング レフヒオ
中はこんな感じ。今シュラフが敷いてある場所、2日目の晩には雨漏りでえらい目にあいました。

 
チリ ディアブロ湖 トレッキング
ディアブロ湖へのトレッキング風景。最初の川渡りです。いやもう冷たいのなんのって。

 
チリ ディアブロ湖 トレッキング
先ほど渡った川ですがもう一度別の場所で渡り直しです。どうやら険しい崖を避けるためだったよう。さっきよりも深くて泣きそうでした。

 
チリ ディアブロ湖 トレッキング
靴は脱がずにすみましたが、こんなポイントもあります。一歩間違えば靴はびしょ濡れ。いやな緊張感です。

 
チリ ディアブロ湖 トレッキング
ディアブロ湖を断念して戻ってきたデシエルト湖北岸。フィッツ・ロイが私たちを慰めるように現れてくれました。セルフタイマーで青春風に撮影。

 
チリ トレッキング モスコ氷河
そしてモスコ氷河への道。セクション28手前の川。今日はサンダルがあるので速い速い。

チリ トレッキング モスコ氷河
セクション31。写真の方が恐く見えます。私もパンフの写真を見て相当びびりました。私を安心させようと余裕の表情を見せる淳ちゃん。

チリ トレッキング モスコ氷河
そして淳ちゃんのあと慎重に進む私。写真の方がやっぱり恐く見えます。

チリ トレッキング モスコ氷河
トレイルはこんな感じの岩場が続きます。苔があるから、ものすごく気を使う!

チリ トレッキング モスコ氷河
やっとたどり着いた滝。もうヘロヘロです。この上には氷河があるのでは……と思いますが、まだまだ先は長いんです。

チリ トレッキング モスコ氷河
そして約1時間後、ついにモスコ氷河に着いた私たち。記念撮影です。ずいぶん奥から流れ落ちてきている様がよく見えます。

チリ トレッキング モスコ氷河
さらに近くの小山に登って上からモスコ氷河を眺めた淳ちゃん。私は下にいたので、セルフタイマーで撮影してきてくれました。ゴキゲンだなあ。

チリ トレッキング モスコ氷河
そしてモスコ氷河の側面に降り立った私。ぶ厚いですねー。

チリ トレッキング モスコ氷河
もちろん氷河に触れることができます。岩を削ったあとがまざまざと残る氷河の側面。

チリ トレッキング モスコ氷河
あっという間でしたが、タイムアウトなので戻らなくてはいけません。とにかく氷河までは、背後に写っているような岩をいくつもいくつも越えないといけません。忍耐です。

チリ トレッキング モスコ氷河
天気が良かったせいで、行きは靴のまま渡れた場所がこんなことになってしまいました。川幅が狭いので、あっという間に状況が変わります。

チリ トレッキング モスコ氷河
ウエムルには会えませんでしたが、(たぶん)足跡を見つけました。全長70センチほどの小さなシカ。世界中で500頭しか残っていないそうです。

チリ トレッキング モスコ氷河
3日目、村に戻る途中です。この辺りは最小限にしか手を加えていないので、良いトレイルです。




▼PART32 2005.04.08 予想だにしなかったゴッツイ氷河 〜 チリ セロ・カスティージョ
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