World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART29 2005.03.18 氷に彩られた大地・パタゴニア
>>アルゼンチン ロス・グラシアレス国立公園



さて、次はフィッツ・ロイ Monte Fitz Roy(モンテ・フィッツ・ロイ)である。
パタゴニアと言えばフィッツ・ロイなのである。
詳しい地図はこちら[チャルテン村のホームページを参考にしてください]
http://www.elchalten.com/
[maps→Most popular Trekking RoutやSatellite Imageがわかりやすいです]

アウトドアブランドpatagoniaのモチーフになっているのもフィッツ・ロイだ。いつだったか、patagoniaのショップのスタッフの人に「フィッツ・ロイまでクライミングに行ったことあるんですよ」なんて言われた時は、すごい冒険家が働いているもんだ、と思ったものだ。

とにかくパタゴニアに行ったら、フィッツ・ロイとパイネ。この2つは必ず行くものなのだと思っていた。正直なところ、南米に入る前あたりまでフィッツ・ロイとパイネの違いもよくわかっていなかった私だったのだが……。

よく知りもしないフィッツ・ロイだがとにかく見てみたかった。格好良い山なんだという確信があった。だが、このフィッツ・ロイ、現地ではエル・チャルテン El Chalte'n(煙を吐く山)と先住民から呼ばれていたように、雲に覆われていることが多いのだ。延々と続くパンパ、その先に突如現れる岩塔。パタゴニア氷床から吹き付ける激しい気流がこの峰々にぶつかって、まるで煙を吐いているように見えるから、らしい。そんなフィッツ・ロイを見に行くことは、パイネ連峰をぐるり歩くこととはまた違った旅になるはずだ。

つまり、フィッツ・ロイが見えなければどうしようもないのだ。

そう目的がはっきりしている分、フィッツ・ロイ周辺のトレッキングをどう楽しんだらいいのか、実は、よくつかめずにいた。

フィッツ・ロイは、アルゼンチン南部に位置するロス・グラシアレス国立公園Parque Nacional Los Glaciares(パルケ・ナシオナル・ロス・グラシアレス)に属している。

ロス・グラシアレス国立公園。グラシアレスはスペイン語で氷河を意味している。直訳すると氷河国立公園。その名の通り、目玉はSONYのCMでも使われたことのあるペリト・モレノ氷河 Glaciar Perito Moreno(グラシアール・ペリト・モレノ)や、公園内最大のウプサラ氷河 Glaciar Upsala(グラシアール・ウプサラ)。これらの氷河は同じアルヘンティーノ湖 Lago Argentino(ラゴ・アルヘンティーノ)沿いにあるカラファテ Calafateという観光都市から、簡単に見学に行くことができる。私たちも、カラファテから1日ツアーを使って1番人気であるペリト・モレノ氷河を見に行ってきた。この氷河、全長35キロ、表面積は195平方キロ(257平方キロ説もあり)もある巨大なもの。先端部の幅は約5キロ、高さは約60メートルあるという。ここは冬の気温が比較的高いので、氷が溶け再び凍る、そのサイクルが比較的速い(ということは、氷河の大崩落もおこりやすい)、見応えのある氷河なのだそうだ。1981年にはユネスコの世界遺産リストにも登録されている。

総面積4,459平方キロ(山梨県とほぼ同じ大きさらしい)のロス・グラシアレス国立公園。それだけでは終わらない。どんなお年寄りでも見ることのできるペリト・モレノ氷河とは対照的にこの国立公園はもうひとつ、クライマー憧れの地という側面を持っている。

フィッツ・ロイがそびえ立つチャルテン村 El Chalte'n(エル・チャルテン)がその中心地と言えるだろう。この村をベースにして、クライマーたちは岩峰群に挑み、トレッカーたちはてくてくと歩く。村全体が国立公園の中にすっぽり入っているにもかかわらず、ペリト・モレノ氷河の展望デッキで取られたような入場料(30ペソ[約1,050円])は、まったく払う必要がない。村の南北には無料のキャンプ場がそれぞれひとつずつ用意されている。まさにフィッツ・ロイとその周辺の山々を愛する人のための村が、国立公園の中に存在している。

チャルテン村はカラファテから約220キロ。シーズン中は4社のバスが1日数便カラファテ→チャルテン間を走っているので、大抵の観光客は日帰りか1泊程度でカラファテに戻っていってしまうという。日本人バックパッカーの多くはカラファテに荷物を預け、2泊3日の日程でフィッツ・ロイともうひとつの尖塔セロ・トーレ CerroTorreを見るコースを歩いて戻っていく。チャルテン村は物価も高いから足早に通り過ぎる、といった感じだ。

2泊3日でフィッツ・ロイもセロ・トーレもバッチリ見えたらそれでいいだろう。おまけに2月は比較的晴れることが多い、と言われている。でも、見られなかったらどうするのだ。残念!と言って帰るのか。私たち、時間だけはたっぷりあるはずなのに、それではもったいない。

ところが良い具合に予定が変わってきた。まず、フィッツ・ロイ周辺のトレッキングを終えたあとの目的地をチリのオヒギンス村 Villa O'Higgins(ビジャ・オヒギンス)というところにしよう、という話になってきた。一般的な北上パターンというのは、アルゼンチンにあるパタゴニア地方北部バリローチェまで一気に上がってしまうルートなのだが、その間は延々続くパンパ。その広大なパンパにロマンを感じる人もいるだろうが、私たちは最初の南下でこの景色はもうお腹いっぱいになってしまっている。もちろん南部パタゴニアを移動しているあいだも、ずっと同じパンパの景色だった。もっと他にルートはないだろうか。そう探している時、私たちの持つガイドブックにちらりと載っていたのがオヒギンス村だったのだ。この村へチャルテン村から抜ける道があるという。チャルテン村からオヒギンス村に直接北上してしまうなら、もうカラファテに戻る必要はない。荷物を預けてもしかたがないので、全荷物を持ってチャルテン村に入る方が賢明だ。そうなれば、チャルテン村での長期滞在も可能になってくる。

もうひとつの予定の変更は、ナンチャンとの再会だ。秋にメヒコからコスタリカまでともに旅をし、年末にコスタリカのサン・ホセで別れて以来、別々に旅をしていた私たち。ナンチャンは私たち夫婦が出発した約1ヶ月後、1月末に南米大陸ブエノス・アイレスに上陸していた。どこかで会えたらいいね、と言いつつ別れたが、こんなに早く再会のタイミングが訪れるとは思ってもみなかった。ナンチャンからのメールは、あと数日でカラファテに入ることができそうだ、ということだった。それなら一緒にトレッキングに行った方が楽しいに決まっている。私たちはナンチャンとの合流をチャルテン村で待つことにした。

カラファテを出たのは2月19日だった。もともと数日の滞在予定だったが、お正月にサンティアゴで一緒だった友人に、ばったり再会することができたのだ。再会が嬉しく、彼の話もたくさん聞きたくて、私たちは予定より少し多めにカラファテに居たのだった。

バスは8時30分発。夕方発や深夜発のバスもあるのだが、運が良ければ道中からフィッツ・ロイを見ることができる、と聞いていた私たちは迷わず朝の便にした。バスはパンパの中をひた走る。もう見慣れた光景だ。

突然、乾燥しきったパンパの向こうに青白い岩峰群が現れた。フィッツ・ロイ、セロ・トーレ、全部きれいに見える。まるで誰かが粘土で作ってぽんとそこに置いたような、それほどカンペキな峰々の姿だった。

えー、こんなに簡単に見れちゃうものなのか……。

フィッツ・ロイを見るまではこの村を出ないぞ、ぐらいの気合いで向かっていた私たちはいきなり拍子抜けである。ありがたみも何もあったものではない。そもそも焦がれて焦がれてここまでやってきたわけではないのだ。ここで、フィッツ・ロイを見てしまったらもう「目的達成?」てな気分になってしまうのもしかたがないのかもしれない。とにかく、グニャグニャに拍子抜けの状態で、私たちはチャルテン村に入ったのだった。

この村に入る人間は全員、いったんバスから降りて国立公園レンジャーからの注意事項を聞かなくてはいけない。私たちも「英語で説明」の部屋で、レンジャーから公園内で気をつけるべきことを学ぶ。もう1.5ヶ月も雨が降っていないらしい。火事には気をつけて、とレンジャーからきつく言われる。今日の晴天はとてもラッキーだ、とも教えてもらうが、1.5ヶ月雨が降っていないという事実の前に、私たちはどうもありがたみを感じることができない。

やっぱ意外に簡単に見れるもんちゃうーん?なーんて言いながら、ホステルにチェックインする私たち。これではお天道様もお怒りだろう。

最終的に私たちはチャルテン村に合計16日間もいたことになる。このあと16日間もフィッツ・ロイが見えなかったわけではない。私たちなりではあるが、フィッツ・ロイの楽しみ方がやっとわかったからなのだ。心配していた物価も、騒ぐほどではない。カラファテからアホほどパスタばかり買い込んできた私たちがバカみたいだった。

トレッキングには、細切れで出かけることにした。ナンチャンとの合流を待つためもあったが、フィッツ・ロイはチャルテン村のすぐ裏山なのである。今日は天気がいい!今日は見える!そんな時に村を出たって十分間に合う距離なのだ。この気軽さがいい。

私たちが歩いたのは合計3回になる(淳ちゃんはひとりで歩いたり、ナンチャンと歩いたりしているので、もっと歩いている)。1度目は、チャルテン村から7キロ先のカプリ湖 Laguna Capli(ラグーナ・カプリ)までの日帰りトレッキング。2度目は、チャルテン村からセロ・トーレのミラドール(展望台)のあるアゴスティーニキャンプ場 Campamento Agostini(カンパメント・アゴスティーニ)までの1泊2日のトレッキング。3度目は、ナンチャンと無事合流をし、フィッツ・ロイのミラドールがあるポインセノットキャンプ場 Campamento Poincenot(カンパメント・ポインセノット)を中心とした4泊5日のトレッキングだった。

カプリ湖までのトレッキングは、チャルテン村に着いたその日に出かけたものだ。いくら拍子抜けしたからと言って、今日を最後にフィッツ・ロイが見れなくなってしまっては大変だ、と私たちはいそいそと出かけていったのだ。ここからは湖越しにフィッツ・ロイを眺めることができる。絵はがきにもよく使われる有名なポイントだ。フィッツ・ロイは逆光で光っていたが、バッチリ見ることができた。まだ作りものの粘土細工を見ている気分である。

翌日、まだまだセロ・トーレも村から見えているので、今度はセロ・トーレのミラドールまで行くことにした。1泊2日の気軽なトレッキングである。淳ちゃんの体調が良くなかったことを除けば、目の前にずっとそびえ続けるセロ・トーレを眺めるトレッキングは気持ちのいいものだった。

様子が変わってきたのは、翌日からだ。朝、ミラドールへ行ってみると昨日あったはずの場所にセロ・トーレがない。こつ然と姿を消した印象だ。代わりに虹が架かっている。見えないということはこういうことなのか……ちょっとわかった気がしたものだ。それでも昨日セロ・トーレの姿をバッチリ見ている私には、まだまだ余裕がある。

淳ちゃんの体調も良くなったので、少し遠回りをしてチャルテン村に戻ることにした。フィッツ・ロイのミラドールへのベースになるポインセノットキャンプ場へ抜けるイーハ湖 Laguna Hija(ラグーナ・イーハ)、マドレ湖 Laguna Madre(ラグーナ・マドレ)脇のトレイルを使ったのだ。ポインセノットキャンプ場への分岐にあたる三叉路をチャルテン村方面へ戻れば、カプリ湖へ出ることができる。

天気はどんどん崩れ、雨もひどくなってきた。イーハ湖から吹き付けられる風と水しぶきにちょっとヘコみながらも、なんとか湖脇を抜け、ポインセノットキャンプ場へ向かうトレイルとの合流点に差しかかったその時だった。左手にイヤな予感がする。何かがあるのだ。それもとてつもなく大きな何か。もちろん、そう感じるあたりは雲に覆われ何も見えない。もしかすると何もないのかもしれない。でも、何かおかしい。あの雲に隠された場所には、もしかしてフィッツ・ロイがいるんじゃないか?いよいよ私たちは、そんな確信を抱き始めた。と言っても、確認する術もなく、私たちは強風にあおられながらチャルテン村に帰っていった。

その日からしばらくは、あまり天気の良くない日が続いた。村からももちろん、フィッツ・ロイの頭を見ることはできない。初めてフィッツ・ロイにじらされている気分だ。あの谷にあった景色はいったいどういう光景なのか、気になって気になってしかたがない。それでも天候が回復しない限り、確認しようがない。

突然、昼前から晴れ上がった日があった。体調の悪い私をおいて、淳ちゃんがひとりで「確認」に出かける。

19時前、息を切らして淳ちゃんが戻ってきた。午後にはナンチャンが宿に到着していたので、ナンチャンの顔を見てさらに嬉しそうな表情になる。

あの場所には、フィッツ・ロイが堂々とそびえていたそうだ。脇を固める峰々、氷河も恐ろしい迫力だったらしい。そして、ふたたびセロ・トーレも見に行ってしまったというから驚きだ。セロ・トーレにいたっては約1.5時間待って、やっと姿を現したというから、感激もひとしおなのだろう。淳ちゃんの興奮はなかなか収まらなかった。

そうか。あの場所にはフィッツ・ロイがあるのか。そう聞いただけでも、風景に対する憧れが盛り上がってくる。晴れ上がった日、あの場所に立つ自分を想像する。今度もお天道様は味方してくれるだろうか。胸に描いているあの圧倒感を与えてくれるだろうか。期待値は増すばかりだ。

そうして私たちは26日、フィッツ・ロイを味わい尽くすトレッキングに出かけたのだった。予定は4泊5日。6日分の食料を用意している。まずは、チャルテン村からポインセノットキャンプ場まで1日。翌朝、ミラドールからフィッツ・ロイの朝焼けを見るつもりだ。もし天候が悪かったら。それこそ、フィッツ・ロイを見ることができるまで、ポインセノットキャンプ場で待機する予定だ。どうやらこの時期の天気は4-5日周期で変わっているらしい。そろそろ良い天気のサイクルに入ってくれるだろうと期待している。

フィッツ・ロイを満喫することができたら、公園北側のプライベートエリア、修道士の石 Piedra del Fraile(ピエドラ・デル・フライレ)という場所まで行ってみようと思っている。ここから登ったミラドールからは、別の角度でフィッツ・ロイを楽しめるという。でも、ここはあくまでおまけである。まずは、フィッツ・ロイ。とにかく、満足いく景色を見ることができるまで、ポインセノットキャンプ場から動くつもりはなかった。

天気はまずます。まずはカプリ湖まで、緩やかな坂を上がっていく。

今日のカプリ湖は……、と開けた場所に出てみる。まだわずかに雲をまとったフィッツ・ロイがそこにいた。見覚えのある光景だ。それでも、ちょっとじらされた分、再び出会えた感動が少しある。これは期待できるなあ……。あの、ポインセノットキャンプ場手前のマドレ湖に向かう分岐点、あの場所から、今日ならフィッツ・ロイを見ることができるんじゃないだろうか。胸の底から押さえつつ押さえつつ、期待感が膨らんで仕方がない。

カプリ湖で昼食をとり、私たちは再び歩き始めた。川の音が聞こえる。前回通ったポイントを思い返すが、風が強かったことぐらいしか思い出せない。

そこに、1枚の絵画が現れた。

そう間違うほど、フィッツ・ロイとその峰々がカンペキな状態で連なっていた。魔法の煙のようにフィッツ・ロイにまとわりつく雲、基部を覆う巨大な氷河、そして色づき始めたニレの赤。

素晴らしい!誰もがため息をつきながら、それぞれお気に入りの場所で写真を撮っている。私たちもしばらくその場所を動くことができない。

期待していた場所とは違うところで、思いがけない絶景に会ってしまった。ちょっと戸惑ってしまう私たちだ。それでも少しずつ先へ歩く。フィッツ・ロイは、目の前に開けたままだ。

感動冷めやらぬうち、あっという間にあのポイントに到着してしまった。

やっぱりフィッツ・ロイがいた。思っていた以上の存在感を示しながら、当たり前のようにフィッツ・ロイがそこにいる。この前見た時は、ただの雲の固まりだったのだ。山があるかどうかさえもわからなかった。

これは完全に負けたなあ……。フィッツ・ロイと何を勝負しているわけでもないのに、そんな気持ちになってくる。「絶対見てやろう」と思っていたこと自体が、何だか間違っていたような気にもなってくる。2泊3日で見えなかった場合と同じように、見えるまで待とうとしても、見えない時はいつまでたっても見えないんじゃないか、フィッツ・ロイはそんな存在に思えた。だったら、姿を見せてくれた今、ここで満足するべきだ。というか、すでに満足している。欲を言えば、明日の朝焼けも見ることができたら、もう本当に心から気が済むだけのことだ。

そうして私たちは翌朝、最高の朝焼けを拝み、ポインセノットキャンプ場をあとにした。フィッツ・ロイに会えた素晴らしい一瞬を、これ以上伸ばすのはやっぱりやめようと決めたのだ。わずか2日目にして私たちは、次の目的地ピエドラ・デル・フライレへ向けて歩き始めた。

ピエドラ・デル・フライレに入ってからの3日間もずっと好天に恵まれた。天候が悪ければ登るのが難しい峠までも行くことができたし、別の氷河も見に行くことができた。いわゆるフィッツ・ロイの「正面」を満喫できたことで、他の角度から眺めるフィッツ・ロイをさらに楽しむことができたようだ。フィッツ・ロイからは、景色との向き合い方を教えてもらったような気もする。たくさんたくさん見ること、ずっと追いかけ続けること、満足がいったら欲張りすぎないこと。いずれにしろ、こちらの気持ちが盛り上がっていないうちに見たって、何にもならないということだ。

そして、ピエドラ・デル・フライレのあるエレクトリコ谷 Valle Ele'ctrico(バジェ・エレクトリコ)に身を置いて、肌で感じたことがある。

パタゴニアとは、氷に彩られた大地なのではないか、ということだ。

そう言えばこの国立公園は「氷河国立公園」という名前だった。でも、そんなことはまったく関係ない。

今までたくさんの氷河を見てきた。そのほとんどが、パタゴニア氷床から流れ込んでいる、ということは知っていても、やはりひとつひとつ分離した氷河としてしか捉えていなかったように思う。

氷河が削ったU字谷もたくさん歩いてきた。

今、これまで見てきた光景が、ひとつにつながった気がする。それぞれの景色は、すべて氷に彩られていたのだ。氷に冷やされ、氷河に削られ、氷床に吹き付けられた大地。それがパタゴニアだったのだ。

エレクトリコ谷の突きあたりには、マルコーニ氷河Glaciar Narconi(グラシアール・マルコーニ)という大きな氷河が行く手を阻んでいる。

実は私たち、この氷河を越えてフィッツ・ロイやセロ・トーレの裏側を回るエクスペディション・ツアーに参加しようか、とこのトレッキング前から悩んでいた。裏側は、まぎれもなくパタゴニア氷床の白い大地。その白の大地に立つ一枚の写真をチャルテン村で見てしまった日から、私たちはその光景に思いを馳せ始めてしまったのだ。

そして今、エレクトリコ谷に立ち、マルコーニ氷河を目の当たりにしてみると、手に取るようにそのすぐ裏側にある氷の大地の存在を感じることができるのだった。

私たちがなぜだか氷河に惹かれてしまうのは、パタゴニアが氷に彩られた大地だったからなのだ。

氷の大地パタゴニア、そんな私たちなりのテーマが見えてきた。きっとこれから先のパタゴニア旅行は、もっとおもしろくなるだろう。そんな気がしてちょっと嬉しくなった私たちは、4泊5日のトレッキングを終え村に戻った。

ちなみにエクスペディション・ツアーへの参加は別の理由で見送った。今は、フィッツ・ロイの裏側に広がる氷の大地を胸に思い描くことに留めておこう、と思っている。




▼トレッキング覚え書き


・A Laguna Capli
2/19 晴 無風
El Chalte'n→Campamento Capli 7キロ


・A Cerro Torre
2/20 晴 無風
El Calte'n→Campamento Agostini 10.2キロ 無料

2/21 曇→雨・風
Campamento Agostini→El Chalte'n 18キロ
(LagunaHija,LagunaMadre経由)


・A FitzRoy
2/26 曇→晴 無風
El Chalte'n→Campamento Poincenot 10キロ 無料
Campamento Poincenot⇔Laguna de los Tres 5キロ

2/27 晴 無風
Campamento Poincenot→Pedra del Fraile 15キロ
(PiedrasBrancasにも立ち寄り)
Refugio Los Troncos ひとり14ペソ(約490円)

2/28 晴 無風
Piedra del Fraile→Paso del Cuadrado 8km
Refugio Los Troncos ひとり14ペソ(約490円)

3/1 晴 やや風あり
Piedra del Fraile→Glaciar Pollone 10km
Refugio Los Troncos ひとり14ペソ(約490円)

3/2 雨→曇→晴 やや風あり
Piedra del Fraile→Puente Ri'o Ele'ctrico 6キロ
Puente Ri'o Ele'ctricoから3キロほど歩いたところでヒッチハイク






 
アルゼンチン ペリト・モレノ氷河
カラファテからツアーで出かけたペリト・モレノ氷河。めちゃくちゃ大きくて、めちゃくちゃ青くてきれいです。でもやっぱり自分の足で見にきた方が感激は何倍も大きいわけで……。ぜいたくになっちゃったもんです。

 
アルゼンチン パタゴニア チャルテン
チャルテンへ向かう途中の平原から。あまりに美しかったせいでしょうか。バスが撮影のため止まってくれました。みんな一斉に外へ。こりゃ驚きますよね。

 
アルゼンチン フィッツ・ロイ ロス・グラシアレス国立公園
チャルテン村、全景です。本当にクライマー、トレッカーのためだけの小さな村。丘に囲まれていますが風が強い時は本当にスゴイ。まるで村ごとふわりと運ばれてしまうんじゃないかという気になります。

 
アルゼンチン パタゴニア チャルテン
カプリ湖、ポインセノットキャンプ場方面へ向かう裏山から。チャルテン村の北方向にあたる谷です。

 
アルゼンチン パタゴニア チャルテン
村の南側からはいつもフィッツ・ロイの姿を探すことができます。これは日の出前の様子。右にはフィッツ・ロイ、左にはセロ・トーレの先端が見えています。

 
アルゼンチン パタゴニア セロ・トーレ
そして出かけたセロ・トーレ下へのトレッキング。カラファテで一緒だったマサキくんと偶然出会いしばらく一緒に歩きました。淳ちゃんの体調が悪かったので、今日は私がカメラマン。セロ・トーレ、バッチリ見えすぎてしまってありがたみがありません。

 
アルゼンチン パタゴニア セロ・トーレ
そしてセロ・トーレ直下で迎えた朝。雲が多すぎて朝焼けは見ることができませんでした。セロ・トーレの姿を探す淳ちゃんです。

 
アルゼンチン パタゴニア フィッツ・ロイ WIDTH=
さて、急に天気が良くなったある日、慌てて出かけた淳ちゃんが出会った景色がこれ。絵はがきのようです。ちょっと煙を吐いているようにも見えますね。

 
アルゼンチン パタゴニア パイネ国立公園 トレッキング
そして先日セロ・トーレ下のトレッキングからの帰り道に何も見えなかったポイントがココ。手前の黒い岩山が微かに見えた程度だったのですが、この光景!これ、淳ちゃんがセルフ・タイマーで撮影したものです。こんなことになっていたのかあ……と驚き。

 
アルゼンチン パタゴニア セロ・トーレ
セロ・トーレももう一度見に行こう!と歩いた淳ちゃん。1.5時間待って現れたセロ・トーレには感激してしまったようです。確かにかなり幻想的!

 
アルゼンチン パタゴニア セロ・トーレ トレッキング
そしてナンチャンと再会した次の日のトレッキング。残念ながらセロ・トーレの姿はありませんでした。見えない時って、本当に何もないように見えちゃうんですよね。このあとナンチャンは約10日後に悲願達成したそうです。

 
アルゼンチン パタゴニア カプリ湖 トレッキング
4泊5日のトレッキングに出かけた初っぱな。カプリ湖での様子です。少しずつ雲が晴れていきます。

 
アルゼンチン パタゴニア フィッツ・ロイ トレッキング
そして思いがけない場所で出会った素晴らしい景色。雲がどんどん切れてフィッツ・ロイがその姿を現しつつあります。いやホント素晴らしい!

 
アルゼンチン パタゴニア ポインセノットキャンプ場 トレッキング
惜しげもなくその雄姿を見せるフィッツ・ロイを視界に入れつつポインセノットキャンプ場へ向かいます。右手にはめちゃくちゃ青い氷河ピエドラス・ブランカスも見えています。

 
アルゼンチン パタゴニア フィッツ・ロイ トレッキング
フィッツ・ロイ直下のミラドールから見た朝焼け。カンペキです。右に見えているのはまだ明るい月。

 
アルゼンチン パタゴニア ラグーナ・デ・ロス・トレス トレッキング
すっかり日も昇った頃、直下にある湖ラグーナ・デ・ロス・トレスが鏡になっていました。

 
アルゼンチン パタゴニア ピエドラス・ブランカス トレッキング
フィッツ・ロイにいったん別れを告げて、別の谷へ。途中、気になっていたピエドラス・ブランカスを見に寄りました。メイントレイルからすぐなのですが、巨石が立ちはだかってなかなか前へ進めない!それでも青い氷が湖に落ちまくっているこの氷河は、なかなか見応えのあるものでした。

 
アルゼンチン パタゴニア トレッキング
寄り道が長すぎて少々遅れ気味。ピエドラ・デル・フライレへ急ぎます。これはちょうどエレクトリコ谷へ入ったところ。リオ・ブランコ周辺でトレイルがわかりにくくなるのでちょっと迷いました。

 
アルゼンチン パタゴニア 裏フィッツ・ロイ トレッキング
天気が悪ければちょっと難しいクアドラド峠Paso del Cuadrado(パソ・デル・クアドラド)へ行った時のもの。裏フィッツ・ロイです。ちょうどあと2峰重なって見えていて、左からギジャウメGuillaumet、メルモスMermoz、フィッツ・ロイとなっています。少し平らになったこの場所以外はかなり急な坂。キツかったー。

 
アルゼンチン パタゴニア 裏フィッツ・ロイ トレッキング
お昼寝中の私を置いて、2人は裏フィッツ・ロイのふもとを散策。3峰がさらに固まって見えます。

 
アルゼンチン パタゴニア ポジョーネ氷河 トレッキング
翌日、今度はポジョーネ氷河Glaciar Pollone(グラシアール・ポジョーネ)を見に行きました。昨日登った急な道をバックに。本日も大快晴です。

 
アルゼンチン パタゴニア ポジョーネ氷河 トレッキング
ポジョーネ氷河は右手にあります。ここに見えているのはたぶんフィッツ・ロイ北氷河Glaciar Fitz Roy Norte(グラシアール・フィッツ・ロイ・ノルテ)です。手前の岩がちょっとじゃまですが、他の峰と重ならない裏・フィッツ・ロイを見ることができます。

 
アルゼンチン パタゴニア エレクトリコ谷 トレッキング
エレクトリコ谷最奥の様子。谷の奥、この行き止まり感は、けっこう好きな光景です。

 
アルゼンチン パタゴニア マルコーニ氷河 トレッキング
マルコーニ氷河。大きな大きな流れと、その奥に広がるパタゴニア南氷床・白い大地の存在を感じることができます。>

 
アルゼンチン パタゴニア ヒッチハイク
ヒッチに成功したところ。雨が降ったりもしましたが少しずつフィッツ・ロイの姿も見え始めていたので、歩こうぜ!というはずだったのですが……。ついつい、淳ちゃんが親指を上げてしまいました。このあたりも本当にみな快く乗せてくれます。お礼は残りのチョコレートで。

 
アルゼンチン パタゴニア チャルテン村
フィッツ・ロイ満喫の旅から帰ってきたあとは、チャルテン村でのんびり。キッチン付きのレフヒオがいっぱいだったので、直火で料理していました。と言っても手に入る食材は限られているのでほとんど毎日パスタ。これはベーコンを焼いているところです。淳ちゃんは直火を本当に上手に使うようになりました。




▼PART30 2005.04.05 世界一美しい国境を馬に乗って〜エル・チャルテン→ビジャ・オヒギンス
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