World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART16 2004.09.05 泥味の水で生き延びる
>>クルアニ国立公園[2]



昨日の夜、なんとか湖にたどりついた私たち5人。湖から水を汲み、その水で夕食のパスタを作り眠りについた。途中のクリークで汲んだ水と湖の水は沸かして冷やしておいた。湖の水は沸騰するとなぜか泡立ったが、気にしないことにした。どの水も10分沸騰させれば飲める、と聞いていたからだ。

朝ご飯はパンケーキ。水だけ混ぜればOKの粉を持ってきている。野外でのパンケーキ作りも慣れたもの。しかもやっさんのフライパンはおニューのテフロン加工なので、フワフワのパンケーキができあがっている。淳ちゃんは、というと3カナダドルのアルミ鍋セットについたベコベコのフライパンなので、やや厳しいものがある。それでも疲れが取れない朝には、ペシャンコだって何だって、ジャムをたっぷり塗った甘ーいパンケーキが何よりのごちそうになる。

ずいぶんゆっくり朝食を取り、出発したのは10時を過ぎていた。昨日の疲れがどろりと残っていて、なかなかエンジンがかからなかったのだ。カスカウルシュ氷河のビューポイントへ向かうためのベースキャンプへは、昨日たどり着くことができなかったので、当初目指していたプランはもう無理だ。それでも、ひと目カスカウルシュ氷河を見れたらいいよねー、と私たちは「行けるところまで行こう」と今日の目標を設定していた。14時頃には引き返してこないといけないから、昼食を入れて片道4時間。荷物は昨日泊まったキャンプ場に置いてきていて手ぶらだし、けっこう進めるんじゃないだろうか。

と思ったら、さっそく道に迷った。昨日と状況はまったく同じで、わかりにくいトレイルがまだまだ続いているのだ。行き止まりにぶち当たると引き返し別の道を行く…ということを繰り返し2時間ほど過ぎたころ、なんとも美しい湖が現れた。水はクリアで手前には砂地が広がる。誰かが休憩した跡のような流木も置かれている。昨日私たちが泊まった湖とはえらい違いだ。水際に行くためには、坂を下り水草がボウボウ生えた中を浮き木を伝って進まなくてはいけなかった。飲み水をゲットするには、そのさらに奥までよしやんが浸かって汲んできてくれていたのだ。もう少し歩いてここまで来れば快適だったのにねーと後悔するが、私たちは昨日、もうあれ以上歩けなかったのだ。しゃーない。

そしてこの美しい湖にはもうひとつ期待しているポイントがある。水の味だ。

実は、昨日の沼のような湖の水、あれはかなりまずかった。まず、水を汲んできた時点からおかしかった。ミジンコのような目で確認できるギリギリの小さな生き物がピヨピヨ動いているのだ。まあ、見なかったことにしよう、とお湯を沸かせば今度は激しく泡立つ始末。それでも念入りに沸騰させて、今朝飲んでみた。

激マズである。何だかヘドロのようなクッサイ味と臭い。クリークで汲んだ水はまったく問題なかったのだが、あれはもう無い。他のメンバーの水を飲んでみたがやっぱりマズイ。あの湖の水が悪いのだ。しかも、ギンギンに日差しを浴びて生温くなった水はさらに悪臭を放っている。でも、この水しかないのだ。これで今日は生き延びるしかない。トホホである。

だから、このきれいな湖ならきっと美味しいだろうと期待している。帰り道、ここで水を汲んで沸かそう。そしたら明日は美味しい水が飲める。今日一日だけの辛抱だ。そう誰もが期待しているのだ。

湖の水はひんやり冷たかった。よしやんが、そろりと泳ぎ始める。足元にはパンツ。おいおい、ハダカかよ!と思ったが、別の方角では淳ちゃんもハダカで湖に入っていくところだった。

「行けるところまで行こう」と決めていた今日の予定だったが、「この湖でのんびり過ごそう」に変わってしまった。

ま、それも良いとしよう。遠くにはちょっと霞んでいるけれどカスカウルシュ氷河もなんとか見える。今回はココまで、ということでいいじゃないか。そう思ったらちょっと眠くなってきたので私は昼寝をすることにした。

5人がそれぞれ、湖で泳いだり、日陰で昼寝をしたり、写真を撮ったりして時間は過ぎていった。リミットだった14時をずいぶん過ぎた15時過ぎ、私たちは昨日のキャンプ地へ戻ることにした。もちろん水筒に入った今朝の水はすべて捨て、湖の水を汲んで持ち帰ることにする。

ちょっとイヤな予感はあった。というのも、砂地のどろりとした砂を手の甲につけ「氷河の泥パック〜」と遊んでいたら、同じ臭いが漂ってきたのだ。何度洗ってもそのヘドロのような臭いは、手の甲にへばり付いたママだった。もしかすると、ここの水も同じ臭いがするのかもしれない…。

それでも汲んだばかりの水は臭わなかったし、沸騰しても泡立たなかった。いけるかもしれない。今日1日、湖に浸かってはいたものの慢性的にのどが渇いている私たちはその冷めた水をひと口飲んで思い知らされた。

同じ味やん…。

またもやヘドロの味がする。湖という動かない水はこうなってしまうのか。とにかく絶望的だ。もうヤケクソや!と沸き立てのお湯を飲んだ。おや?まだマシだ。ヘドロ臭さが緩和されている。だが、ちょっと飲んでみてよ、と回し飲みをしているうちに冷めてきたお湯はやっぱり泥の味が漂い始めている。

それでもノドが乾いている。口の中がベチャベチャする。おまけに今日のお昼に食べたベーグルは、ガーリック風味で余計に口の中が気持ち悪い。ついに、夕食用のジャガイモの茹で汁を誰かが飲み始めた。意外にウマイ。ちょっと塩味の効いた芋汁、あのヘドロの味と臭いがする水に比べたら、皮の風味がちょっとする芋汁はめちゃめちゃウマイのだ。うーん、芋汁サイコー!じゅるじゅるっと芋汁をすする私たち。ノドの乾きもすっかり癒せて、心地よく眠りに就くことができた。

そして翌朝。とにかく新しい水が欲しい!ということと日が昇ると余計にノドが乾くだろうということで、早めに出発することにした。出発は7時。クリークが出てきたら朝食にしよう、と私たちは歩き始めた。あのマズイ水にはブランデーを1滴ずつたらしている。昨日試してみたら、とにかく臭さだけは減ったからだ。

太陽はまだ山の陰になっていて空気もずいぶん冷たい。私の場合は行きと大して変わっていないのだが、背中の荷物もずいぶん軽くなった気がする。体が慣れてきているのだ。きっと1週間くらい歩いたらずいぶん体ができるんだろうな、とちょっと残念に思う。ま、この3日間だけでもずいぶん貴重な経験だ。

また道に迷った。行きに水を汲んだクリークがいつまでたっても出てこないのだ。もう半分くらい戻ってきたんじゃないだろうか。2時間くらいしか歩いていないが、スリムス川をはさんだ向こう岸の景色を見てふとそう思った。

もう少し歩こうか、そう言って少し小高い丘を降りていくと、そこは行きに私たちが迷い込んだ湿地の端だった。こんなところまで帰ってきている…。ゴールはもうすぐそこなのだ。どうやら別のトレイルでショートカットしてきたらしい。しかも行きには目にも止めなかった小さな流れが足元にある。本当に小さな小さな流れだ。でも、流れている。

ここで朝ご飯にしよう!と私たちは荷物をおろした。水は驚くほど冷たくて、冷めてもヘドロの臭いはしなさそうだった。朝ご飯は25カナダセントの素ラーメン。なんだか水が違うだけでめちゃくちゃおいしく感じるのだから勝手なものだ。ラーメンを食べながら同時に、せせらぎの水を沸かし水筒に詰め替える。そうしてあとひとふんばり、ゴールに向かってふたたび歩き始めることにした。最後の難関、川越えの地点までこのトレイルで迷わず行けるかどうかがカギになる。行きはトレイルを使わずスリムス川岸をきているのでここからは未知のゾーンなのだ。

行きに私たちが休憩したちょっとゴツゴツした河原にも、その先の河原にも、誰かが建ててくれたと思われるケルン(石を積み上げた目印)が残っていた。草を踏んで道にできないこうした河原では、このケルンを目印に進めば迷わなくてすむ。まっすぐ歩いているつもりでも、意外に進んでいないものなのだ。ケルンを頼りに先へ進むと、あっという間に川越えのポイントが現れた。行きの私たちは、ずいぶん遠回りをしまくっていたようだ。

行きよりも激しくなった流れをまたまた5人で手を繋いで何とか渡りきり、私たちは車を置いたトレイルヘッドに戻ってきた。やっぱりノドはカラカラだ。

たった3日間だったが、恥ずかしいほど煩悩が駆けめぐる。コーラ飲みたいね。そうそう、アイスも食べたいね。冷たくて甘いものがいいねぇ…。そんなことを口々に言う私たちにやっさんが言う。

  「ヘインズジャンクションにうまいバーガー屋があんねん」

そこはオニオンリングも絶品だという。名物はバナナ・スピリッツ。バナナが3本も横たわり、3種類違った味のアイスがドッカとのった、いわゆるバナナ・サンデーだ。とにかくそこへ連れて行ってくれー!と私たちは荷物整理もそこそこにクルアニをあとにした。いつもながら情けない終わり方。ま、この打ち上げが楽しくてバックカントリーに入っているのかもなーと、思ったりもする。そんな不純な動機ながら、バックカントリーに3回も入っていったのだ。なかなか頑張ったんじゃない?と、とりあえず自分を褒めることにする。


そうしてホワイトホースに戻った6日の深夜、つまり日付が変わって私の31回目の誕生日にあたる8月7日の1時ころ、大きなオーロラがホワイトホースの空を舞った。

8月になって夜が戻ってきたユーコンの空ではいつ見えてもおかしくないよ、そう言われてクルアニの空で見るつもりをしていたオーロラだった。もちろん、私たち夫婦にとって人生初めてのオーロラ。次々と頭上で形を変えていくオーロラを追いかけながら私たちは、ホワイトホースの街を夢中で駆けていた。






[今回使った足と宿]

▼公園内のバックカントリーキャンプ

Kluane National Park & Reserve
http://www.parkscanada.gc.ca/kluane

クルアニ国立公園
沼のような湖のそばで建てたテント。
目の前に流れる大きな泥色をした川がスリムス川です。食事場所はここから100メートルほど下ったところにあります。クマ除けのために寝る時はさらにベアコンテナを離して寝ていました。

クルアニ国立公園 トレイル
朝食風景。あとで気づいたのですが、私たち、トレイルのすぐ上で食事していたんです。ま、それほどトレイルもわかりにくいということです。

クルアニ国立公園 ベアスプレー
今日は荷物をテントに残してきているので身軽です。アヤッペが左手に持つのはベアスプレー。

クルアニ国立公園 湖 世界遺産
で、きれいな湖。みんなそれぞれ気持ちよさそう〜!っていうか、ココ世界遺産やねんけど!

クルアニ国立公園 湖
裸族になった淳ちゃんとよしやん。よしやんはムースのように湖の端から端まで泳ぎ回っていました。

クルアニ国立公園
やっさんは当然おシゴトもあります。晴男の淳ちゃんのおかげで良い仕事できてる!?淳ちゃんはやっさんの後ろからベストスポットを盗みます。

クルアニ国立公園 湖
そうして撮った写真。こりゃキレイだわ!

クルアニ国立公園
遊びすぎたので帰ることにします。

クルアニ国立公園
こういっ場所でトレイルが消えたりします。影をよく見ると淳ちゃん、鼻クソほじっているような…。

クルアニ国立公園
朝の美しさは夜があってこそ。これはユーコンで知りました。夜、しっかり暗くなるので朝の空は格別です

クルアニ国立公園
世界遺産の朝焼けの中、歯磨きをする女子2名。貴重な水で焚き火の残り火を消しています。

クルアニ国立公園 カスカウルシュ氷河
カスカウルシュ氷河も朝なら霞まず見えました。これは休憩しよかー、と言う時。

クルアニ国立公園
また別の休憩ポイント。私はスグ荷物を降ろしてしまいます。

クルアニ国立公園
朝ご飯ポイント。おいしい水が手に入ったのでみんなご機嫌になりました。

クルアニ国立公園
で、また歩き始めます。こりゃ道に迷うわ。

クルアニ国立公園
そんな時心強いのがこのケルン。遠くからこのケルン目指して真っ直ぐ歩きます。

クルアニ国立公園
ほとんどゴール手前の休憩所にて。綿毛が風に舞う夢のような場所でした。

クルアニ国立公園
また別の休憩ポイントにて。休憩ばっかりしています。

クルアニ国立公園
で、やっと歩き出しました。ゴールはすぐそこ!

クルアニ国立公園
帰りの川越えはちょっと厳しかった!こーんな濁流です。あやっぺは流されかけていました。危ねー!




▼PART17 2004.09.20 なんだか奇妙な島時間 〜クイーンシャーロット諸島
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