World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART6 2004.07.16 カヌーイストの聖地でカヌーデビュー
>>ユーコンリバー300キロ[1]



フェアバンクスから乗ったホワイトホース行きの直行バスは荒野の中をどんどん進んでいく。もうすぐカナダとの国境にさしかかるところだ。途中2回もバスを乗り換えたので、今運転しているヘンリーが3人目のドライバーになる。

朝6時30分にジェッタの家を出て、フェアバンクスを出たのが9時。もう7時間以上もバスに揺られていることになる。バスはフェアバンクスからずっと貸し切り状態だ。後部座席でぐったりしていた私たちはヘンリーに「前へ来い、来い」と誘われた。英語の練習をしよう、と言うのだ。何でもいいから俺に質問をしろ、としつこい。

それでは、と淳ちゃんが質問する。「彼女いてるの?」いきなりぶしつけな質問である。それでもこのノリノリの黒人男性ヘンリーには聞けちゃう気がしたのだ。「そんなものいるわけないだろ」ずいぶんノリの悪い返事が返ってきた。仕方ないので出身はどこだ、とか、仕事はどういうスタイルでやっているのか、とか当たり障りのない質問に切り替えてみる。なんだか思っていた答えが返ってこない。「ヘンリー、歳いくつなん?」淳ちゃんが聞いてみる。「53歳。」へっ?????どう見ても同い年、何なら年下かと思っていたこの青年、いや、この男性は父親と同年代だった。どうりで子供扱いされるわけだ。さっき寄ったガスステーションで私たちはヘンリーにアイスをおごってもらっている。客なのに。

ホワイトホース着予定は24時。宿を予約していなかった私たちは、次に休憩で立ち寄ったガスステーションから電話を掛けてみることにした。宿はヘンリーに教えてもらい、長距離電話用のテレホンカードもヘンリーのものを拝借している。子供扱いされるのももう慣れてきた。

ヘンリーの配達物が多かったせいもあってホワイトホースに着いたのは1時前だった。途中、薄闇の中で移動するエルク(ワビチ)の群れを見たり、大規模な山火事の後に咲き乱れるファイヤーウィード(ヤナギラン)を見たり……と見どころもまあまあ多いバス旅だった。客は最後まで私たちだけだったので、予約したホステル「BeezKneezBakpakers(ビーズ・ニーズ・バックパッカーズ)」の前まで送ってもらう。

「スカグウエイに行くのは次の月曜か火曜だから、また電話しておいで」そういってヘンリーは去っていった。東南アラスカのジュノーへ向かう私たち。陸路では入れない街なので、海路の玄関口スカグウエイまでさらにバスに乗っていかないといけない。ヘンリーの運転しているバスに乗るならホワイトホースで最低3泊必要、ということになる。カヤックの練習をしてみたいと思っていたからちょうど良い。ユーコン川でカヤックでもしてみよう。

せっかくユーコンへ行くのだから、とフェアバンクスにいる間から淳ちゃんは1冊の本を読み始めていた。私が日本で買った古本、野田知佑氏のエッセイ集だ。そこには、ユーコン川の素晴らしさはもちろん、カヌーで旅をすること、例えばフネ(野田氏はカヌーやカヤックのことをこう呼ぶ)の上でお酒を飲んだり、読書をしたり、昼寝をしたりしてのんびり過ごすのがサイコーの川旅だ、というようなことが書いてあった。魚がいれば釣り上げその日の夕食にする。宿はもちろん野営、夜はそこら辺に落ちている流木を使って焚き火をするのである。

ということで、淳ちゃんの頭の中はすっかり「男の旅=ユーコン川」ができあがっている。

翌朝、のんびり起きた私たちはさっそくホワイトホースの街を探索することにした。ホステルではID(パスポート)と引き替えにマウンテンバイクをタダで貸してくれる。レンタルショップで借りれば1日25カナダドル。しつこいけれど、これだけでもお得な気分だ。ちなみにここビーズ・ニーズは、ひとり1泊20カナダドル(16USドルでもOK)で泊まれる。このホステルの不思議なところはドミトリー(2段ベッド)でもプライベートルーム(個室)でも、ひとり1泊20カナダドルなのだ。私たちは夫婦ということで、少し広めになっている2段ベッドの下の段にふたりで寝させられている。ついでに、庭にテントを張っても、別棟のキャビンに泊まってもひとり1泊20カナダドルだ。ある意味平等と言えば平等だがイマイチふに落ちない。

マウンテンバイクで得をしていることにして、私たちはメインストリートへ向かう。5分も歩けば終わってしまうようなショボショボの街だ。これでもユーコン準州の州都なのに、だ。それでもアウトドアの盛んな街らしく、フェアバンクスではお目にかかれなかった本格的アウトドアギアの揃うショップを見つけることができた。物欲がムクムクわき出てくる。

ホワイトホースは、1890年代に起こったゴールドラッシュの時栄えた街だ。街の中では当時をしのばせるモチーフをそこかしこに見ることができる。日本人にはイエローナイフに続くオーロラの見える街として知名度が高いそうだ。ちなみにユーコン準州の人口は約3万人、面積は日本の約1.3倍。そのうちの8割近くがホワイトホースに住んでいるという。さすが、北アメリカ大陸最後の偉大な未開の地と言われているだけのことはある閑散さだ。

Tシャツや靴下など買いたいものはたくさんあったが、淳ちゃんにたしなめられ、店を出た。ヘンリーに教えてもらったカヤックのできる店「KANOE PEOPLE(カヌーピープル)」を目指す。30年以上ユーコン川のガイドをしている優良店だ。野田氏の著作にもよく登場している。

目の前に現れたのは、異常に流れの速い川だった。水の色はエメラルドグリーンできれいなのだが、何しろ速い。ちょうど、豪雨のあと水量がどかっと増えた近所の大きめの川の速さくらい、といったら伝わるだろうか。後で聞いたところによるとユーコン川の平均時速は7〜10キロくらいあるらしい。

絶対無理だ、と思った。
こんな流れの速い川だなんて思ってもいなかった。私は、西表島や奄美大島のマングローブの森でゆったりカヤック、しか経験がない。流れなんてほとんど無いに等しかったのだ。

カヤック未経験の淳ちゃんも同じ感想を持ったらしい。「はやいなー」と感心している。目の前をさーっと通り過ぎる女性2人組のカヌーイスト。彼女たちはきっとものすごいベテランなのだろう。

と、川の写真を撮ったりしているうちに淳ちゃんの姿が見えない。
「ちーちゃーん!」と遠くで私を呼ぶ声が聞こえてきた。なんだか嬉しそうな声だ。

声はカヌーピープルの店の中からだった。淳ちゃんは満面の笑みである。「俺らでもカヌー乗れるらしいで」と言った淳ちゃんの横にはひとりの男性。「まったく問題ないですよ」あら?関西弁。というか日本語。「日本人のスタッフの方ですか?」と聞く私に「いや、元ここで働いていたリバーガイドです。」と答えてくれた。

彼は、谷角靖(タニカドヤスシ)氏。数年前までこのカヌーピープルでリバーガイドをしていたのだが、今はなんと、知る人ぞ知るオーロラ写真家だった。
東京や大阪のニコンサロンで個展を開き、この秋には写真集も出るというのだから立派なプロカメラマンである。

カヌーピープルで働くスタッフたちが「ヤスシ、友達が来たのかい?」と聞くほど何だか意気投合してしまった私たち。淳ちゃんは敬語を使いつつも、「やっさん、やっさん」と勝手にあだ名を付け話しまくっている。大阪・野田出身とわかったやっさんと「大和路快速」の話題で盛り上がっているのだ。

やっさんにカヤックを練習してみたいのだと相談してみる。すると、数時間コースから1日コースなどレンタルのパターンをいくつか教えてくれる。やっぱり日本語だと安心だ。

「せっかくやからユーコンをカヌーで下ってみたらどうですか?7日間でいけますよ」

やっさんのこの一言で淳ちゃんの顔色が変わった。「なになに?どういうこと?もっと聞かせて。」まずい、淳ちゃんは本気だ。ノリノリなのがビシバシ伝わってくる。

淳ちゃんの知りたいことをやっさんは的確に説明してくれた。
初めてのリバーツーリングなら、たくさん荷物を積めるカヌーの方が楽しめること(ドライフード三昧な生活をしなくていいのだ!)。カヌーなら2人で1艇なのでお得なこと(8日間で195カナダドル+tax)。14日間でドーソンシティまで行くプランもあるけれど、カーマックスという街まで7日間でいくプランでも十分楽しめること。初心者でもよっぽど油断しなければこのエリアでは沈(チン:フネがひっくり返ってしまうこと)しないこと。そして、今なら社長のスコットが私用で留守なのでサービスできること。

ここまで言われて淳ちゃんが乗らない訳がない。「宿代より安いやんか!ていうかメチャメチャおもしろそうやんか!な、ちーちゃん行こうや!」

何だか私も楽しそうな気がしてきた。荒野を流れると思っていたユーコン川がエメラルド色をして今目の前を流れていて、カヌーに積んだたくさんの美味しいものとビールを味わいながら7日間フネの上で旅をする。素敵じゃないか。

気が付いたら「行こか」と返事をしていた。やっさんも嬉しそうだ。そうだそうだ。こんなところでシケシケの返事をしていても面白くない。せっかくのチャンスだから行ってみよう。私たち、お金は無いけれど時間はたっぷりあるのだ。

それでは具体的な話もしましょう、ということで再びやっさんは話し始める。相変わらず淡々とした口調だ。

まずはレンタル代。これはそのまま195カナダドル+tax7%で約209カナダドル。通常アップ料金が必要なワンランク上のカヌーをサービスで貸してもらうことにする。あと、最悪沈した場合も考えてカヌー用のドライバッグ(防水バッグ)が必要なのだが、これを2つタダで付けてもらう。本当ならひとつ20ドルかかるものだ。美味しいものたくさん積んでいけますよと言った手前クーラーボックスも要りますねえ……と言ったやっさんは、さらに20ドルするクーラーボックスレンタルもサービスで付けてくれた。食料の保存はクマに臭いを悟られないよう通常はドラムバッグというものを持っていく。ただし、これだと保冷がきかない。クーラーボックスなら、最初の数日間はサーモンや肉を焼いて食べ、ビールも冷えた状態で飲むことができる。デナリのキャンプを考えたらこれはもう天国だ。
というか、やっさん、もうここのスタッフじゃないのに大丈夫なんだろうか。

あとは必要なものを買ってくださいと言ってやっさんはまた説明を始めた。
まず、川地図。現在地を把握する川岸の特徴が記されている。キャンプを張るのに適した場所も書いてある。流れが速くなっているところとか危険な箇所も書いてあって必ず必要になるものだ。私たちは一番安い14.95カナダドルの川地図を買った。ルートの説明は出発日にしますね、忘れるから。とやっさんはあっさり言った。
次にベアスプレー。以前は旅行者でも簡単に銃の所持ができたため威嚇用に銃を所持して出かけたらしいが、数年前から銃の所持は禁止になっている。代わりに武器になるのがこのベアスプレー。コショウとトウガラシでできていて射程距離は約2メートル。随分近い。私ならすでに死んだふりをしてしまいそうな距離だ。新品は50カナダドルするのだが、運良くクマに出会わず使わなかったベアスプレーが中古買い上げ品としてショップにストックされているという。通常30カナダドルほどするらしいが、これまた20カナダドルにまけてもらった。
あとは、水タンク。川の水は途中まで煮沸さえすれば飲めるほどきれいだというが後半、いろいろな川と合流するにつれて泥色になっていくらしい。カナディアンなら必ず持っている20リットル入りのポリタンクをひとつ買うことにする。約6カナダドル。

あとはあれば便利、というゴム長靴(ひとつ約10カナダドルが半額の約5カナダドルになっていた)を1セットずつと、山火事が収まってキャンプファイヤーができるようになれば使いたいね、ということでBBQ用の焼き網(これは約10カナダドル)を購入した。全て、カナディアンスーパーストアという大型スーパーで手に入る。それにしてもカナダの物価は本当に、安い。

準備もだいたい終わった。あとは前日か当日の朝、食料品を買い込むだけだ。ビールも7日間分買わないといけない。6本くらいは保冷剤兼用で凍らせて持っていこう。パイナップルを凍らせて持っていくのもいいなあ……と私たちは遠足前の子供のようである。

出発日は私が生理になってしまったため29日(火)に遅らせることにした。確かではないが過去、生理中の女性がクマに襲われたことがあるので避けた方がいいだろうとやっさんに言われたからだ。

いよいよユーコンリバーデビューだ。
カヌーに乗るのは、ふたりとも初めてだけれど。




[今回使った足と宿]

▼フェアバンクスからホワイトホースへの直行バス
アラスカダイレクトバスライン
Alaska Direct Bus Line,Inc
1-800-770-6652

▼ビーズ・ニーズ・バックパッカーズ
BeezKneezBakpakers
http://www.bzkneez.com



[今回訪れたところ]

▼カヌーピープル
KANOE PEOPLE
http://www.kanoepeople.com



[今回友達になった人]

▼写真家・谷角靖
http://www.yasushi-products.com/index.htm



▼お断り-----------------------------------------------
ここで紹介したカヌーピープルでのサービスは谷角氏がカヌーピ
ープルとの信頼関係を元に私たちに提供してくれたサービスです。
この情報を元にカヌーピープルおよび、谷角氏へサービスの提供
を依頼することが無いよう、ご理解とご協力をお願いします。
ネタとしてはおいしいので掲載させてもらうことにしました!
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ユーコン ホワイトホース TOK(トック)
TOK(トック)という街へ向かう途中、石油の
パイプラインがありました。運転手のおじいちゃんが写真を撮ってやろうと言ってくれたので撮ってもらったところ。
淳ちゃんの笑顔が不自然です。

ユーコン ホワイトホース カナダ 国境 ビーバークリーク
カナダとの国境のビーバークリークという街。いったんバスから降りてカナダの入国審査を受けます。といっても係官は女性1人ののんびりしたところ。帰りのチケットを持っていない私たちは少しだけ怪しまれました。

ユーコン ホワイトホース カナダ 国境 ビーバークリーク
バスの車内はこんな感じ。この広さで貸し切りでした。山火事の影響もあって、今年はこの辺りを移動する人が少ないそうです。

 
ユーコン ホワイトホース スモーキー
ユーコン川です。天気は晴れなのですが、
火事の影響で曇り。天気予報では
「スモーキー」というカテゴリがあります。
日が差してくるとエメラルド色に光るんです
けれどね……。

 
ユーコン ホワイトホース カヌーピープル
「カヌーピープル」の正面。
ここから淳ちゃんは大きな声で私を呼んでいました。店内はカヌー用品がずらり並んでいます。キャップやTシャツなどオリジナルグッズも販売しています。

ユーコン ホワイトホース カヌーピープル カヤック
同じく「カヌーピープル」にて。
上段の伏せてあるフネがカヌーで下段にある細いフネがカヤックです。

 
ユーコン ホワイトホース カヌーピープル カヤック 川地図
これが川地図です。
私たちが大好きなバイクのツーリングと同じで、今日は何ページ進んだねーとか話します。目標を見誤って思ったより進んでいなかった時はけっこうがっかりしちゃうので、控えめに控えめに判断していました。

ユーコン ホワイトホース カヌーピープル カヤック ベアスプレー
ベアスプレーです。
実際に使用する時はオレンジの安全ピンを
はずして噴射します。風向きに注意すること。でないと自分にかかってきます。あと、テントの中で使用してもほとんど自分にかかってきちゃいます。

ユーコン ホワイトホース カヌーピープル カヤック 水タンク
これが水タンクです。
本当は折りたたみできる簡易バッグでもよかったのですが、安いのでこっちにしました。
ツーリングが終わると、カーマックスにカヤックを置いてバスで帰ってこないといけない私たち。このでかいタンク、どうしたらいいんでしょう?

ユーコン ホワイトホース カヌーピープル カヤック ゴム長靴
おそろいで購入したゴム長靴。
冬までいるならインナー付きの長靴を買った方がいいよ、とやっさんに薦められましたが私たちは一応インナーなしのお得タイプを買いました。




▼PART7 2004.07.17 漕ぎ始めて気づいたたくさんのこと 〜ユーコンリバー300キロ[2]
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