World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART5 2004.07.13 アラスカに暮らす人々
>>フェアバンクスのキャビンにて



ワンダー・レイクキャンプ場をあとにした私たちは、最終のキャンパーバスでライリークリークキャンプ場まで戻ってきた。日付が変わろうとしている時間だったので、最後のドライフードを食べて早々に眠りにつく。蚊が少ないので、とても快適だ。

翌朝、4日ぶりのシャワーを浴びにライリー・クリークのストアに向かった。4日ぶりというが気温が十分に高かったので、ワンダー・レイクでも水道を使って洗髪をしたり、体を拭くくらいはできていた。それでも、たっぷりお湯を使えるシャワーは待ちこがれていた楽しみだった。

シャワーを浴び終え、私たちはストアで昼食を食べることにした。ドライフードを5日間も食べ続けた私たちにとって久しぶりの「生モノ」。そういえば、タルキートナで一緒だった4人の山男たちは2週間ドライフード尽くしだったという。どうりで風間さん、ウサギのようにキャベツをバリバリ食べていたわけだ。今ならその気持ちが少しだけわかる気がする。オーダーしたのは生野菜がたっぷり入ったハムサンド。みずみずしい食感が何ともいえず幸せな気分にしてくれる。

そろそろ、フェアバンクスへ向かうバス乗り場へ移動する時間だ。バスは13時発。予約をしなくても乗れるだろうと言われている。ライリー・クリークからバス乗り場のあるビジターセンターへ向かうと、ワンダー・レイクで一緒だったマキちゃんがいた。

さっきストアで会ったスゥェーデン人のオットコマエ君の話をマキちゃんにしてみる。彼はマキちゃんと同じバスで戻ってきていたからだ。

案の定マキちゃんも彼と話していた。私たちもそうされたように、ヒッチハイクでフェアバンクスに行くと良い、と薦められていたのだ。

スゥェーデン人の彼に薦められる前にも、私たちはいろいろな人から、ヒッチハイクすればいいのに、と言われていた。基本的にヒッチハイクは違法らしいが、ここアラスカではへんぴな場所が多いのでヒッチハイクすることは一般的らしい。もちろん、アンカレジやフェアバンクスなどの都会では避けた方がいいし、人を見て乗る乗らないは判断しないといけない。

人を見る、なんていったいどうしたらいいんだろう。

テレビでは行き先を紙に書いて道路脇で車を待つ光景を見ることが多い。ところがそれだとこちらに選択権がなくなってしまうので、おすすめできない。道路脇で親指を立てて立ち、車が止まるのを確認したら「どこまで行くの?」と聞く。様子をみておかしいな、と思えばたとえ同じ行き先でも「私たちとは違う」と言ってしまえば問題はない。選択権はこちらにある。

そう教えてもらった私たち。どうやらマキちゃんもうずうずしている。ひとりなら不安だけれど……。せっかくだからチャレンジしてみようか!ということになり私たちはヒッチハイクでフェアバンクスに向かうことにした。1時間も待てば、ほぼ乗れるらしい。

まずはアンカレジとフェアバンクスをつなぐジョージ・パークス・ハイウエイとの合流地点まで歩かなくてはいけない。たいした距離ではないのに大荷物でヘコんでしまった私たちは早速、親指を立ててみた。

止まった!一発成功だ。なんてラッキーなんだろう。人の良さそうな男性の老人がひとり。荷物を積み込み、行き先を聞くと逆方向だ。がっがり。それでも彼は快く、公園出口まで乗せていってくれた。

次の車はなかなか止まらない。やっと止まってくれたのは公園周辺で営業しているショップの車だった。どうやらこのエリアは駐停車禁止のイエローゾーンなので誰も止まってくれないらしい。公園出口の繁華街を過ぎた交差点で待てばほとんどの人がフェアバンクスへ向かうはずだから、と彼はそこまで乗せていってくれた。

いよいよ、3台目だ。今度こそ、フェアバンクスまで連れて行って欲しい。30分ほどたったころ、1台の車が止まった。

淳ちゃんがずいぶん前方に止まった車に向かって走っていく。遠くでOKサインが見える。やった!成功だ!

運転手の彼女はjetta(ジェッタ)。アラスカ大学の学生でフェアバンクスに住んでいるという。週末、デナリ国立公園でキャンプをして家に戻るところで、ガソリン代20ドルを出してくれたら乗せていってもいいと言ってくれた。バスで行けばひとり50ドルはするからお安いご用だ。むしろこういう条件を出してくれる方が気が楽というもの。またひとつ、素敵な出会いに感謝する。

フェアバンクスまでの約3時間、ジェッタはひたすら真っ直ぐ伸びるジョージ・パークス・ハイウエイを飛ばし続けた。助手席に座った淳ちゃんとは音楽の趣味が合うようですぐに仲良くなっている。

ジェッタはアラスカ大学で生物学を専攻しているという。大学はもう夏休みに入っているけれど、ジェッタはいくつもクラスを取っていて先日試験がひとつ終わったところらしい。

私たちの旅のこと、デナリ国立公園でデナリ(マッキンリー)を見たこと、そしてマキちゃんがいろいろ知りたいと思っているエスキモーのこと…たくさん話をしながら車はいよいよフェアバンクス市内へ入ろうとしていた。

「私の家でよかったら1週間でも居ていいわよ」

聞き間違いかと思ったが確かにジェッタはそう言った。そして車はチナ川を左に見ながらどんどん進んでいく。
着いたのはジェッタが借りているキャビンだった。

アラスカではキャビンを借りるというのはとても普通のことだという。見た目はログハウスのようだ。それをたて半分に区切って2階建てキャビンを2家族で住む。ジェッタのキャビンは1ヶ月600ドル。1階にはキッチンとリビングが一緒になった約20畳ほどのスペース、2階は18畳ほどのプライベートスペースだ。1階部分すべてを自由に使って良いとジェッタは言う。白樺林の中にたつログハウスなんて避暑地に来たみたいだ。

一息つくとジェッタは、ここにはお風呂がないの、と申し訳なさそうに言ってシャワーを浴びに行こうと誘ってくれた。洗いたての分厚いバスタオルまで3人分用意してくれている。

実は、アラスカの一般的なキャビンというのはお風呂どころか水道もトイレもない。電気だけが引っ張られている。

水はポリタンクに買ってきていくつかストックしたものを順番に使う。もちろん下水道もないから、キッチンの排水溝の下はバケツが置いてあるだけだ。溢れる前に捨てに行かないといけない。トイレはアウトハウスと言われる掘っ立て小屋が少し離れたところに置いてあるのみ。地面に直接穴を掘っている場合もあれば汲み取り式もある。いずれにしても使用済みのトイレットペーパーは下に落とさないのが原則だ。お風呂は、コインランドリーに行く。だいたいシャワールームが併設されていて、1回4〜5ドル程度で使うことができる。

アラスカンには、いつかはトイレのある家に、次は水道のある家に、最後はお風呂のある家に住もう!というステップアップの図式があるのだという。
ジェッタは学生で23歳だからまだまだこれからなのだ。

アラスカ大学でタダでシャワーを浴びすっきりした私たちは、ジェッタの車でフェアバンクス一の大型スーパー「FredMeyer(フレッドマイヤー)」に連れて行ってもらった。キッチンが使えるから肉でも焼こうかという話になる。すっかり滞在する気マンマンの私たち夫婦とマキちゃんである。

鶏肉と野菜とビールを買い揃え、ジェッタの家に戻る。
オーブンに入れた肉が焼けるのを待つ間、写真を見せてもらった。

ずいぶん豪華な毛皮を着て誇らしげに笑っている写真がある。
彼女は「Miss Arctic(日本語で言うと少し間抜けだけれどミス・北極圏)」だった。6月の終わりで2004年のミスに交代するのだという。

彼女の祖父母はエスキモーの街アラスカ北西部コッツビュー出身。ジェッタの両親はエスキモーとアメリカ人で、彼女はハーフだったのだ。

昨年の大会の写真では、お祖父ちゃんが仕留めてきたオオカミの毛皮をブーツにし、お祖母ちゃんが手作りしてくれた伝統的なエスキモーの衣装を身にまとっている。堂々とした美しさに3人ともため息ばかりでてしまう。

ところで私は、今までエスキモーとは「生肉を食べる人」という侮蔑的な意味があるのでイヌイットと呼んだ方がいい、という解釈をしていた。ところがフェアバンクスに来ると、現地の人も普通にエスキモーという単語を使っている。

主に北西部で暮らす先住民族のエスキモーと、主にユーコン川とその支流沿岸で暮らす先住民・インディアンたちの存在は、極北の街フェアバンクスに来るとぐぐっと身近になる。現地の人との会話の中にも頻繁に登場してくる単語だ。

エスキモー(イヌイット)と呼ばれる人々は北極圏を中心にアラスカやカナダ、グリーンランド、シベリアと広範囲に存在している。その中でもカナダの先住民族はエスキモーと呼ばれることを侮蔑的だと捉える過去があったので、イヌイットと呼ばれているそうだ。逆にアラスカ内の先住民族はイヌイットと呼ばれることが少ないので「アラスカン・エスキモー」と呼ぶ方が現実に即している。イヌイットと呼ばれても今いちピンとこないようだ。結局のところ、エスキモーでもイヌイットでもひとつの言葉で括るには無理があるということだ。その土地の人々が使う言葉がきっと一番正しい。

同じようにインディアンも使い方の難しい言葉だ。これもアメリカ先住民(ネイティブ・アメリカン)という言葉を使った方がいいという解釈をしていたがアラスカの先住民族にはあてはまりにくいよう思う。カナダにいたってはイヌイットを含めてFN[ファーストネイション]と呼ぶことの方が多いそうなのでさらに当てはまらない。

こういう微妙なニュアンスを調べたい時、英語がもっとできたらなと思う。日本語ですら難しい話題だが、現地の書物に触れたり人に話を聞くのが一番だと思うからだ。今は私の感覚で捉えたことでしかない。

と、少し脱線したが、エスキモーとアメリカ人の美しいハーフ、ジェッタの家に私たちはしばらくお世話になることにした。

家は少し郊外にあるのでダウンタウンやアラスカ大学へ出かけるには市バスを使うしかない。それでも最寄りのバス停まで徒歩30分、バスで約20分かかる。便数も極端に少なくて、ダウンタウンや大学で用事を済ませようと思うと10時55分のバスに乗るしかない。でないと帰ってこれないのだ。

とはいっても、大学へ行く一番の目的は「シャワー」。ジェッタの家では無理なので大学で浴びることになる。大学なら無料だ。本当は学生のIDが必要だが、夏休み期間中ということもあってシャワー付きトイレのあるウッドセンターは人も少なくてノーマーク。私たちは一応アラスカ大学生のフリをして毎日シャワーを浴びに通っていた。

シャワーの使用は本当はいけないけれど、アラスカ大学は旅行者(ビジター)にとてもオープンな施設だ。
構内には無料でインターネットのできる図書館がふたつあり、スターバックスのコーヒーを出すピザ屋さんやカフェがいくつもオープンしている。夏の間は広大な構内を無料で繋ぐシャトルバスが15分間隔で走り、キャンパス内を巡るツアーが毎日開催されている。淳ちゃんは「大型動物研究所」のガイドツアー(これだけ有料)に参加する予定だったがジェッタの都合で結局は参加できなかった。

シャワーを浴びるついでに毎日大学を歩き回り、夕方にはジェッタの家に帰って買い貯めておいた食材で夕食を取る、そんな生活が数日続いた。そろそろ次の予定を決めなくてはいけない。

フェアバンクスがこの旅の最北端になると思っていた私たちだが、ここまで来たからには北極圏(Arctic Circle)に入ってみたいねぇ……と欲が出てきていた。北極圏というのは北緯66度33分から北のエリアを指す。夏至の日には正真正銘の白夜が訪れるところだ。フェアバンクスからだとダート(未舗装)のダルトン・ハイウエイを約4.5時間走り続ける。約200マイル(320キロ)の長旅だ。

ビジターセンターで教えてもらったレンタカー会社は2軒だけだった。ダルトン・ハイウエイを走るには4駆の大きい車でないと厳しいのだ。料金も通常の倍以上、1日約100ドルもする。1日で往復して帰ってこないと、とても大きな出費になってしまう金額だ。

結局、車は予約できなかった。一度OKが出たのだが、次の日もう一度電話してみるとダメになっていたのだ。どうやら私たちは、北極圏からは呼ばれていなかったみたいだ。こういう流れの時は気持ちをさっと切り替えるに限る。私たちは次の目的地・東南アラスカへのルートを探すことにした。

フェアバンクスから東南アラスカへ陸路で行くには、いったん、カナダ・ユーコン準州へ入らなくてはいけない。フェアバンクスとユーコン準州の州都・ホワイトホースの間は直行バスが走っている。

25日(金)のバスを予約した。
ずっと気を遣って彼氏や妹の家に行ってくれていたジェッタだったが、私たちが発つ前の晩、挨拶をするためだけに自分の家に寄ってくれた。別れがつらい。友達ができるということは別れもひとつ増える、という当たり前のことを思い出していた。それでも、この極北の地にできたひとりの友人は私たち夫婦の大切な宝物になった。



[今回使った足と宿]

▼ヒッチハイクでタダで移動し、ジェッタの家にタダで泊まったので
今回はなし。



[今回訪れたところ]

▼アラスカ大学(UAF)
University Of Alaska FairBanks
http://www.uaf.edu/

▼フェアバンクス観光局
Fairbanks Convention&Visitors Bureau
http://www.explorefairbanks.com/

▼ダルトンハイウエイ
Bureau Of Land Management
http://aurora.ak.blm.gov/dalton/

 
アラスカ ヒッチハイク
デナリ国立公園を出て、ジョージ・パークス・ハイウエイ沿いでヒッチハイク中の様子。頭にできあがっているヒッチハイクそのままのポーズです。

 
アラスカ ヒッチハイク ハイウエイ
ハイウエイの途中、見晴らしの良い場所でジェッタが止まってくれた時に撮った唯一の写真。若さがあふれています。後ろに写っているのがジェッタの車。他のアラスカン同様、フロントガラスには大きな亀裂が……。大丈夫なのか!?

 
アラスカ キャビン
ジェッタの借りているキャビン。真ん中の木から左がジェッタの家です。まわりは白樺とアスペンに囲まれています。

アラスカ ミス・アークティック
ジェッタの家の冷蔵庫に貼ってあった写真を撮らせてもらいました。左がミス・アークティックになった時のもの。右はその時お祖父ちゃんと撮ったものだそうです。

 
アラスカ キッチン
これはキッチンの流し。ポリタンクを引っかけて必要な分だけ使います。普段、自分がどれだけ水を使いたおしているかをまざまざと突きつけられる瞬間です。

アラスカ キッチン
そしてこれが排水管の下。溜まる前に捨てに行かないととんでもないことになります。思ったより自分が水を使っているんだとまたまた見せつけられる瞬間。ちなみに排水は裏庭に捨てます。ちょっと心が痛くなります。

 
フェアバンクス チナ川
ジェッタの家からバス停まで歩いているところ。右側にチナ川が流れています。距離感のつかめない真っ直ぐ加減に正直うんざり。しかも内陸部のフェアバンクスはとても暑い!30度を超す日もありました。

フェアバンクス チナ川 観光外輪船
チナ川を走る観光外輪船。やっぱ琵琶湖のミシガンとはひと味もふた味も違います。それにしても人が山盛り。これはバス停のある有名レストラン「パンプハウス」から撮っています。

フェアバンクス アラスカ大学
アラスカ大学の学生センター「ウッドセンター」内の様子。ピザが安くて美味しい。淳ちゃんが向かう先にシャワー付きのトイレがあります。うしし。

フェアバンクス アラスカ大学 エスキモー インディアン グリズリー ヒグマ
アラスカ大学博物館へ行きました。エスキモーやインディアンの資料が豊富にあります。星野道夫氏の写真も大きく飾ってありました。入り口では大きなグリズリー(ヒグマ)がお出迎え。入館料5ドル。

フェアバンクス アラスカ大学 アッツ島 キスカ島
第二次世界大戦の時、日本軍がアッツ島とキスカ島を一時占領したことがありました。その時の様子がこれでもかとしつこく展示されています。確かに過去日本人が行ったことは良くないことだったと思うけれど、そのしつこさと今のイラクの状況を考えると複雑な気持ちになります。




▼PART6 2004.07.16 カヌーイストの聖地でカヌーデビュー 〜ユーコンリバー300キロ[1]
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