World Odyssey 地球一周旅行

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旅の日記
見たもの、乗ったもの、食べたもの…たくさんの驚きを写真と一緒にお伝えします。



▼PART4 2004.06.28 偉大なる山は2日もご機嫌だった
>>ネット越しのデナリ



デナリと聞いてピンとこなくても、マッキンリーと言えば日本人なら誰でも知っていると思う。あの、植村直己を飲み込んだ山だ。

デナリとは先住民族・アサバスカインディアンの言葉で「偉大なるもの」という意味を持つ言葉だそうだ。元々は公園の名前も25代大統領にちなんだマッキンリー国立公園だったが、1980年古くからの呼称を尊重してデナリ国立公園に改称している。

そんなデナリ(マッキンリー)山は、北米最高峰。アメリカ人なら一生に一度は登ってみたい山だそうで、日本の富士山以上に気軽に登りに来てしまう人もいるという。入山料が 150ドルと格安なのも拍車をかけている(エベレストは200万円くらいするそうだ)。ちょうど私たちがデナリ山のふもとにいる頃には、7大陸最高峰登頂の最年少記録を惜しくも逃した日本人の男の子が、最後の登頂をデナリで終えたばかりだった。

私たちには各大陸の最高峰を見よう!といった目標はあまりない。
だが、デナリ(マッキンリー)山は独立峰としては世界最高の高さを誇るのだ。これは見てみたい思う。(厳密に言うと独立峰というには誤りがあるかも)

例えば世界最高峰のエベレスト。これは周囲にもたくさん高い山が連なっていて、その姿を拝む時には連峰の一部を確認するようなイメージだそうだ。
対してデナリ(マッキンリー)山は、裾野から頂上までの標高差約5500メートルを見ることができる。ちょうど、富士山を2つ重ねた大きさを約40キロ先から眺める、と想像するといいらしい。

これは、きっとでかい。ものすごくでかいと思う。
そんな圧倒される体験をしてみたい!と心から思うのだ。


タルキートナで願掛けしたにもかかわらず、ワンダー・レイクキャンプ場へ向かう朝はまだ小雨がパラついていた。淳ちゃんはほとんど拗ねている。

公園奥へ進むには、大きく分けて2種類のバスがある。一般の観光客が乗るシャトルバスと大きなバックパックを持った人専用のキャンパーバスだ。私たちは当然、キャンパーバスを利用する。

公園最奥のワンダー・レイクキャンプ場は公園入口から約85マイル(136キロ)。シャトルバスは朝5時30分から動いているが、キャンパーバスの始発は6時30分なのでそれを予約している。朝一番のバスの方が動物にも会いやすい。

バスは雨に煙る針葉樹林の中を進んでいく。しばらく進むと森林限界がきて、景色はツンドラの大地に変わっていった。遠くには虹が見える。一般車乗り入れの規制がかかるサベージ・リバー・チェックステーションを過ぎると、道路が未舗装になった。バスは砂ぼこりをあげてどんどん進む。

ムース(アメリカヘラジカ)の生息域といわれるサンクチュアリ・リバー、無数の細い濁流が平行するテクラニカ・リバー、グリズリー(ヒグマ)のテリトリーといわれるセーブル・パス、壮大な景色が広がるポリクローム・パス、と見どころを次々と通り過ぎるが、野生動物にはまったく出会えない。サファリパークのように、野生動物を眺められると思っていた淳ちゃんはションボリしている。運が良ければ、ムースやグリズリーはもちろん、カリブー(ツンドラトナカイ)やドール・シープ、レッド・フォックスにも会えるというのに。

デナリ(マッキンリー)山の全容を最初に拝める場所といわれるストーニー・ヒルでは、もちろんデナリの姿はなかった。展望ルームも用意されているアイルソン・ビジターセンターでも同じだ。バスの乗客もほとんどが眠りこけている。ガタガタ揺られてお尻も痛くなってきた。

眼下に細長い湖を見ながらバスは丘を下っていく。いよいよ、ワンダー・レイクキャンプ場に到着したのだ。お昼すぎ、約6時間かかった。

バスを降りたとたん、蚊がうわっと群がってくる。慌てて、蚊除けネットを頭からかぶった。蚊の大群はワンダー・レイク名物だ。

このあたりでは寒すぎて、蚊をエサにするトンボやカエルなどが冬を越せないらしい。それで蚊が大量に発生するのだ。私たちは、頭から蚊除けネットをかぶり、むき出しの手足には日本から持ってきた虫除けスプレー(スキンガード)をふっている。それでも、衣服の上から容赦なしに蚊は刺しまくる。暑いので、数時間で虫除けスプレーの効果は切れてしまう。手はガサガサに荒れ、何もしなくてもヒリヒリするほどだ。食事をしたら一緒に口に入り、写真を撮れば写っている。何もせず肌をさらしたら、あっという間に真っ黒に覆い尽くされてしまうほどだ。淳ちゃんはヤツらを徹底的に憎んでいる。

蚊を払いながら、私たちは歩いていく。ワンダー・レイクキャンプ場のホストは、私たちに眺めの良いサイトを教えてくれた。滞在中、ハンディキャップの人は来ないのでその場所を使っても良いと言ってくれたのだ。デナリ(マッキンリー)が見えれば、真正面の位置だ。

と、言われてもどこにデナリ(マッキンリー)があるのかさっぱり検討がつかない。下の方に小さな山の連なりが見えるだけだ。それでも2000メートルくらいある山々だという。とすると、あの山の上部に、山3つ分の大きさをしたデナリが現れるのか?だとしたらでかすぎる。

遅めの昼食はこれまたドライフード。カトマンズカレーだ。辛すぎたので、残りを近くにいた日本人らしき女の子に食べてもらう。

彼女は東京からきたマキちゃん。もうワンダー・レイクに来て10日になるという。それでも、まだデナリ(マッキンリー)の姿を見ていない。

俺たちが来たからダイジョーブ!と淳ちゃんは根拠のないセリフを吐く。マキちゃんも、
雲を動かせる人がいるんだよねーと言って、淳ちゃんに望みを託そうとしている。本当にデナリ(マッキンリー)に会えるんだろうか。

10日間いる人がその姿を見ることができないように、この時期デナリ(マッキンリー)に出会える確率は約10%だという。あんなに見たかった割に私たちの予定はたった2泊。ずいぶんチャレンジングな企画だ。

それでもなぜか頭から離れない映像がある。
デナリ(マッキンリー)を眺めている自分だ。
淳ちゃんの根拠のないセリフも、このイメージからきているのだ。

朝には雲が切れているかもしれない、そう思って5時に目覚ましをセットし、眠ることにした。テントの中だけは蚊のいない天国だ。

「ちーちゃん!ちーちゃん!大変や!」
淳ちゃんが小声で騒いでいる。どうやらまた寝過ごしてしまったようだ。
「デナリが見えてる!!」

蚊の大群が入ってくることも忘れてテントの窓を開けてみる。デナリだ。うっすら雲に覆われているが、昨日は真っ白だった場所に間違えようもない山塊が立ちはだかっている。荘厳な姿。

消えてしまわないうちに、と私たちは大あわてで記念撮影をする。雲はどんどんデナリ(マッキンリー)を隠し、1時間後の10時にはまったく見えなくなってしまった。

寝ぼけまなこでマキちゃんが起きてくる。彼女はデナリ(マッキンリー)の出現に気づいていない。今までも見えてたんとちゃうのー?と淳ちゃんに突っ込まれる始末だ。

落ち込むマキちゃんと朝ご飯を食べた。また現れるから、と冗談交じりで慰めていると、本当に雲が晴れだしてくる。上空の天気も良い感じだ。私たちは雲を動かせちゃうのだろうか。

完璧なデナリ(マッキンリー)が姿を見せた。
これが見たかったのだ。
白い雪をかぶり、夏のアラスカにキリリとひとり立つデナリ。

不思議と見下ろされているとか見上げているという感覚がない。まっすぐ向き合っているようだ。文句の付けようのないデナリ(マッキンリー)との出会い。
なんだか世界中の人にありがとうを言って回りたい気持ちだ。


デナリ(マッキンリー)が見えたら行きたい場所があった、というマキちゃんに付いて行くことにした。キャンプ場近くのリフレクション・ポンド(日本で言うところの鏡池かな)という場所だ。その名の通り池に映り込むデナリ(マッキンリー)の光景を、写真に撮ることができる。

せっかくだからと、ワンダー・レイクまでも足を伸ばした。ガイドブックや写真集でよく見る風景の場所だ。デナリ(マッキンリー)は完璧な姿のままだ。
キャンプ場までの3マイル(約4.5キロ)を戻る途中には、一匹の若いムースにも出会った。

結局、私たちが滞在した3日間のうち、初日を除く2日間、デナリ(マッキンリー)は消えることがなかった。

日暮れ頃には夕景を探してツンドラを歩き、次の日にはもっと近づいてみようとマッキンリー川まで続く「マッキンリー・バートレイル」を歩いた。どこからでもデナリ(マッキンリー)を見失うことがなかった。

「デナリの見える景色」を満喫して私たちはワンダー・レイクでの3日間を終えた。

いつも蚊除けネットを頭にかぶりながら見た、憧れのデナリだった。



[今回使った足と宿]


▼デナリ国立公園
Denali National Park&Preserve
http://www.nps.gov/dena/

 
キャンパーバス
キャンパーバスの様子です。
動物が現れるとみんな大騒ぎです。
すれ違うバスドライバーどうしで、何が見えるのかハンドジェスチャーで伝えあったりしています。行きは左側に座った方が景色を楽しめます。

アイルソン・ビジターセンター ムース
アイルソン・ビジターセンターにムースの骨がおいてありました。こんな角が生えるのはオスだけ。しかも毎年秋になるとオレンジ色に変色して抜け落ちてしまうのだそうです。

バス
バスは懐かしいスクールバスタイプ。だいたい時速40〜50キロくらいが平均時速。
とっても環境に悪そうに見えますが実は低公害仕様。バスの運転手さんも環境問題にしっかり関心を持っていました。さすが。

アイルソン・ビジターセンター
ほとんどのバスはアイルソン・ビジターセンターで折り返します。約1時間ほど停止するので、一般の観光客はここでしばらく散策してから戻ります。下はムルドロウ氷河。奥にはデナリ(マッキンリー)が見えるはずなんですが…

 
デナリ マッキンリー
朝1時間だけ見えた時のデナリ(マッキンリー)。慌てて撮った記念写真です。2人とも蚊除けネットがはずせません。千尋の左上には蚊が写ってしまっています。

デナリ マッキンリー
ワンダー・レイク近く、通称淳二の丘です。
あと少し風おさまれば湖面も鏡のようになったのですが…。それでも少し、デナリ(マッキンリー)が写り込んでいます。

ムース
ムースとの距離は最低25メートルあけましょう、と言われている。これはギリギリの距離まで近づいたところ。もちろん母子ならこれ以上あけた方が無難。耳がピクっと真後ろを向くと怒った証拠なのでとにかく走って逃げること。

ワンダー・レイク デナリ マッキンリー
ワンダー・レイクから眺めるデナリ(マッキンリー)は北壁だけ見えている状態。本当の頂上は南峰にあるがここからは見えません。夕方になるとこの北壁が日を真正面に受けてよりクリアになりました。

デナリ マッキンリー
食事場所から眺めたデナリ(マッキンリー)。うーんデカイ。3倍の望遠で撮っていますがそれでもデカイ。

デナリ マッキンリー
到着日の写真とほぼ同じ角度から撮ったもの。デナリ(マッキンリー)が見えるとこんなに景色が変わります。

デナリ マッキンリー
たくさんデナリ(マッキンリー)を見たあと、落ち着いて撮った記念写真。朝あせって撮ったのとは大違いです。

デナリ マッキンリー
夕方(と言っても22時過ぎ)少し歩いて、夕景を見に行きました。到着日にこの景色に会ったラッキーボーイ雄志くんも一緒です。このあと、無理矢理ラーメンも食べてみました。美味しかった!

デナリ マッキンリー
ワンダー・レイク3日目。今日もデナリ(マッキンリー)はご機嫌です。これはマッキンリー川へ出る途中のトレイルにて。池が鏡のようにデナリを写しています。

マッキンリー川
片道約3マイル(約4.8キロ)のトレイルの終点マッキンリー川。手前は澄んでいますが奥半分は濁っています。これは氷河の色。ものスゴク冷たいそうです。

グリズリー ヒグマ
ワンダー・レイクを出てライリー・クリークへ戻る途中グリズリー(ヒグマ)の親子に会いました。ちょうどアイルソン・ビジターセンターのすぐ前。親子が去るまで、私たち人間の方がセンターの中へ入って待機することになりました。

グリズリー ヒグマ
トレイルももちろん閉鎖。センター入口も鉄格子で閉められ、私たちが動物園の動物になった気分でした。

グリズリー ヒグマ
グリズリーの親子が去った後、ムルドロウ氷河をのぞむポイントで。奥にはデナリ(マッキンリー)の姿が見えます。ここからだと、南峰も北峰も見えます。北壁の急斜面もよく見えます。

ライリー・クリーク
結局最終バスでライリー・クリークに戻った私たち。ワンダー・レイクを17時30分に出ました。それでも名残惜しく、デナリ(マッキンリー)の見える方角を何度も振り返りました。ありがとう、デナリ!




▼PART5 2004.07.13 アラスカに暮らす人々 〜フェアバンクスのキャビンにて
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